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シナリオを書き続けていたら!
第二夜: セリフは“消えもの”だから……

シナリオを書き続けていたら「いつのまにやら、映画監督。」

私は事務職をしている会社員。
時には電話対応、時にはExcelで表づくり、
時には同僚とお茶菓子をつまんだりなんかして。
家に帰って家族が寝静まった頃、
夜な夜なシナリオを書き続けていたら……
いつのまにやら、映画監督になっていたのです!

その映画とは――
2023年1/6より愛知・岐阜にて先行公開
1/13から新宿ピカデリー他、全国公開となる『ひみつのなっちゃん。』。
脚本・監督を務めたのは、田中和次朗さんです。

ぜひ劇場でご覧ください!

※ラビットハウス
映画『ひみつのなっちゃん。』 予告<60秒>

消えてく“監督”の呼び声が消えない夜

商業映画の監督としてデビューすることになった私。

スタッフたちと顔合わせをした日の夜。
その日のことを反芻し、夜な夜なひとり脳内反省会をします。

どうしても慣れない、あれ。
スタッフのあの呼び声が私の頭の中を響かせます。

「監督!」

それはなぜか。
だって私、監督って呼ばれても振り返れないのです。

「お願いします、監督……監督?」
「監督、郡上八幡について聞きたいんですけど…聞いてます監督?」
「監督。あの、監督……」

慣れない。どうしたら慣れるのでしょうか。
どうしたら、振り返れるのでしょうか!!

「聞こえてないのかな?」
「今はお手すきでは……ない?」
「無視かな……」

そんな風に思われたらと思うと、申し訳なくて、申し訳なくて。

テンポよく迅速に丁寧にスタッフワークしたい。
ただただ「監督=自分」ということに気づけない私が悪い、
前にも後ろにも、ただそれだけなんですっ!

でも監督って呼ばれても、振り返れないのはしょうがない。

だって“セリフは消えもの”なんですから。

印象づけたいセリフは繰り返す

私がシナリオ・センターの講座に通っていた頃。
セリフを書く上で大切な概念“セリフは消えもの”を教わりました。

“セリフ”は皆さんもご存じの、登場人物がしゃべる言葉です。
“消えもの”とは撮影用語で、本編に映る食べ物、のことです。
つまりセリフは音となり流れるから、食べ物みたいに消えちゃうよ、ということです。

セリフは会話とは違います。
会話はしゃべっている相手が分かれば良し。
でもセリフは第三者(観客や視聴者)に分からせねばならない。

なのでキーワードは、

花子「わからないのよねぇ、犯行の動機が」

と、セリフ尻に持ってきたり、

花子「なに渋谷?…今渋谷って言った?」
太郎「そうだよ、し・ぶ・や!」

と、繰り返して印象に残します。

そう。だからまだ慣れないのは、繰り返しの問題。

みなさんに監督と呼んでいただいていたら、そのうち私は自然とさわやかに、

「はい。なんでしょう」

と振り返れる日が必ず来る。
だから今は、ごめんなさい。

私、もう少しで振り返れます。

*     *     *

シナリオの技術。

私が作品作りにおいてもよりどころとするこの技術が、まさか心を落ち着かせるときにも一役買ってくれるとは。

あれ。使い方、間違ってないですよね。
間違ってないと私、監督はそう信じたい。

次回11月11日に更新予定です

※『月刊シナリオ教室』ではこちらのブログと連動した「新人映画監督のおどおどが止まらない」を連載中。併せて是非ご覧ください!

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▼“困ったときはシナリオの技術をよりどころに”
映画『ひみつのなっちゃん。』脚本・監督 田中和次朗さんに聞く

困った時はシナリオの技術を拠り所に/脚本家・監督 田中和次朗さん

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「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。

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