私は事務職をしている会社員。
時には電話対応、時にはExcelで表づくり、
時には同僚とお茶菓子をつまんだりなんかして。
家に帰って家族が寝静まった頃、
夜な夜なシナリオを書き続けていたら……
いつのまにやら、映画監督になっていたのです!
その映画とは――
2023年1/6より愛知・岐阜にて先行公開
1/13から新宿ピカデリー他、全国公開となる『ひみつのなっちゃん。』。
脚本・監督を務めたのは、田中和次朗さんです。
ぜひ劇場でご覧ください!
※ラビットハウス
映画『ひみつのなっちゃん。』 予告<60秒>
虫だってそりゃいるで“しょう(承)”な夜
商業映画の脚本を書き、監督としてデビューすることになった私が、ついに岐阜県郡上市でロケ撮影へと入った時のこと。
日々撮影をし、終われば夜な夜なホテルの一室で、翌日の準備のため机に向かって撮影台本とにらめっこ。
一区切りついてはベッドにダイビング。
蒸発するかのようにじわぁぁぁ~とあがっていく一日の疲れ。
やがてすぐにやってくる朝。
翌日の撮影も体力勝負、アイデア勝負。
対応力と粘り強さの必要性を感じます。
端から見たら確かにハードなのかもしれません。
そんな撮影の日々に現る、新たな刺客。
「む、む、虫……。」
でも、私はめげません。“ようこそ虫さん”くらいの気持ちです。
だってシナリオで言えば、今は起承転結の「承」なんだから!
「承」は障害を乗り越えて盛り上がるところ
私がシナリオ・センターの講座に通っていた頃。
物語の構成、起承転結を学びました。
起承転結にはそれぞれ機能があります。
「起」:情勢(天)、場所(地)、人物(人)を紹介する機能
「承」:事件や事情が積み重ねてドラマを進行する機能
「転」:テーマを感じさせる機能
「結」:テーマの定着と余韻をもたせる機能
それぞれの配分は、物語の1,2割が起、7~8割が承、残りの1,2割が転・結で考えると構成しやすいと言われています。
「承」は、物語のほとんどを占める部分……。
映画づくりを、起承転結で表すならば、起は脚本づくり、承は撮影・編集、転は完成で、結は公開、といったところでしょうか。
そう。撮影中は起承転結の「承」の真っ只中!
映画づくりも、映画を観るように、ワクワクしながら進めたいもの。
「承」を盛り上げないでどうする!
盛り上がらなかったら、どうなっちゃうのか。
シナリオ・センター創設者の新井一さんはこう述べています。
“「承」が悪いと、面白くない。”
ですよねー!撮影だって、面白くなければ、ただただ疲れる日々。それはごめんです。
じゃあ、「承」を面白くするためにはどうしたらいいのでしょうか。
その1つは、
“葛藤、危機があること。”
大丈夫です、映画づくりの「承」で、葛藤や危機、あります。
虫です。
刺しては血を吸ってかゆみを残していく。蚊ではありません。もっと強敵のブヨです。
ブヨはでかい。そして、速い。
刺されたところは蚊に刺されたそれよりかゆい。
薬を塗ってもなかなかかゆみは収まらず、掻く。
掻くと患部からは血が出る。ブヨの刺し口は大きいから。
それから、山の中。
お次に登場するのはヤマビル。
うねうねと動くヤマビルに触れたらさあ大変。
血をすい続け、やがて膨らんでは、足にぶら下がるらしい。
靴下の上からでも吸うという、厄介な虫。想像しただけで身震い。
そう、虫の存在も、危機になるんです。
あと、映画づくりの「承」を盛り上げるには、どうすれば?
それは……
“魅力ある人物が活躍すること”
これも大丈夫。スタッフ・キャスト、うちの“組”の皆さんです。
みんなで声を掛け合って虫の魔の手から助け合い、誰にもケガなどないよう撮影に取り組んでいます。
あとは私だけ……。
私だけが、虫やこの環境の文句を言ったり、ため息をつく、なんてわけにはいかない!
だからこそ、虫をも面白がる心持ちで対峙します。
ワークマンで調達した完全防御の服装で、虫たちに心でつぶやきます。
「ようこそ、虫さん。」と。
そう思えば、物語の主人公のごとく、いろんな困難だって乗り越えていける気がするんです!
* * *
ちょっと大げさに書きましたが、本当に撮影の日々は面白かった。
困難に対してどう乗り越えていくか。
それは創作者次第で“しょう(承)”。
……はい。
★次回12月9日に更新予定です★
※『月刊シナリオ教室』ではこちらのブログと連動した「新人映画監督のおどおどが止まらない」を連載中。併せて是非ご覧ください!
※「構成(起承転結)」に関してはこちらの記事も。
▼「長編シナリオ書きたいなら20枚シナリオでクライマックス(転)を」
▼「ケツ、見つめよう。“結”を意識するだけで、 伝える力が変わる」
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▼“困ったときはシナリオの技術をよりどころに”
映画『ひみつのなっちゃん。』脚本・監督 田中和次朗さんに聞く
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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