総合の授業で、世界を変えるための17の目標「SDGs」を推進するための動画を作る小学校が、最近増えているように思います。というのは、担任の先生から、こういった動画作りに関するお問い合わせをよくいただくからです。
そこで今回は、十日市場小学校 6年生の皆さんに向けて実施したキッズシナリオの模様を広報の齋藤がリポート。
=今回の概要==============
・サービス名:「ショートムービーをつくろう!」(全2回)
・目的:SDGsの取り組み(プラスチックや飢餓問題など)の動画を作る
・対象:十日市場小学校 6年生
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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こちらの記事では、SDGsの動画を作るとき だけでなく、「いい動画」を作るためのポイントにもなっています。「子どもたちが作りたい動画を実現するためには、どう導いていけばいいんだろう?」とお悩みの先生方、ぜひ参考にしてください。
誰に何を伝えたいのか
今回担当する田中が、担任の先生から一番最初にご相談を受けたとき、「3つのグループに分かれてそれぞれ動画を作ります。グループごとに話し合い、コンセプトやシナリオの方向性などは決まりつつあるのですが、完成までは程遠い状況です……」ということでした。
そこで、キッズシナリオ1回目では「シナリオの書き方・撮影中の時間の使い方」をご紹介。
特に、「シナリオはどう書けばいいのか」という動画作りの“土台”ともいうべき部分が、クラスの皆さんも先生も一番の悩みどころだったのではないかなと思います。
せっかく作るのなら、「いい動画」を作りたいですよね。
でも、そもそも「いい動画」とはどんなものでしょうか。
シンプルに言うなら、「作り手が伝えたいことが観ている人にちゃんと伝わる動画」ではないかと思います。
では、そういう動画を作るにはどうしたらいいか。
田中は皆さんにこんな3つのポイントをご紹介しました。
〇田中:動画を作るとなると、「こうしたら面白そう!」「こんなふうにしたい!」とアイデアが沢山出てきて、「この動画を通して何を伝えたいか」ということは、忘れがちなんですよ。
というわけで、いい動画を作るためのポイント1つ目は、「伝えたいこと=テーマ」を確認すること。観た人にどういうことを感じてもらいたいのか、できたら「ひとこと」で言えるようにまとめてみてください。
それができたらポイント2つ目。「現実=アンチテーゼ」を確認すること。アンチテーゼとは「テーマの反対」。物語をテーマと真逆のところから始めると、その変化によって、観ている人はテーマを強く感じることができます。例えば、テーマが「物を大事に使うことの大切さ」なら、「紙を無駄使いしている」というところから始めてみるとか、そういう感じで考えてみてください。
その次、ポイント3つ目は、「誰に伝えたいのか」を考えること。
家族なのか、先生なのか、地元のおじいちゃんなのか、見てもらいたい人を設定してください。それによって、どんなエピソードにするか内容が変わってきます。この人に伝えるならこういう方法がいいかも!と新しいことにも気づけたりします。
――これら3つのポイントを踏まえたて、クラスの皆さんは、もう一度グループごとに話し合い、シナリオを作成していきました。
どんな映像にすれば、伝えたいことが表現できるか
――1回目のキッズシナリオ終了後、皆さんは順調にシナリオを作成。そしてなんと、もう撮影に進んでいるグループもいるというご連絡をいただきました。
ただ、先生によると「実際に撮影をしてみるとまた新たな悩みがあるようで……」ということで、「それは大変だ!」と田中、駆けつけました。
〇田中:事前にみんなが書いたシナリオを読ませていただきました!前回お伝えしたポイントをしっかり押さえていてバッチリでした!
〇生徒さん:いい動画が出来ると思います!
〇田中:おお!いいねいいね!今日は、もっともっといい動画にするためのポイントをお伝えしていきたいなと思います。
動画を撮り始めているグループもあると先生からお聞きしたのですが、何か困っていることとか、もしくは、これから撮るにあたって心配なこととかありますか?
――すると、あるグループからこんなお悩みがでました。なお、このグループは海へのポイ捨てが原因で魚の数よりもゴミが増えてしまった2050年の世界を舞台にした動画を作ろうとしています。
〇生徒さん:主人公が魚なので、海をイメージしたシーンがあるのですが、学校で撮るにはどうしたらいいか悩んでいます。
〇田中:魚を主人公にするなんてもう驚いたよ、すっごくいいよ!
でもそっか、海に撮影しに行けないしね……。海ということを表現するために、何を映せばいいだろう?「ここは海だ!」って分かるような映像にしたいよね。
――田中が何かいいアドバイスはないか、「う~ん」と考えていると、他のグループの生徒さんたちから次々とアイデアが出てきました。
〇生徒さん:波の音を使うというのは?
〇生徒さん:あそこの校庭のところを使って、釣り堀みたいにしてみるとかは?
〇生徒さん:「海水浴場」って書いた紙を貼るとかは?
〇田中:おお!いいねー!僕が言う前にいいアイデアがいっぱい出たね (笑)
みんなきっと、どんな映像にすれば海であることが伝わるのか、アタマに“絵”を思い浮かべながら考えてくれたんだと思います。この「どんな映像にすれば自分たちが伝えたいことが表現できるか」を考えることも、いい動画を作るための大切なポイントなんですよ。
――そうなんです、この2回目に実施したキッズシナリオでまさにお伝えしようとしているのが、どんな映像にするかをイメージし、そしてそれをグループのみんなで共有すること。では、そのために何をすればいいか、次の章でご紹介します。
「文字でもセリフでもなく映像で表現したい!」
*
〇田中:既に撮影したグループは、撮影中に気づいたかもしれないんだけど、たとえ同じシナリオでも、その文章を読んでアタマに思い浮かべてる映像は人ひとそれぞれ違うんです。
〇生徒さん:あー!たしかに!
〇田中:でしょ!だから、撮影に入る前に、グループみんなでそのシーンのイメージを共有するために、「絵コンテ」を描きます。大体で構わないので、「このシーンはこんな感じで撮る」と予め決めておくと、現場で悩むことがなく、スムーズに撮影を進めることができます。
――まずはこちらのワークシートで絵コンテを練習。プリントに書いてある短いシナリオもとに、こんなふうに絵コンテを描いてもらいました。
――また、絵コンテを描くとき、そのカットはどんな“サイズ”で撮るのか、も考えます。そのため、「アップ」「ロング」といった「カメラの“枠(フレーム)”」についても確認していきました(※)。
※「アップ」「ロング」についてはこちらの記事をご覧ください。
▼@デジタルクリエーションクラブ/ロング バスト アップ を意識
――その後、いよいよグループごとに分かれて、自分たちのシナリオをもとに絵コンテを描いていきます。
――担任の先生や田中が見守る中、あるグループからこんな話し合いが聞こえてきました。
〇生徒さん:「次の日」というのがわかるカットをここでどうしても入れたい。どんな映像がいいかな?
〇生徒さん:「次の日」っていう文字を入れる?
〇生徒さん:うーん……。でも、次の日になったということを、映像でわかるようにしたいよね。
〇生徒さん:どうしたら日にちが変わって翌日になったってことが分かるだろ?
〇生徒さん:セリフで入れる? ん-、でもなー……。
〇生徒さん:あ!思いついた!空を映すのはどう?朝になったって分かるような明るい空を映すとか。
〇生徒さん:あ―――!
――この一連の流れをさりげなく見ていた“大人たち”はちょっと感動。
〇田中:タイトルで「次の日」って入れることもできるけど、その方が断然いいよね!パッと観て分かるから。いいアイデアです!
〇先生:絵コンテもめっちゃうまい!前回撮ったものよりも、すごくいい!
――生徒さんたち、ニコニコです!
他のグループも、自分たちで書いたシナリオや既に撮った映像を確認しながら、「ここはどんな映像にする?」「もう一度、撮り直そうか」と相談して、絵コンテを描いていきます。
――と、ここで終了の時間に。
〇田中:みんな、絵コンテすっごく上手だった!こんな映像にしたいというイメージが頭の中でちゃんと出来ている証拠だね。こんなふうに絵コンテを描いておけば、あとは撮るだけ。完成を目指して頑張ってくださいね。どんな動画が出来上がるか楽しみにしています!
――2回目のキッズシナリオ終了後、先生から「子どもたちは、また今回も新しいことをたくさん知ることができたようで喜んでいました。田中さんに来ていただいてから、明らかに映画製作への熱が高まっています!」とご感想をいただきました。
嬉しいですねぇ!
でも、田中は言います。「僕はちょっと“お手伝い”しただけ」と。
そうです。今回の模様をご覧いただいてお気づきになったかと思うのですが、子どもたちは、ちょっとしたポイントをお伝えしただけで、自分たちで気づき、考えて、行動していきます。「こういう動画を作るにはどうしたらいいか知りたい!」という子どもたちの真剣な気持ちがあるからこそ、なのです。
もし、「うちのクラスも動画作りに悩んでいます……」とお困りの先生がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にシナリオ・センターまでご相談ください。
また、こちらのキッズシナリオの模様も併せてご覧ください。
▼SDGsを題材に動画作りに挑戦@小田原市立桜井小学校