「技術を学んだ」だけでは勿体ない!
習い事を始めるとき、「まずは基礎をおさえよう」と思いませんか? それから大体わかり始めると「基礎はおさえたから、これから忙しくなるし、一旦ストップしよう」となりません? でも、一旦ストップすると、“そのまま”になってしまいませんか……。
シナリオを書くことも、これと同じことが言えます。シナリオ・センターの基礎講座(※1)で覚えたシナリオの技術は、どんどん使っていかないと「技術は知っている」という状態のままになってしまいます。
そのため、シナリオ・センターではステップアッププログラム(※2)というカリキュラムを組んでいます。大人のクラスだけでなく、小学5年生から中学生向けオンラインクラス『考える部屋』も同じです。
基礎科(Season1)を修了すると、キッズ本科(Season2)に進級できます。なお、キッズ本科は前期・後期があり、もし前期の実施期間に参加できなくても後期から参加することもできます。
こちらのブログでは、『考える部屋』キッズ本科 第1回目の模様を、広報の齋藤がリポートいたします。
・『考える部屋』について詳しく知りたい
・『考える部屋』キッズ本科へのご進級をご検討中
・技術を学ぶことは好きだけど“その先”に進めていない
――といった方々、今回の模様を参考にしてください。
まずは『考える部屋』キッズ本科 全体の流れから
『考える部屋』キッズ本科は全24回。隔週で実施します。
流れは以下のような感じです。
1週目の授業で、課題テーマが発表されます。そのテーマで書いたシナリオ(400字詰原稿用紙 5枚を想定)を3週目に発表してもらうので、まずはブレストを通してアイデアを沢山出していきます。
2週目は授業はなく“自主トレ”の時間となります。3週目に発表するシナリオを各自書いてもらいます。
3週目はシナリオの発表と感想&講評。講師によるアドバイスや、参考になりそうなオススメ作品も踏まえながら、“自分の作品をもっと面白くするためのポイント探し”をしていきます。
4週目は授業はなく“鑑賞学習”の時間となります。3週目で共有したオススメ作品を各自で観てもらいます。その際、鑑賞した作品のどこが魅力的だったか、言語化できるようにすること。“自分の作品作りの肥やし”になるよう意識します。
このようなペースで進んでいきます。
地獄のブレスト&マインドマップで発想を飛ばす
『考える部屋』基礎科の目標は「イメージしている物語を面白い物語として描く」でした。
それにプラスして、キッズ本科では「いろいろなアイデアを出すこと」も重点的に行っていきます。いろいろなアイデアを出していくことで、いろいろな“切り口”を考えられるようになり、結果、自分でも驚くようなアイデアが思いつくようになります。
今回の課題は「スマホ」。
課題発表後にやるのはブレストです。
ふつうのブレストではありません。
「地獄のブレスト」です。
〇新井:「スマホ」でアイデアをどんどん出していこう!パッと思いつくこと、スマホを誰が使うか、スマホを何に使うか、スマホでできること、スマホの便利さ・不便さなどなど、あんまり深く考えないで言ってみてください。
“地獄の”ブレストですからね、1巡目では終わりませんよ、2巡目、3巡目……とやっていきますよ!
――「うわっ……」と怯んでいたのは同席していたわたくし齋藤だけでした。
「ライン」「アプリ」「故障」「充電切れ」「ロック画面をお揃いにする」「画面がバキバキ」「スマホ持ってない」「スマホほしい」「横からのぞかれる」「ホームと電車の間で落としそうになる」――等々、ものの何分間で30ものアイデアが出ました。
〇新井:それでは、ノートもしくは紙を用意してください。次にやるのは「地獄のひとりブレスト(マインドマップを書こう!)」です。
「スマホ」のアイデアをマインドマップでさらに広げていきます。マインドマップというのは、自由な思考・アイデアや情報の流れを、中心となる概念から分岐させる形で描写した図です。
20分、時間をとりますので、中心となる概念「スマホ」からどんどん発想を飛ばして書いてみてください!
――皆さん、マインドマップ初体験。どんなアイデアが出るのでしょうか!
発想を飛ばしていくと、いろいろなシーンが思いつく
――マインドマップが出来上がったら発表です。
皆さん、初めてとは思えないほど、沢山のアイデアがマインドマップに書かれています。
例えば、Kさんのマインドマップがこちら。
〇新井:おお、すごい沢山考えたね。「スマホ」から「アプリ」と考えて、そこからグンと発想をとばして「デジタルイラスト」というのがあるね。
(デジタルイラストとは、紙と画材を使って描くアナログイラストとは異なり、パソコンとグラフィックソフト、ペンタブレットを使用して描くイラストのこと)
〇Kさん:3行ストーリーで言うと「不登校の子がデジタルイラストに興味を持つ話」です。
〇新井:なんでデジタルイラストに興味もったの?
〇Kさん:不登校だったら家で何かやってるような気がして。
〇新井:なるほど!
そこで、気になってくるのが、主人公の貫通行動(=主人公が自分の目的に向かって進むための一貫した行動)。
誰かを見返すためにデジタルイラストを描くのか。それとも、デジタルイラストによって自分が夢中になれるものを見つけることができて、それを極めていく、という話になるのか。
〇Kさん:そうだ、貫通行動だ! この子が、どんな目的に向かって進んでいくのか、考えてみます。
――とここで、子どもたちと一緒に“勉強する側”でいつも参加してくださっているレギュラーメンバー、脚本家の田嶋久子さん(「ちゃこさん」というニックネームで呼ばせていただいております)が感想を述べてくれました。
〇ちゃこさん:マインドマップに「スマホ」→「学校で禁止されている」→「中学生」というのがありますね。「中学生」っていいですね。中学生なんだけど、描いたデジタルイラストがバズっちゃって、「誰が描いているの?」って話題になって、誰が描いているか分からない“覆面アーティアスト”として活動していく、とかね。
――そして、『考える部屋』キッズ本科の担当講師「もんちゃん」(※「先生」ではなくニックネームで呼びます)はこうコメント。
〇もんちゃん:マインドマップに「スマホ」→「小さい」→「お風呂」というのがありますね。この主人公はどこでデジタルイラストを描いているのかな?って思っていたんだけど、この「お風呂」という場所を使ったら面白そう!
あと、「小さい」というところから、「持ち歩く」→「歩きスマホ」→「姿勢が悪くなる」→「猫背」というアイデアが出てる。これもいいですね。例えば猫背になっちゃって、そのせいで具合が悪くなって通院していて、その病院で出会った人がキッカケになってデジタルイラストを描くことになる、とか。
こんなふうに、「不登校の子がデジタルイラストに興味を持つ話」と、このマインドマップに書いた要素を組み合わせていくと面白くなりそうですね!
〇新井:猫背っていうアイデアいいよね!主人公のキャラクターが出るし、「どんな感じの子なのか」というのがパッと想像つく。映像的に考えているから、こういうワードが出てくるだろうなぁ。すばらしい。引き続き、この主人公はどんな容姿なのか、膨らませてみてね。
――『考える部屋』本科メンバーからはこんな感想が。
〇KSさん:さっき、ちゃこさんが言ってくださったみたいに“覆面アーティアスト”として活動していって話題になって、「一体だれが描いているの?」ってなったときに、主人公がふと描いてしまった場所から「これってあそこじゃない?」「あそこの近くに住んでるんじゃない?」ってバレちゃったり。
〇Kさん:あー!それいい!!
〇新井:ほんと、いい!!
こんな感じでね、来週は『考える部屋』の授業がないから自分で、このマインドマップに書いたアイデアを広げて深めていくと、物語の骨格が出来上がっていくと思います。
Kさんが最初に言ってくれた「不登校の子がデジタルイラストに興味を持つ話」だけで考えていこうとすると途中で行き詰ってしまうかもしれないけど、こんなふうに発想を飛ばしていくと、いろいろなシーンが思いつくんじゃないかと思います。
――Zoomの画面に映るメンバー全員が大きく頷いております。
シナリオの技術を使い続けると、自分の表現力を深めることができる
――さきほどご紹介したKさん以外のメンバーも全員、わずか20分でしかも即興で考えたとは思えないほど、沢山のアイデアで埋め尽くされたマインドマップを描きました。これをもとに、再来週の3週目の授業で発表するシナリオを書いてもらいます。
〇新井:ペラ(200字詰め原稿用紙)10枚以内。400字詰め原稿用紙なら5枚以内なので、考えた物語のうちの一部のシーンをシナリオで書いてくださいね。楽しみにしております!
* * *
今回の模様をご覧になってお気づきになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「3行ストーリー」「貫通行動」といったシナリオの書き方や技術に関するワードが、講師と子どもたちとの“共通言語”として、会話で自然に使われていることを。また、主人公のキャラクターだけでなく、容姿も考えていくなど、「映像的に考える」というクセが身についていることを。
こんなふうに、シナリオの技術を使い続けて、技術が自分の“腕”に定着すれば、自分の表現したいことが自分以外の人に伝わるようになります。つまり、自分の表現力をさらに高めることができるのです。
このブログを読んでくださった皆さんも、『考える部屋』キッズ本科メンバーのように、身につけた技術は学んだままにせずにどんどん深めていきましょう!
シナリオの技術を身につけるプロセスは大人も子どもも同じ!
※1シナリオ・センターの基礎講座 ※2ステップアッププログラム
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※1 シナリオ・センターの基礎講座について。
種類は3種類ございます。
詳細は以下をご覧ください。
※2 ステップアッププログラムについて。
基礎講座→本科→研修科→作家集団という、階段を上るようなカリキュラムを組んでいます。
シナリオ8週間講座やシナリオ通信講座 基礎科を修了すると本科に、シナリオ作家養成講座を修了する研修科に進級できます。
本科や研修科では、課題「20枚シナリオ」でシナリオの技術を使いこなす練習をしていきます。
研修科を修了すると一番上のクラスである作家集団に進級でき、ここではこれまで練習してきたシナリオの技術を意識してシナリオ以外のもの(企画書・小説・漫画原作・戯曲など)を書いてもOKとなります。
>>詳細はこちらをご覧ください。
『考える部屋』についてもっと知りたい!という方はこちらのブログも併せてご覧ください。
▼小学5・6年生、中学生向けオンライン創作講座『考える部屋』まとめ
▼観客・視聴者・読者が 「おもしろい!」と思うシーンを考える『考える部屋Ep6』
▼『考える部屋』EP12 中間発表会/「物語を書くのが好き!」な子どものチカラ
▼書きたいことを形にするには/小学校高学年・中学生が物語を考える
▼子どもの考える力を伸ばすには/キッズシナリオ『考える部屋』大発表会
▼面白い物語が作れていない時は「起承転結」で考える/「考える部屋」1期 Season2よりご紹介
▼創作が好きな子どもにお薦めの習い事/好きな事を共有できる場所
▼シナリオの形式が身につくと面白い小説が書けるようになる/『考える部屋』2期生 中間発表会