金さん
シナリオ・センター代表の小林です。いつまで続くのでしょうか、この寒波。
日本全国凍ってしまいますね。北海道は-34℃とか。
中国やロシアでは-53℃のところもあるとか。コップの水を撒くと空中に氷の花が浮かぶ映像を見て、バナナがカチンカチンなどは屁でもないって感じがしてしまいました。(笑)笑いごとではないのですけれど・・・。
本当に皆さんくれぐれも低体温、凍った足元など等危ないことは色々ありますのでお気を付けください。
先日、国立劇場初春公演「通し狂言遠山天保日記~歌舞伎の恩人・遠山の金さん~」を観てきました。尾上菊五郎丈が遠山の金さんです。
遠山の金さんは、テレビドラマでもご存じですね。
遠山の金さんは遊び人の金さんとして、江戸の町を徘徊しています。ところが実は・・・お白州でしらを切る犯人に片袖脱いで見得を切りながら、決め台詞「この桜吹雪が・・・」で名裁きを見せることでおなじみですね。
今回の演題のサブに「歌舞伎の恩人・遠山の金さん」とあり、今迄もあったのか、あえてつけたのか、どうして入れたのかは存じませんが、こういう副題をつけられたのは、今の時代も天保の改革の時代と変わらないお上への文化芸術への冷たさにムカついてかなぁと勝手に思っています。(笑)
遠山の金さんは、天保の改革で切り捨てられそうになった芝居や寄席を守ってくれました。
だから、歌舞伎の恩人のフレーズをつけられたようですが、文化芸術を守るということは、世の中、庶民を守るのと同じでことです。
今の時代も名奉行遠山の金さんみたいな人は、いないものでしょうか。
あ、外遊観光したりお土産買ったりする、遊び人の金さんはたくさんいるみたいですけど。そこじゃない!
紹介
新井一が書いたものがたくさん遺っています。
本当にシナリオのことだけ考えていたんだなぁと思いながら、遺されたものを時々ひっくり返しては読んでいます。
人物の紹介について、こう書いています。初心者の方は特に気を付けて欲しいです。
「ドラマは、登場人物を紹介しなければいけないわけで、ドラマの中では、登場人物と登場人物の間で紹介をします。
この場合、観客はもう知っている場合と、登場人物同士は知っていてこれを観客に知らせるのと、登場人物と一緒に観客にも紹介してもらうのと3つあります。
何をややこしいことをいっているかというと、ただ紹介すればいいというものではなく、大変難しいことだからです。
まず、観客に知らせる方法。自己紹介と第三者が紹介する場合。
「私コロンボ刑事です」
自己紹介。手っ取り早いがつまらないし、もしかしたら嘘かもしれないということがあります。
もう一つの方法は、第三者に紹介してもらう方法。
「あの人知っている。あんな変な恰好しているけど、世界的に有名な原子学者だよ」
もうひとつ画面で紹介させる方法。
その人の場所、魚屋さんなら、魚屋さんの店先を出せば、紹介しなくてもわかるというものです。
ですが、このことは逆にその人の場所(魚屋さんなら魚屋さん)で紹介するのではなく、路上だったり、飲み屋だったり、不特定多数のいるところでは、画面は紹介してくれません。
初心者は、自分がもうすでにその人物を知っているので、不特定多数の場所であろうが気にせず書いてしまいます。
先ほど引用した魚屋のおじさん、それこそ店先で紹介すればわかりますが、この魚屋のおじさんを街の中で紹介するのはどうすればいいでしょう。紹介できないのです。
というのは不特定多数のところに出ていくときは、なるべく自分が何者であるかわからないように扮装するでしょう、だからです。
と言って扮装しないように、風呂屋で紹介するのも、大変難しいですね」
人物を紹介する、ここでドラマが面白くなるかにかかってきますから、手軽に考えてはいけないようです。