誕生
シナリオ・センター代表の小林です。今日は、事務局のスタッフ二人のお誕生日と産休に入るスタッフの壮行を祝いました。
一つ歳を重ねて経験を積んだスタッフと新たな生命を生み出すスタッフ、晴れやかな気持ちで祝えることが嬉しいです。
若手スタッフだったはずなのに、今やセンターを担う力になり、母親になるって、ま、こちらが歳をとるはずだなぁとしみじみ思っていたところへ、成人を迎えたばかりの新井講師の孫が顔を出し、ノックダウンされた気分に(笑)
時はあっという間に流れていくのですね。
原発は60年越えても運転OKという「GX脱炭素電源法」とか言う法案を可決したんだそうです。
確か福島第一原発が日本大震災で壊れた時に、最長60年までと決めたはずなのに、福島の処理も全くできていないのに、将来すら見えていないのに、わずか10年ちょっとで手のひら返しって、本当に日本のお上は怖いもの知らずです。
「60年超を認めるということは、簡単に言えば1966年あたりに発売になった「トヨタ・カローラ」をメンテを繰り返しながら乗り続けるのと何ら変わらない訳で、本当に大丈夫かね?と言う疑問しか残らないのであります。」
SNSでの発言に、なるほど、そういうことと同じかと。
ここのところ、地球上では自然災害が大きくなっており、日本はあちらこちらで地震がおきている・・・何か不安な雲行きなのに、根拠もなく心配ないからねといわれてもねぇ。
トビウオが飛ぶとき
出身ライターの桑原亮子さんの歌集が出ました。
「トビウオが飛ぶとき『舞い上がれ!』アンソロジー」(KADOKAWA)
桑原亮子さんがお描きになった(嶋田うれ葉さん・佃良太さん共作)前回終わった朝ドラ「舞い上がれ!」の中で、ヒロインの相手役貴司が歌人として短歌を詠み、その短歌がそれぞれの心象に、感情に、行動に、ドラマに大きく関係してきました。
このドラマをより深くしてきたのが、短歌でした。
朝ドラ「舞い上がれ!」を毎朝ご覧になっていた歌人の俵万智さんは、「ドラマそのものの圧倒的な魅力の前に歌心が抑えられなかった」と毎ドラマを見て短歌をツイートされていらしたほど。そのご縁で解説も書いていらっしゃいます。
桑原亮子さんご自身、皇居で行われる「歌会始」でも詠まれたという歌人でいらして、ヒロインの夫貴司をはじめ登場人物の短歌を作られました。
このドラマのおかげで、短歌ブームになり、短歌を詠んでみたいという方が急増したそうです。
本当に桑原さんの詠まれる短歌は、ドラマと合わせるのでわかりやすいということもあるのでしょうが、短歌を知らない人にも響きます。
「トビウオが飛ぶとき」は、貴司だけでなく、貴司の師匠八木、編集者リュー、貴司に恋する史子の短歌も載せていますが、それぞれのキャラクターが見事に出ています。
このキャラクターを詠み分けた桑原さんの技は半端じゃない。驚きです。
この本のタイトルになっているトビウオは
「トビウオが飛ぶときほかの魚は知る水の外にも世界があると」(貴司)
ヒロインの舞が外の世界へと羽ばたいたことで自分にも未知の世界があると知った貴司の心情を描いています。
これから何かを目指している人への応援歌のようでもありますね。
私がすごく気に入ったのは、ドラマでは貴司に恋する史子、舞の恋敵の短歌。
「縫ひしものに針の残りてをらぬこと確かむるごとメールを見返す」
貴司を諦め、「本歌取り」で舞に貴司の愛を教えた史子が、針を残していないか着物を確かめるようにメールに言葉の毒が残っていないかを確かめるこの歌、女の業が、史子のつらい恋の終わりを見事に表現していて、大好きです。
短歌は、五七五七七、三十一文字(みそひともじ)に心を託します。
80年前の戦時下で兵隊にとられた新井一は、戦地から新婚の妻へのはがきに短歌を書いて出していました。
戦時下は身内への手紙一つも検閲されたのですが、幸いなことに短歌をわかる人がいなかったので、相聞歌だとは気づかれずに送れたのだそうです。
自分の両親のことで恥ずかしいですが、もちろん母も返歌を。
俳句や短歌を描こうと思うと、今迄気にしなかった道端の雑草にも雨粒にも目が行きます。
これはシナリオも同じで、創作というものは、何かを描こうと思うと、今まで見えなかったものが見え、聴こえなかったものが聴こえるのです。
そんな素敵な世界をどうか多くの方に楽しんでいただけたらと。