第22回「女による女のためのR-18文学賞」(応募総数772作品)で、友近賞を受賞された義井優さん(元作家集団)。受賞作は『ゴーヤとチーズの精霊馬』(応募時『子供おばさんとおばさん子供』より改題)。
鋭い観察眼をもつお笑い芸人・女優の友近さんがおひとりで選ぶ「友近賞」を受賞されたと聞けば、「どんな作品なんだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
あらすじがこちら。
==『ゴーヤとチーズの精霊馬』====
「夏休みに3日間だけ娘を預かってくれないか」。再婚し、9歳の連れ子の親となった父に頼まれ、希帆は戸惑いながらも義理の妹・穂乃花を迎える。母が亡くなってもうすぐ一年。築百年を超える木造の家でひとり過ごしていた希帆だったが、穂乃花は家事に熱心な子供で--。
受賞作はどのようにして生まれたのか等々、お話ししていただいた義井さんのインタビューは『月刊シナリオ教室』(2023年8月号)に掲載予定です。
一足お先に、こちらのブログ用にもコメントをいただきましたのでご紹介。受賞作に関することだけでなく、シナリオ・センターで学んだことで小説に活かせていることもお聞きしています。
「物語をうまく作ることができない」とお悩みの方や、「小説を書くのにシナリオの技術って使えるの?」と疑問をおもちの方、そのヒントや答えがあると思います。参考にしてください。
受賞作『ゴーヤとチーズの精霊馬』について
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――受賞作を書こうと思ったキッカケを教えてください。
〇義井さん:仕事はバリバリできるけれど家事は全くできない「子供おばさん」のような女性と、家事の得意な「おばさん子供」のような子供。この2人が何かする話はおもしろいのではないか、という設定を思いついたのがキッカケでした。
最初はシナリオにしようと思っていたのですが、うまくシナリオにできず、小説にすることに。設定は生かしつつも、キャラクターを少し変えました。また、シナリオで描いていた“期間”も短くして、小説では“3日間の話”にしました。
――審査員の方々による講評を受けて、気づいたことや今後活かそうと思ったことはありますか?
〇義井さん:色々と気づいたことはあるのですが、「小さい話にまとまってしまっている」というご指摘が特に印象的でした。どうしたらまとまり過ぎずに、きれいな形にしようとし過ぎずに書いていけるかが今後の課題です。
それと、タイトルはいつも思いつきで決めてしまっていたのですが、「タイトルをもっと考えた方がいい」というご指摘もいただき、今後気をつけようと思いました。
「シナリオを勉強しておいて良かったと思う瞬間は、物語を作り始めるとき」
――小説はいつ頃から書かれていますか?また、小説を書くときに役立っているシナリオの技術はありますか?
〇義井さん:最初に小説を書いたのは子供の頃ですが、きちんと書き始めたのは転職して、シナリオ・センターに入ったのと同時期ぐらいからです。
役立っていることはたくさんありますが、中でもキャラクター造形と物語の構成かと思います。キャラクターを考えたり、物語の構成を作ったりといったところは、小説でもシナリオでも共通の部分が多いかなと感じます。
――どのように題材を考えたり、発想していますか?
〇義井さん:自分であらかじめ、作品を出すコンクールなりコンペなりを決めておくと、日常でもスルーしていたものが目に入りやすくなる気がします。無意識的にネタ探しをするようになるのかもしれません。それを意識的に集めて、自分のなかで引っかかったものを書き留めたり、記事などを取っておいたりするのもいいのかなと思います。
あと、これはある方が仰っていたことですが、自分の好きな物語から「こういうのを書いてみたいな」と考えていくのも出発点になるかもしれません。
――「シナリオを勉強しておいて良かった」と思うときはどんな瞬間ですか?
〇義井さん:物語を作り始めるときです。私はある程度キャラクターと物語全体の流れ的なものを考えてから書き始めるのですが、それら全てはシナリオの勉強をする中で培ったものです。
自分もまだまだなのでわからない部分も多いのですが、小説はプロデューサーや監督等と一緒に作っていくシナリオと比べて、想像以上に作家一人に委ねられているものなのかなと感じます。もちろん、編集者の方が色々言って下さると思いますし、脚本家もベテランになれば一人ですべて書く方も多いかと思いますが。
今後、自分で物語を作っていかなくてはならないときに、シナリオで勉強したことが自分の縁(よすが)になってくれるのではないかと思っています。
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義井さんのコメントから、「シナリオの技術って小説を書くときにも本当に使えるんだ」と感じていただけたのではないでしょうか。「もっと具体的にどんな技術があるのか知りたい!」という方は、面白い小説を書くためのヒントが沢山見つかると思いますので、ぜひお気軽にシナリオ・センターの基礎講座にご参加ください!
小説コンクール受賞者&シナリオ・センター出身小説家のコメント記事一覧
☆これまでも在籍生&出身生が小説コンクールで受賞されています。
▼NovelJam 2021 Online 北野勇作賞受賞 日野光里さん
▼第14回深大寺短編恋愛小説 深大寺恋物語 調布市長賞受賞 奥村美紀さん
☆シナリオ・センター出身の小説家の方々のコメントもご覧ください。
▼大山淳子さん/『あずかりやさん』シリーズ、『通夜女』他、を書いて
▼立川談慶さん/シナリオの技術を落語に、小説に、そしてシナリオに
- シナリオは、だれでもうまくなれます
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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