「映像シナリオを書いているけど、ラジオドラマも書きたい。でも難しそう……」という方。
ラジオドラマ特有の書き方がわかれば書けます!
それはなぜか。ラジオドラマ講座を担当している安藤るみ子講師のコメントをご紹介。
初心者がまずおさえておくべき、ラジオドラマと映像ドラマの違い
〇安藤講師:ラジオドラマは映像がないので、映像シナリオにおける「柱」と「ト書」は書きません。これは、映像シナリオを書いている人にとっては特に衝撃が大きいようですね。
では、柱とト書で書いている場所や情景や状況などの指示は、ラジオドラマではどうすればいいのか。
「セリフ」「モノローグ」「ナレーション」「効果音」で表現していきます。
例えば、「渋谷に移動した」という状況を伝えたいなら、町の雑踏や車の音を入れます。ただ、それだけでは「渋谷」とは分からないので、音の前後に「渋谷に行ってくる」とか「渋谷は人が多いね」といったセリフを入れて分からせたりします。
映像シナリオを書いている方は「説明セリフだけどいいのかな?」と思うかもしれませんが、ラジオドラマは音で表現してリスナー(聴取者)に想像してもらうので、説明的なセリフを書いてもいいわけです。
また、セリフの書き方で言えば、無言や余韻を表す「……」は、ラジオドラマでは基本的に使いません。カメラなら表情を映せば分かりますが、ラジオではできませんからね。無音が3秒以上続くと、放送事故扱いになりかねません、気をつけましょう(笑)。
こんな風に、映像シナリオとは少し書き方が違うところがありますね。
ラジオドラマと映像ドラマ、共通して大切なこと
〇安藤講師:前述したように、書き方の違いはありますが、ここさえおさえておけば、あとは映像ドラマを書くときとそれほど変わりません。例えば、「主人公のキャラクターの魅力」と「葛藤」で“ドラマを創る”というところは、ラジオドラマも映像ドラマも同じです。
特に、葛藤は「これでもか!」というくらい、主人公にさせてください。映像ドラマの視聴者と同様、ラジオドラマのリスナーも物語のどこに惹かれるのかと言ったら、やっぱり主人公が葛藤している姿なんですよ。「もうこの人は最後まで達成できないのでは……」とリスナーが心配になるくらい、「成し遂げたいけど成し遂げられない」といった感じで主人公をとことん困らせてください。
もっと言えば、ラジオドラマは映像シナリオ以上に葛藤の描写が大事になります。映像がなく音だけになるので、主人公が葛藤している姿がしっかり伝わるように表現しないといけない。だから、主人公の葛藤を中心にドラマを展開させるようにしてください。イメージとしては、“主人公にマイクが付いて回る”ような感じです。「主人公の声はつねにドラマの中心にある」と考えてくださいね。
思いがけない自分の才能に目覚めるかも!
〇安藤講師:ラジオドラマはセットを組む必要がないので、時代劇やSF、ファンタジーなど実写映像だと少し再現が難しい設定も自由に書けますよ。
それに、もしかしたら、映像シナリオよりも書きやすいと感じるかもしれません。
というのは、ラジオドラマは“小説的な描写”もOKなんです。映像シナリオなら、形容詞や形容動詞、副詞などはなるべく使わず、読む人によって解釈が変わらないように具体的な表現にしますよね。でも、ラジオドラマは音で表現して、リスナーそれぞれがイメージしながら聴くので、「絶世の美女」とか「国宝級のイケメン」といった書き方をしていい。小説が好きな方や小説を書いている方も、ラジオドラマは書きやすいかもしれませんよ。
どうでしょうか、「ラジオドラマは難しそう」と心配されている方。ラジオドラマの“型”さえつかめば、いろいろなジャンルを自由に表現できます。自由度が高いので、作家性が発揮できますよ。
私が担当しているラジオドラマ講座は、今年2023年も実施します。ラジオドラマ初心者でも書けるように『いっきに書けるラジオドラマとテレビドラマ』(森治美・堀江史朗執筆・シナリオ・センター編)をテキストに、音でドラマを作るための、ラジオドラマならではの書き方を整理していきます。
柱のないラジオドラマの形式に慣れながら、音の世界をいかに描いていくか。
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※シナリオ・センター在籍生&出身生には、ラジオドラマコンクールで受賞されている方も沢山いらっしゃいます。ご参考までにこちらの記事もご覧ください。
▼表現の幅が広がるラジオドラマ/第16回南のシナリオ大賞受賞者に学ぶ