動画制作に意欲的な子どもたちの想いを実現するには
最近、小学校の先生方からこういったご相談のお電話をいただきます。
総合(=小学校の「総合的な学習の時間」)の発表会で動画を上映することになりました。
子どもたちは「こういうものを作りたい!」と意欲的。
でも、子どもたちが思い描いたような動画になかなかなりません。
どうしたらいいか困っています……。
そうですよね。「先生。私達、もっと良い動画にしたいです!」と楽しそうに、夢中に、一生懸命作っている子どもたちに言われたら、全力で後押しをしたいけど、でも、どうアドバイスをしたらいいか、悩んでしまいますよね。
そんな、悩める先生方に向けて。
今回は、総合の発表会で「神業チャレンジ!動画」を上映するという、
横浜市立青木小学校6年生の皆さんに向けて実施したキッズシナリオの模様をご紹介。
こちらの動画をより良いものにするためにはどうすればいいか?
その方法をお伝えしたシナリオ・センター田中が、レポートいたします!
=今回の概要==============
・サービス名:「キッズシナリオ 良い動画を作りたい!」(全2回)
・目的:総合発表会に向けた動画づくり
・対象:横浜市立青木小学校 さま
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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「観ている人を楽しませたい!」
*
担任の先生によると、12月頃に行われる総合の発表会で自分たちの作った動画を発表する予定で、その練習として『神業チャレンジ!動画』(※)を作ってみたのだそう。
※神業チャレンジとはまねできないようなスーパープレイを動画に収めること。
例:遠くのゴミ箱に三回連続で入れる、10個のサイコロを振り続けぞろ目にする など
その動画を事前に送っていただき、田中、拝見。
・ノールックで帽子を投げ、友だちの頭に落とす動画
・ちりとりをラケットのようにしてゴミ箱にゴミを入れる動画
・ものすごい遠くからペンをキャッチする動画 などなど
どの動画も「おー!」となるものばかりでした。
でも、子どもたちは、出来上がったものに納得がいかないとのこと。
そんな生徒の皆さんは、もしかしたら今頃、
もやもやした悩みを抱きながら教室でドヨーンとしているのでは……。
「良い動画を作るにはどうしたらいいんだ。。。」と肩を落としているのでは……。
ということで、わたくし田中が、反町にある横浜市立青木小学校に出向かせていただくこととなりました。
教室に入ってみると6年生の皆さんは、どよーんとした様子ではなく、ひとまず ほっ。
話を聞いてみると、動画づくり自体は盛り上がったみたいです。
むしろ前向きな状態で、どうしたらいいのか考えあぐねている感じでした。
そこで、動画づくりの中でどんなことに悩んだか聞いてみました。
すると、たくさん手が挙がり、たくさんの意見が出ました。
・神業チャレンジ自体のクオリティーが低いのでは?
・神業チャレンジが成功するまで、早送りするシーンが長いのかも
・同じようなテロップとか編集になっちゃう などなど
もう少し、“深堀り”してみます。
〇田中:なんでそれが上手くいってないと思うの?
〇生徒さん:だって、観ている人に楽しんでもらえないような気がするから……。
〇生徒さん:観ている人を楽しませたい!
〇田中:すごい、さすがです!なぜなら良い動画を作るには、「動画を観ている人を意識すること」が第一歩だからです。そもそも動画というのは、動画を通して誰かに、伝えたいことを伝えるためのひとつの方法。問題は、それをどんな方法で伝えればいいのか。今日はその方法をお渡ししますね!
〇皆さん:はい!
――気合十分です!!
伝えたいことを「ひとこと」でまとめる
まずは、『神業チャレンジ!動画』で伝えたいことを「ひとこと」でまとめてもらいます。
これは、シナリオの技術でいうテーマです。
ひとこと。といっても「友情」なら「友情」だけでなく、友情が何なのか具体的にすること。
友情は大切なのか、友情は儚いのか、友情は必要ないのか。
チームに分かれて相談してもらいます。
改めて、伝えたいことを「ひとこと」にしてみると、それぞれ異なる想いがあったようです。
あるチームはこんな意見が出ていました↓
・「協力することのすばらしさ」だよね
・「ばかばかしいことも必要だ」がいいよ
・「神業チャレンジは芸術だ」ってことで!
いいですね!こんな風に意見を共有して、その中から1つに絞っていくと、制作する動画の内容も、編集も、タッチなどの方向性も見えやすくなります。これが大事なのです。
こうやって伝えたいことを「ひとこと」で決めておくと、もし制作中に迷うことがあっても「何を伝えたい動画だっけ?」と立ち戻れば、ベストな選択を導きやすくなります。
大事なのは伝えたいことが伝わる神業チャレンジにすること。
ということは、“神業チャレンジ”だからといって、必ずしも難しいチャレンジをしなければいけない、というわけではないんです。それに、必要以上に凝った編集も考えなくていいのです。
このこともお伝えすると、皆さん「そうかそうか」と頷いてくれました!
伝えたい「ひとこと」から動画を見直す
伝えたいことをみんなで共有して、1つに絞った後、確認しておくべき大切なことがあります。
それは、「誰に」伝えようとしているか。
「誰に伝えるか」で見せ方がガラッと変わってくるからです。
例えば、テロップひとつ入れるにしても、「先生」に伝えたいのか、「1年生の太郎君」に伝えたいのかで、言葉遣いも変わってきますよね。対象を具体化することで、「この人に伝わるのはどのアイデアかな」と取捨選択しやすくなりますし、方向性が明確なので新しい発想も生まれやすくなります。
この作業が終わると、また次の作業です。
既に作った動画に足りない素材・削れる素材を書き出してもらいます。
伝えたいことを「諦めない事の素晴らしさ」にしたチームは、
・頑張ってるところが足りない。
・諦めたくなるような神業になっていないかも。
とメモしていました。
かたや、「バカバカしいことは必要だ」を伝えたいことにしたチームは、
・まだまだ真面目だ!
・もっとふざけないと!
と沢山“バカバカしいアイデア”を出していました。
伝えたいことに向かって着実に良い動画づくりへと進んでいます。
「すごいねー!」で終わらない、伝えたいことが伝わる動画を。
最後は実習タイムです。今日、すり合わせて確認してきたことを踏まえて、絵コンテとテロップ(※)に何を書くかをシナリオで整理していきます。
※絵コンテとテロップについてはこちらの記事を
▼小学生が町の魅力をPR/動画を作る時の4つのポイント
すると、なんということでしょう!
チームごとに良い動画のアイデアがどんどんと生まれました。
まとまったところで、それぞれのチームの島に行って、聴いてみることに。
〇田中:この動画で伝えたいことは何ですか?
〇生徒さん:「諦めないことの素晴らしさ」です。
〇田中:それを伝えるために、どんなことをしていきますか?
〇生徒さん:一旦、みんなで諦めようとするシーンを加えて、でも、友達の一言で、やっぱり諦めないでもう一回チャレンジをして達成する、という流れに変更します!
〇生徒さん:そうすれば、「ただ神業チャレンジを見せてすごいねー!」っていう動画じゃなくて、私たちが伝えたい「諦めないことの素晴らしさ」がちゃんと伝わる良い動画になるんじゃないかと思いました。
田中、感動です。すごい、すごすぎる。この他のチームも、伝えたいことが伝わる動画にするためにいろいろ話し合って、修正案を聞かせてくれました。
シナリオを作って、これをもとに絵コンテも作っておけば、準備できる。
撮影現場で内容についてのディスカッションばかりの時間に費やすことなく良い動画のための良い撮影が進行できます。
観ている人に楽しんでもらえる良い動画にするために、今回お伝えした方法をぜひ活用してもらえたら嬉しいです。
担任の先生のお話では、次はいよいよ、総合の発表会で上映する動画づくりの本番だそうです。
完成を楽しみにしています!
* * *
今回ご紹介した生徒の皆さんのように、神業チャレンジ動画を作りたいと思っている子どもたちや、その他PR動画を作りたい子どもたちもいるかと思います。もし「子どもたちが目指す良い動画を実現するためにどう導いたらいいだろう……」とお悩みの先生いらっしゃいましたら、今回の模様をぜひ参考にしてください。
そしてこちらも是非チェックしてみてください↓
▼おすすめ書籍
新井一樹 企画・構成・著 改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/執筆 川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
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