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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

生き方

一月の声に歓びを刻め

一月の声に歓びを刻め

シナリオ・センター代表小林です。1月も半ばになりました。にもかかわらずまだ断水・停電のところもあるという能登。半島という特殊な場所の地震なのでと言い訳されても、今更感のあるこの国の危機管理。ただただ甘さに驚くばかりです。
地震国日本、そこら中に断層が通っているのですから、いつ何が起きてもおかしくないという想定で危機管理をしていないこと自体がおかしいと思います。いくらでもAIで想定ができる時代に、地域に分けて、その地域の特性にあった危機管理ぐらい朝飯前だと思うのですが、できないものなのですか。
志賀原発が危ないから首相はすぐに現地に行かなかったとか、自衛隊の動員が遅くなったとかの風聞が飛んでいますが、こんな噂も本当かも思うのもお上が信用できないからですよね。現実に志賀原発で起きたことを隠したり、軽く見せたりしていますからね。
ともかく、信じられるお上になってもらいたい。人を信じられないって、結構つらいのですよ、わかりますか?お上。
国民はみんなつらいのです。

まだ私がコピーライターの端くれだった頃、お料理や生活のノウハウを雑誌に載せる仕事を一緒にしていた友人が久々に訪ねてきました。
その昔、彼女と彼女の連れ合いになったカメラマンと3人で色々なところへ取材にいったり、様々な企画を売り込んだりしていました。もう50年も前のことです。
今の彼女は、フードスタイリストの草分けとして有名で、伊丹十三監督の映画「タンポポ」を皮きりに、多くの映画作りに欠かせない存在となっています。
そんな彼女が、フードスタイリストとしてだけでなく深く関わった映画、三島有紀子監督のオムニバス映画「一月の声に歓びを刻め」のチラシを持ってきました。
社会的に問題になっている子どもへの性暴力をテーマにしている問題作です。
国内外の映画祭で高い評価を受けている三島監督自身も持っている「性暴力と心の傷」をテーマにしたオムニバス映画。
三つの島を舞台に、「ある事件」と「れいこ」を探す心の旅を描きます。
前田敦子さん、カルーセル麻紀さん、哀川翔さん等が出演されています。
2/9からロードショーですので、是非ご覧になってください。

矜持

山田太一さんは、本当にすごい方だとしみじみ思いながらドラマ誌を読み返しています。
岡田恵和さんが、「想い出づくり」を手書きで何度も何度も書き写したとおっしゃっていらっしゃいましたが、そうしたくなることがよくわかります。
山田さんのシナリオ作法でなるほどなぁと思ったのは、話のつくり方です。抜粋してみますと
「なるべく心がけているのはテーマから入るのではなくて、スタイルから入る。つまりこういうシーンがあったらいいなぁとか、あの俳優さんをこういう場所に置くと面白いなぁとか、こんなような音楽で街を歩いていたらいいだろうなとか、そういうかなり具体的なものから入るんです。それから、何故そういうものを描きたいのかをやや批判的に考えていく。するとテーマがはっきりしてくる。」
「ドラマはスタイルが決まらないと全然先へ進みませんよね。(略)中上健次さんのスタイルで吉祥寺あたりの青年の話を書くのと、村上春樹さんのスタイルで同じものを書くのじゃずいぶんと違うでしょ。そういうことですね。切り口というのかな。」
新人のシナリオについて
「書きたいものを持ってるかもってないかが勝負だと思う。そして、その書きたいものが、如何に人にとって魅力的であるかどうかが問題だと思う。」
「僕らの仕事っていうのは、つまらないことにイライラしたりするのがエネルギーになっているんですね。非常に下世話なことで癪に障ったしているうちが華というか、そういういじましいといえばいじましい人間がドラマが好きなんだな。
大局的に批判したりするんじゃなくて、なんであそこであんなセリフ言うんだとか、俺ならああ書かないということが積み重なって、個性になっていくわけですよ。やっぱりどうしても他人というものが栄養になるんですね。」

山田太一さんの創作に対するエネルギーから生まれるすごさを知ると、ご自分の描いたセリフを一字一句変えさせないというのは当たり前のこととしか思えません。アドリブなんて入れられるはずもない。
そんなシナリオを皆さんにも書いてもらいたいと思った新年です。

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