昨年2023年12月、ブックファースト新宿店で「新井一樹 著『シナリオ・センター式 物語のつくり方』で読み解く『喫茶おじさん』創作の裏側と発想の秘密」を開催しました。
対談のお相手は『喫茶おじさん』の著者であり、シナリオ・センター 出身小説家の原田ひ香さん。
年末の忙しい時期にも関わらず、対面・オンラインで沢山の方々にご参加いただき、ありがとうございました!
こちらのブログでは当日の模様の一部を広報・齋藤がリポートいたします。
主に、以下の2点、
①シナリオ・センターは「物語を作る」というひとつの想いで集まっている場所
②大切なのはシーンを描くこと
――をご紹介。
特に「創作初心者でも本当に書けるようになるのかな?」「シナリオ・センターに通うおうか悩んでいる」という方は、原田さんのコメントが“ささる”のではないかと思います。参考にしてください。
シナリオ・センターは「物語を作る」という想いで集まっている場所
*
〇新井:原田さんには『シナリオ・センター式 物語のつくり方』を読んでいただきました。
こういう創作のノウハウ本はベテランのライターや脚本家の方が書くのが一般的なので、この本を出すにあたり正直、「私がこれを書いていいんだろうか?」という葛藤はあったんです。私はプロのライターではなく、ただの“新井一オタク”なので。
でも、祖父でありシナリオ・センター創設者である新井一が書いた『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』『シナリオ作法入門』『目からウロコのシナリオ虎の巻』などの書籍の内容が、今の人たちにも分かりやすく伝われば創作がもっと楽しくなる!という確信があった。それで、私が『シナリオ・センター式 物語のつくり方』としてまとめたという経緯があります。そのあたり、プロの原田さんとしてはどう思われますか?
〇原田:シナリオ・センターの講師の中にはプロを経験されてない方もいらっしゃると思うんです。でも私は、必ずしもプロの人がいい先生になれるとは思わない。レッスンプロってあるじゃないですか。野球選手を教えている人たちが全員プロだったかと言うとそうではないわけです。教えることのほうが上手い人が絶対にいる。
それに、小説家に必ず付いてる編集者さんは、みんながみんな小説家ではないですよね。小説家をやってから編集の道に来た方も、以前は小説を書きたいと思っていた方も中にはいますが、意外とそういう人は少ないんです。
でも私たちはその編集者さんの助言に耳を傾け、直しをする。だから自分が教わっている先生に対して「この人はプロじゃない」と思う人は、たぶん上手くいかないんじゃないかと。編集者さんやシナリオ講師の言うことを、ある程度素直に聞けない人は、私はあまりいいプロにはなれないんじゃないかなと思います。優れた指導者に習う一時期っていうのは絶対に必要です。だから、この本はいいんじゃないかなと思いました。
〇新井:原田さんは20年以上前にシナリオ・センターにお通いいただきました。当校の出身ライターは映画やテレビドラマの脚本家が多いのですが、原田さんのように小説家として活躍されている方も沢山いるんですよ。
〇原田:私は30代の頃にフジテレビヤングシナリオ大賞というコンクールで最終選考に残ったのを機に、フジテレビに出入りするようになりました。それまでシナリオは独学だったので、シナリオ・センターの基礎講座「シナリオ8週間講座」を受けました。
その後は本科ゼミに進み、20本の課題を1回も休まずに提出して、最速の5ヶ月で修了したんですね。ほんと、毎回楽しかった。以前、脚本家の山本むつみさんとお会いしたときにそう話したら、山本さんも一度も休まずに修了されたと仰っていました。毎回課題を出すのはプロになる人の共通点なんじゃないかと思います。
〇新井:以前シナリオ・センターで開催した公開講座にご登壇いただいた際も「プロになろうと思っていたから課題は毎週欠かさずに書いていた」と仰っていましたよね。
〇原田:そうですね。
ゼミでは、自分は全く課題を書かず発表もせずに、人の作品の感想だけ言う主(ぬし)のような方もいるんですよ。私もよくビビってました。でも、そういう方がいるのもシナリオ・センターの面白いところかなと思いますし、そんな怖い人ばかりがゼミにいるわけではないですしね。
〇新井:いろいろな人の前で作品を読んで感想をもらううちに、タフになっていくのかもしれませんよね。年齢も仕事も違う、バックグラウンドが異なった人たちが、「シナリオを作る」「物語を作る」というひとつの想いで集まっている場所なんですよ。考えてみれば、すごく変な場所ですよね(笑)。
ただ、この本でも伝えているように、やっぱりどんどん書かないと上手くならない。批評家になってしまってはダメなんです。
それから、課題ひとつひとつ、時間をかけて丁寧に書きたいという方もいらっしゃると思います。その気持ちはとてもいいとは思いますが、とはいえ、課題ひとつ書くのに1年かかっちゃったり、時間をかけすぎることが癖になってしまうのは勿体ないですよね。コンスタントにアウトプットをしていくことがとても大事だと思います。
「私が毎日やっているのは、シーンを描くことなんです」
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〇新井:新井一は、シナリオには「ドラマ」がないといけないし、ドラマとは「変化」であると言っていました。
物語を通して主人公がどう変化していくかを描くには、キャラクター(性格)の設定が重要になってくると思います。例えば、主人公に何かが起こると、それに対して何かしらのアクション・リアクションをする。それを繰り返していってどんどん物語が展開していくわけですが、そのアクション・リアクションが主人公のキャラクターならではのアクション・リアクションになっていないと、作者の都合で主人公を動かしているようにみえてしまいます。
原田さんは、キャラクターの設定はどういう風にされますか?
〇原田:主人公はちゃんと決めます。だいたいの年齢とか、見た感じの雰囲気を考えるんです。
でも一度、作品を書く前に小説作法の本を読んだことがあるんですよ。その本には「ネットで人物の写真を検索して、その人の履歴書を書いてみましょう」とか「特に写真は貼って、その前に座って考えるといいですよ」と書いてありました。ちょっと試してみたんですけど、私の場合は事前にキャラクターを決めちゃうと逆に動きが悪くなっちゃうみたいなんですよね。だから、登場人物の名前もその場その場で考えたり、誘導的にストーリーを流しつつ考えます。私にはそうするほうが合ってるみたいです。
私は、物語を考えるときは「映像」で見ていて、その浮かんだ映像を文字に書き起こすような形で小説を書いています。例えば、主人公が部屋で何かをしてるときにふっと誰かが入ってきて会話が始まる。するとそこで私も、入ってきたのは27~28歳くらいの女の子で、2人はこんなことを話すんだというのが分かってきて、2人が話している間にだんだん2人のキャラクターも決まっていく、みたいな感じです。
こういう風に、私の場合は完全に映像なんですよね。シナリオ・センターでシナリオの勉強をしようと思ったのも、自分が見ている映像を書き留めたかったからなんです。シナリオだったら自分の頭の中にある映像をそのまま書ける、映せるって思ったんですよね。だから課題を書くのも楽しかったですよ。
〇新井:自分の頭の中にある映像を書くにあたって、何かコツみたいなことはありますか?例えば、自分がイメージしている主人公が読者にちゃんと伝わるように書くにはどうしたらいいか、とか。
〇原田:特になにかを決めてる、とかではないんですよね。主人公の年齢とかも後から会話の中で出せばいいし、服装も上から全部描写するっていうんじゃなくて、「ああいう感じのおじさんか」って思ってもらえるような描写を2つないし3つぐらい入れるようにしていて。テレビドラマや映画なら映像を見てもらえば分かるけど、小説は文章なので、文章から読み取ってイメージしてもらえるように書くのがやっぱり大切かなと思っていますね。
だから、私が毎日やっていることっていうのは「シーンを描くこと」なんです。例えば、2人がケンカして別れる物語を考えるとしたら、じゃあそれはどんな場所で、2人がどんなことを話して、どんな流れで、どんなセリフでケンカになるのか、というようなことを毎日毎日考えているんですよ。
『シナリオ・センター式 物語のつくり方』にも「シーンを考える」という項目があるじゃないですか。『喫茶おじさん』を書いたときは、ちょっと古い感じの喫茶店で、人生が上手くいってない感じのおじさんがコーヒーを飲んでるようなシーンが映像で浮かんできました。早川世詩男さんが描いてくださった表紙のおじさんのイラストを見ると非常にしっくりきます。
〇新井:そうですよね。シナリオも小説も「シーンを描くこと」が大切だし、シーンを描くにはどうしたらいいかというと「どうやって」を描くことなんですよね。視聴者・読者も知りたいのはそこなんですよ。
でもなぜか初心者の方の場合、「どうやって」じゃなくて「どうなる」を書いてしまう。2人がケンカするシーンなのに、どんなケンカをしているのかはじっくり描かないで、「ケンカしました、はい、次こうなります」ってどんどん進めていっちゃう。こうなってああなって、というのはストーリー(筋)。ストーリーを書くんじゃなくて、「この主人公ならどうするのか」をしっかり描くことが、面白い物語をつくるには欠かせないんじゃないかなと思います。
※ 話を先に先に展開させないようにするにはどうしたらいいか、はこちらを↓
▼長編書けないなら主人公に葛藤をプラス
「物語を描く人たちが増えて、いい物語が世界に広がったら、世の中はもっと良くなっていくのでは」
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新井はこのイベントを
「新井一は戦争反対派で、第二次世界大戦中に反対意見を新聞に書いて捕まったほどの人です。『シナリオ・センター式 物語のつくり方』では、そういうことを言いたいわけではないんですけど、でも、誰もが物事を考えることができれば戦争なんか起きないんじゃないの?という想いがベースにあります。物語を描く人たちが増えて、いい物語が世界に広がっていったら、世の中はもっと良くなっていくんじゃないかな、と。だから是非、多くの皆さんに物語を作ってもらいたいと思っています」
という言葉で締めくくりました。
おかげさまで『シナリオ・センター式 物語のつくり方』(日本実業出版社)は、2023年12月時点で5刷3万部となりました。
読者のみなさまから「この本を読んで、全然書いたことがないけど興味が湧きました!」というお声を沢山いただいております。こういった感想をいただけるのは、上記の新井の想いも関係しているのではないかと思っています。
▼産経新聞さん掲載記事
・何か発信したい『シナリオ・センター式 物語のつくり方』新井一樹著
▼Real Sound ブックさん掲載記事
・『シナリオ・センター式物語のつくり方』著者・新井一樹が教える、人気作家を生み出す秘訣
まだお読みになられていない方はぜひご覧いただき、今回ご紹介した模様とともに創作活動に活かしていただければと思います。
そして、「シナリオ面白そう!」とより興味が湧きましたら、創作初心者の方にも分かりやすいカリキュラムで構成しておりますシナリオ・センターの基礎講座(シナリオ作家養成講座・シナリオ8週間講座・シナリオ通信講座)に是非ご参加ください!
※こちらの記事も併せて↓
▼物語を書き出せない方・挫折してしまう方も書きたくなる!『シナリオ・センター式 物語のつくり方』刊行記念対談より
▼面白い物語になっているかチェック!『シナリオ・センター式 物語のつくり方
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