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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

脚本家・森野マッシュさん/『VRおじさんの初恋』
ひとりで書くけどチームプレイ

ひとりで書くけどチームプレイ/脚本家・森野マッシュさん

「現場に出たことで、ひとりでコンクールに挑んでいたときには体験できなかったチームプレイの素晴らしさを知りました。シナリオライターは書くときはひとりだけどチームプレイ。いい仕事だなって思います」と話すのは出身ライターの森野マッシュさん。

森野さんは2022年に『ケの日のケケケ』で「第47回創作テレビドラマ大賞」の大賞を受賞。

その後、『沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~』(テレビ東京)の脚本や、『君となら恋をしてみても』(MBS)の脚色、夜ドラ『VRおじさんの初恋』(NHK)の脚色をご担当。

今回は主に、今年4月に放送され、ギャラクシー賞5月度月間賞を受賞された『VRおじさんの初恋』(原作は暴力とも子さんの同名漫画)についてお話を伺いました。脚本家志望の皆さんにとって、現場の雰囲気が分かる貴重な内容だと思いますので是非参考にしてください。

『月刊シナリオ教室』(2024年9月号)にはインタビューとともに『VRおじさんの初恋』第1週と第8週(最終週)のシナリオを掲載。併せてご覧ください。

ドラマとして一番いい帰結の仕方をみんなで議論

=ドラマ『VRおじさんの初恋』あらすじ==
人生において成功体験と言えるものが無い、中年の独身男性・直樹。年下の上司から生活態度について叱られ、大した実績を上げることもできない。そんな直樹の生きがいは、VRの世界で制服姿の女の子“ナオキ”になり1人で過ごすこと。だが直樹の愛するVRゲーム「トワイライト」は人気がなくなり、残り半年でサービスが終了予定。その終焉を見届けようとしていた。そんなある日、天真爛漫な美少女アバター“ホナミ”と出会う。現実でも人付き合いが苦手な“直樹=ナオキ”は、戸惑いを覚えつつもホナミと過ごす中で次第に心惹かれていく。ナオキの、そして直樹の、初恋だった。しかし突然、ホナミから「もうVR世界で会うことはできない」と別れを告げられて――。

▼NHKエンタープライズ ファミリー倶楽部
『VRおじさんの初恋』 PR動画

 

〇森野さん:創作テレビドラマ大賞の授賞式でお会いしたプロデューサーさんから、「原作を読んで、良かったら参加しませんか」とお声掛けいただきました。実際に読んだらとても気に入って、すぐ「やります!」とお返事しました。

「夜ドラ」(15分/毎週月曜~木曜放送)という枠で全32回(8週分)ありましたので、後半は演出の吉田照幸監督にも入っていただき、共同執筆で書かせていただいた回もあります。

前半はVR世界のパート。中盤はナオキの初恋の相手・ホナミの正体が明らかになるパート。そして後半は原作にはない“親子のドラマ”のパートです。

前半はほとんど好き放題に書かせていただいたので、「これ、撮れるのかな?」と少し心配でした。小説『銀河鉄道の夜』に出てくるような汽車や駅の他、パフェの自動販売機がある喫茶店など架空の場所がたくさん出てくるので。制作チームにとって、初めての試みが多かったそうですが、できあがった映像を観て、世界観の素晴らしさに感動しました。NHKさんの持つ技術力の高さには本当に驚きました。

当初は、VR世界をメインに全話を構成しようと考えていたのですが、現実の世界は全く描かずに仮想空間の世界だけにすると、もしかしたら好みが分かれてしまうかもしれないのでどうしようか、ということになりました。

スタッフの皆さんで話し合い、原作にはない部分を作ろうか、となったのですが、そもそも原作にない部分を作っていいのか。原作のメッセージからズレてしまうのではないか。原作ファンはどう思うか。などなど、考えることがいろいろあり、原作者の暴力とも子先生にたくさん相談させていただきました。

登場人物たちを最後、どこまで変化させるのがいいのか。ドラマとして一番いい帰結の仕方をみんなで議論し、考え抜いた結果、今回のカタチになりました。

ホン打ち、大好き。

〇森野さん:実は最初、「原作通りにしたい」という気持ちが強かったんです。私はどちらかというと「原作者ならどうするか」という意識が強くて。

でも、プロデューサーや監督は、企画やシナリオの段階で「これが映像になったらどうなるか」が既に見えていて、その上で「観客は何を見たいか」を、映像ドラマとして総合的に捉えているんですよね。

ドラマとして観客が楽しめる作品にすることで、本来届かなかった人や知らなかった人にも届き、そこから漫画を読む人も出てくる。だからまずは、ドラマとして面白くすることが大事なんだと、現場の方々から学びました。

私の体質はオフィスワークとの相性が悪く、大勢ひとがいる会社では仕事ができないので、ひとりや数人でできるシナリオという仕事を選びました。でも考えてみれば、その先には100人、200人のスタッフがいて、結果、チームプレイで作品が作れる。本当にありがたい!(笑)。

私、ホン打ち(=脚本の打合せ)、大好きなんですよ。けちょんけちょんに言われることもあるけど、自分の作品に意見を出してくれることがまず嬉しい! 

そもそも自分の知識量を信頼していないので。みんなが意見を言ってくれて、作品のクオリティも、自分のクオリティも上がる。「そのアイデア、いただいちゃっていいんですか? 私の名前で作品として世に出ちゃいますよ! いいんですね!」って(笑)。

最後に、後輩たちにメッセージ

〇森野さん:シナリオ・センターで基本的なことを全部教わりました。例えば現場で、書式を少々間違えてもそれほど問題はないですが、映像にできないことを書いてしまうと、誰かが困るというのがわかる。また、「小道具の使い方」「時間経過」「カットバック」など、技術を知っているのと知らないのとでは大きな違いがあると思います。

私の経験で言うと、「本当にこれだけは書きたい!」と思って書いた作品がコンクールでいい結果を出すような気がします。現場では「もっと森野さんらしさを出して」と言われることが多いんです。ベタを踏まえた上での作家性が求められる。

だからこそ、いま自分の書きたい作品を楽しく書いてコンクールに出して、自分らしさを追求することが大事なんじゃないかなと思います。

それから、いい映画を見て、なぜ面白いのかを分析して蓄積しておくと実際書くときに役立ちます。勉強は必要。

私はキャラクター重視になりすぎて全体の客観視がまだまだ苦手です。観客は何を見たいのか、何を喜ぶのか、を考えた構成力を身につけたい。いまもシナリオ・センターで学び直したいくらいです(笑)。

※シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家の方々にいただいたコメントも併せてご覧ください。

脚本や小説を書くとは/シナリオの技術を活かして

シナリオは、だれでもうまくなれます

「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。

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