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最初に浮かんだアイデアには もう一工夫
第3回トップシーン脚本大賞 2024

最初に浮かんだアイデアに一工夫/第3回トップシーン脚本大賞 2024

第3回目となる「トップシーン脚本大賞 2024」。
前回に引き続き、新井が企画・司会進行役を、柏田道夫講師が企画・審査委員長を、萩原恵礼さん(出身ライター・柏田クラスOG・『月刊シナリオ教室』編集部)が審査員を担当。

9月3日、YouTubeのライブ配信にて結果発表会を実施しました。当日は、応募総数751本(前回:1569本)のうち、特に気になる27作品を発表し、その中から「最優秀賞」「柏田道夫賞」「はぎわらちゃん賞」の3本を決定。

★最優秀賞:『天の川への逃避行』佐藤れんさん
★柏田賞:『負け犬の恋』谷口竣亮さん
★はぎわらちゃん賞:『片想いの夏がきた』詩川幸さん

発表会では、恒例の「萩原パワポ」も公開。これは審査を通して萩原さんが感じた作品の傾向をまとめた資料のこと。萩原さんがまとめてくれた“応募作あるある”は、「こういうお題を出されたとき、大半の人がこういうものを書く」というのがよく分かります。

萩原パワポを見て、「最初にポッと思いつくアイデアって大抵 他の人も考えていたりするので一旦ストップして、そこにもうひとつ何か違う要素を加えられないか考えてみるといいよね」と柏田講師。

これは、他のコンクールに応募するときも気をつけたほうがいいポイントなのでは!
ということでこの模様を広報の齋藤がリポートいたします。

「恋愛青春もの→10代の現代劇→学校」と発想したら一旦ストップ!

*

〇萩原さん:コンクールって「他の人がどういう作品を出しているか」というのはあんまり分からないですよね。なので今日は、ご応募いただいた751作品の傾向、「こういう作品が多かったよ」というのをお伝えします。もし自分が書いた作品が今回の“傾向”に当てはまっていたら、今後コンクールに出すときは「このアイデアは他の人と被るかな」とちょっと考えるようにしていただければと思います。

今回はお題が「恋愛青春もの」だったので、応募作のほとんどが、15~17歳(中学生・高校生)を主人公にした現代劇でした。

〇新井:「青春=10代」みたいな感じあるもんね。恋愛青春ものというと年齢って?

〇萩原さん:今回は「10代で」と指定はしていないので、それ以外の世代でもいいんですよ。“第二の青春”という言葉もありますしね。

「恋愛青春もの」と聞いて「10代」、かつ、時代劇とかSFとかでなく「現代劇」を書こうと思いついたら、一瞬立ち止まってほしい。ご応募いただいた751本のうち大多数が10代の現代劇だったということを皆さんに知っておいていただきたいです。

〇新井:柏田さん、恋愛青春もので好きな映画って何かあります?

〇柏田講師:いっぱいあるんだけど、強いて挙げるとしたら『冒険者たち』(1967年)と『太陽がいっぱい』(1960年)。

『冒険者たち』は3人の男女の愛と友情を描いた青春もの。『太陽がいっぱい』はミステリ―だけど、ある意味“青春の痛み”を描いている。2作品とも主人公は10代じゃないけど、夢を追いかけたり、恋愛や人間関係に悩んだりする姿が描かれている。

10代の青春ものでも勿論いいんだけど、もうちょっと年齢が上でもいいかなと。

〇新井:今回の規定ではひとり5本まで応募OKだったので、例えば3本出すならそのうちの1本を年齢や設定を変えて挑戦してみるとかね。

〇萩原さん:今回は、主人公を10代にした作品が多かったので、柱(場面)を「学校の教室」にしている作品も多かったです。751本のうち、教室のシーンがある作品は118編。その他、体育館は25編、図書室は9編、校門8編でした。

〇柏田講師:教室から校庭にいる子を見つめる、というのが多かった。絵になるけど定番中の定番だからね。

〇萩原さん: 10代の現代劇と言えば舞台は学校の教室、と咄嗟に思いついちゃうのかもしれないんですけど、そこでもやはり立ち止まってほしいんです。こうやって考える人は多いだろうなって。それと、一番最初に視聴者が見るトップシーンが果たして教室のシーンでいいのか、本当にそこに“こだわり”があるのか、自分自身に問いかけてほしい。

〇柏田講師:例えばね、学校って言っても、部室とか、美術室とか、プールとかだと、トップシーンで主人公のキャラクターや背景が分かるからね。ちょっともう一工夫してみてくださいね。

トップシーンで「スマホの画面」を思いついたら一旦ストップ!

*

〇萩原:映像にしにくいト書も今回は多かったです。頭の中でイメージが膨らんで思わず文学的な表現になってしまったのかなと思うんですけど。ト書には映像に映るものを書きます。例えば「浪人生」と書いても、「浪人してます」というバッチを付けているわけではないので、人がただ映っているだけで浪人しているかどうかは分からないんです。

〇柏田講師:「頬を赤くする」とか「耳を赤くする」というト書も多かったよね。役者さんにそれをやらせるのは難しいですよ。小説とかでもよくある表現だから書いちゃったのかなと思うんだけどね。

〇萩原さん:無意識のうちに書いてしまう表現もちょっと立ち止まっていただければ。

あと、特に多かったのが「スマホが既読にならない」というト書。未読のまま既読マークがつかない、ということだから、「既読にならない」という状態をずっと映さないといけない。

〇柏田:セリフにしちゃえば簡単なんだけどね。例えば「まだ見ていないんだ」とかね。

〇萩原:さらに言うと、こういうスマホの画面が登場する作品は50編ありました。前回の「トップシーン脚本大賞2022」のときも「スマホの画面にショックを受ける主人公」というのが多かったんですよね。

スマホの画面のシーンはドラマでも映画でも良く出てくるし、悪いと言ってるわけじゃないんですけど、トップシーンが「スマホの画面」で本当にいいのか。ここも一旦立ち止まって考えていただきたいです。

受賞の決め手は「何かが始まる!」という期待感

*

――上記のような「あるある」を乗り越え、決まった受賞作がこちら!

★最優秀賞『天の川への逃避行』佐藤れんさん
〇無人駅(夜)

   掲示板に寄りかかる橘颯太(17)。
   足元にボストンバッグ。きつく結んだ靴紐。
   夜空に一番星。蛙の鳴き声。
   山の麓に民家の灯り、2階の電気が消える。
   橘、ポケットから切符を2枚取り出す。

〇柏田講師:民家の2階にいる人が逃避行の相手なんだよね。「行かない」という“拒絶”で電気が消えたのか、これから駅に向かうから電気が消えたのか。来るかどうか、まだこの段階では分からない、というのがすごくいいんだよね。タイトルもいい。

〇萩原さん:登場人物はひとりなのに、もうひとりの存在を強く感じさせるところが上手い。2階の電気が消えて、それがキッカケで橘くんが切符を2枚取り出して、「何かが動き始めたぞ!どうなる!」って惹きこまれる。

〇柏田講師:モノローグやナレーションでシーンを全部説明しちゃってる作品が多かったけど、この作品はセリフもないし全然説明していない。次の展開への期待感が膨らむようなトップシーンになっている。

〇萩原さん:小道具もうまく使っていますよね。「きつく結んだ靴紐」はシャレードになっていて、彼の決意の強さを表している。また、「蛙の鳴き声」で音が聞こえてくるし、「民家の灯り」で光が見えてくるし、「2階の電気が消える」で“人の動き”も見える。情景が目に浮かぶように丁寧に描かれていて、映像表現というのはこういうことだなって思いました。

▼動画:「シャレード」について

★柏田賞『負け犬の恋』谷口竣亮さん
◯学校・玄関

   大雨。外を見つめる小林加奈(16)。
   長谷川昭彦(15)、加奈に近き。
長谷川「入る?」
   と、傘を差し出す。
   郷田陽介(16)、後ろから来て傘を取り。
郷田「助かる」
   と、加奈と相合傘をして歩いていく。

〇柏田講師:可哀想なんだけど、ちょっと笑っちゃうの。傘取られちゃう長谷川くん。対する郷田くんは絶対いい男なんだよね。でも“負け犬”の長谷川くんに頑張ってほしいじゃない。

〇新井:感情移入しちゃいますよね。

〇萩原さん:140文字という短い中で、長谷川くんが“応援したくなるほど要領が悪いキャラクター”だということと、三角関係であるということを、雨や傘をうまく使って鮮やかに描いているところがとても上手い。三角関係を描いている作品は意外と少なかったんですよ。

〇柏田:長谷川くんにどうしても自分を重ねてしまう(笑)。

〇新井:郷田ではなかった?

〇柏田:うん(笑)。長谷川くんに頑張ってほしいという想いも込めて柏田賞を。

★はぎわらちゃん賞『片想いの夏がきた』詩川幸さん
〇親戚の家・中

   襖を開いて中に入るトモヤ(16)。大きなリュックを背負っ  
   ている。縁側に座り、スイカを食べているアキ(20)の背中      
   を見つける。振り返る彼女。
アキ「久しぶりトモヤ。また、夏がきたね」
   笑顔のアキ、赤くなって顔を逸らすトモヤ。

〇柏田講師:さっきの「あるある」でも触れたけど、「赤くなって顔を逸らす」というのを役者さんにやってもらうのは難しい。例えばね、「久しぶりトモヤ。また、夏がきたね」ってアキが言ったらトモヤが「なんだよ。またスイカ食ってんのかよ」とかさ。

〇萩原さん: あと、これも「あるある」で触れましたけど、柱は映像に映るものを書きます。柱を「親戚の家」としても親戚であるかどうかは映像には映らない。親戚だということが分かる描写をしないと。

でも、応募総数751通の中で「歳の差恋愛」を描いたものはなかったんですよ。この作品はそこまで年齢差はないけど、微妙な歳の差をうまく使ってる。

〇柏田講師:アキさんがスイカを食べているのもいいよね。

〇萩原さん:トモヤくんを男として見ていない証ですよね。まったく緊張感がない。男として見られていないトモヤくんはたぶん今までも毎年、この親戚の家に来ていたと思うんだけど、16歳という思春期になって、ちょっと男性らしさも身につけたトモヤくんが今年も来た!さあ、この夏はどうなる!っていう。恋愛青春もののトップシーンにはピッタリだと思ったので萩原賞を。

12/1(日)開催の文学フリマで『トップシーン脚本大賞2024』 受賞作を掲載

なんと、12/1(日)開催 文学フリマにて、「トップシーン脚本大賞」受賞作を掲載した冊子を販売することになりました。それにあたり「恋愛青春もののトップシーン」を追加募集させていただきました。ご応募いただいた皆さま、ありがとうございました。
12/1の文学フリマに関しまして、また詳細が決まり次第お知らせいたしますのでご都合がよろしければ是非いらしてください!お待ちしております。

※『トップシーン脚本大賞2024』結果発表会の全容は是非こちらで↓
YouTube「トップシーン脚本大賞 2024」結果発表会

※これまでの模様&「あるある」もご覧ください。
第1回目「トップシーン脚本大賞」結果・講評

第2回「トップシーン脚本大賞」結果・講評

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