水曜日の君
シナリオ・センター代表の小林です。
昨日から何故か最初のテキストが入りません。ただいま点検中ですが原因不明です。とりあえず載せられるものだけ。どうも悪口がダメ見たい。(笑)
「東京ドラマアウォード 2024」の授賞式がありました。
嬉しいことに、出身ライターの描かれたドラマがたくさん評価されました。
☆連続ドラマ部門 作品賞
・グランプリ『VIVANT』(脚本:八津弘幸さん、李正美さん、宮本勇人さん、山本奈奈さん)
・優秀賞『舟を編む ~私、辞書つくります~』(脚本:蛭田直美さん)
・優秀賞『燕は戻ってこない』(脚本:長田育恵さん)
※『燕は戻ってこない』は、主演女優賞(石橋静河さん)、助演女優賞(内田有紀さん)も受賞
☆単発ドラマ部門 作品賞
・優秀賞『ブラック・ジャック』(脚本:森下佳子さん)
受賞作品を見るにつけ、如何に脚本がものをいうかということをまざまざと感じます。俳優さんが受賞するのもキャラクターがイキイキと動いているからです。
先輩に続け!追い越せ!魅力ある作品がたくさん生まれてきますように。
本科を修了された八木美帆子さんが、「ネット小説大賞」で入選され、文庫化されました。おめでとうございます。
「水曜日の君~あなたと奏でる未来の旋律~」(宝島社文庫)
不器用な人間関係を引きずっている二人のゆっくりと進む恋をピアノを通して描いています。
地域の交流センターで働く昴は、毎週水曜日の午後7時にだけピアノを弾きに来る「水曜日の君」に惹かれていく。
鎧塚という苗字のように鎧をかぶっている水曜日の君と昴、それぞれ重い過去を引きずっており、それゆえに歩くような速さでしか進まない恋の行方。
不器用で人と接することに自信がないふたりが、昴が庇護していたはずの妹によって、大きな一歩を踏みだすことに・・・。
人と接することがうまくないふたりの恋の行方、このふたりのキャラクターと、ちょっとだけ話を動かしてくれる警備員の山崎さん、ある事情から引きこもりになった妹宙、それぞれの事情づくりが秀逸です。
地域交流センターでピアノを弾く自分が唯一何でもない自分という鎧塚さんと他人に想いをうまく伝える術を持たない昴と、その昴の性格構築の一部になっている妹の存在、最後まで、二人の事情がわからないまま恋はノロノロと進んでいきます。
爽やかな恋でもなく、つらい恋というほどでもなく、ただただ生きることに不器用な、なんだろうな、今までにないラブストーリーです。
どちらかというとSFファンタジー系の多いネット小説受賞作ですが、たぶん商品化された小説の中でも異色のラブストーリーかと思います。
こんな素敵なキャラクターを創れる八木さんの次の作品が楽しみです。