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優れた良い脚本とは。
第49回創作テレビドラマ大賞 講評に学ぶ

優れた良い脚本とは/第49回創作テレビドラマ大賞 講評に学ぶ

第49回 創作テレビドラマ大賞(日本放送作家協会とNHKが共催)。応募総数1056作品の中から加藤予備さん(シナリオ作家養成講座修了)の『ある日彼女のパンティーが、』が大賞を受賞。

先日開催された授賞式の模様を広報の齋藤がリポートいたします。

加藤さんの「受賞の言葉」とともに、今回の受賞作についてスピーチされた菓子浩さん(NHK コンテンツ制作局 第3制作センター ドラマ ジャンル長)や、最終選考員である高橋練さん(NHKエンタープライズ 第3制作センター ドラマ部 部長)と脚本家・荒井修子さん(シナリオ・センター出身ライター)のコメントもご紹介。

優れた良い脚本とは、シナリオコンクールで賞を取る脚本とは、どういうものなのか。脚本家志望の方なら、こんなことを考えたことがあるのでは。色々な授賞式を取材させていただいて、そのヒントは審査員講評にあるのではないかと思っております。今回ご紹介する講評をお読みいただき、次回応募される際の参考にしてください。

大賞『ある日彼女のパンティーが、』加藤予備さん
「自分のやりたいことで生きていけるかもしれない。ということにかけて、精進していきたい」

=あらすじ=
並木想太(29)は現在休職中。ある日のこと。想太は妻・優衣(29)のパンティーに取り憑かれていた。想太は気になりすぎてしまう性格なのだ。自分の過失から川に流された優衣のパンティーが気にかかる想太は、台風の近づくその夜、家を飛び出す。漫画家の卵の優衣は事の顛末を漫画にし、コンクールで受賞するが、想太をネタにしたことに後ろめたさを感じる。一方、想太は何を思ったのか、頭や部屋にカメラを付け、自分を記録し始める。優衣の“武器”になるために、と。しかし、それが想太と社会のズレを一層浮き彫りにし、想太は傷ついてしまう――。

〇加藤さん: この度はこのような栄誉ある賞をいただき本当にありがとうございます。脚本業界・放送業界の諸先輩方に私の脚本を読んでいただけたことをとても光栄に思います。この審査に関わってくださった皆さまにも感謝しております。

この『ある日彼女のパンティーが、』は、ささやかな夫婦の話、お互いがお互いの味方で辛いことがあっても家に帰れば味方がいる、そういうことを書きたいと思い、作り始めました。読んでくださった皆さまに温かく受け取っていただけて、この夫婦を好きになってもらえて、本当に胸がいっぱいです。

物語を作ることは楽しいことばかりではないですが、これからも大変なこともあるかと思いますが、「自分のやりたいことで生きていけるかもしれない」ということにかけて、人の心を動かせるような、そんな物語を作っていけるよう、これからも精進していきます。

講評とエール
「生きづらくなってきた今の世の中に光を当てた素敵な3作品」

・菓子浩さん(NHK コンテンツ制作局 第3制作センター ドラマ ジャンル長)

〇菓子さん:受賞3作品(大賞1作品 佳作2作品)読ませていただきました。どの作品もすごく世界観が構築されていて、もうこのまま面白いドラマになるだろうなと率直に思いました。

テレビドラマは特にそうかもしれないのですが、ドラマはフィクションであっても自由にゼロからなんでも好きに書いていいか、というとそうではないと思っていまして。やっぱり「今、何が起こっているか」「人々がどういう想いをもっているか」ということと無縁ではいられないと思います。NHKでも年2回、提案会議があってものすごい数の企画が集まるのですが、そのとき必ず「今なぜこのドラマをやる意味があるのか?」ということを問われ続けます。

期せずして、受賞3作品はどれも、今のこの世の中でちょっと生きづらい想いを抱えた人たちにスポットを当てた作品。そのまなざしがすごく素敵でした。

テレビドラマを作る場合、キャストやスタッフの皆さん、本当に大勢の方の力が集まって1つの作品が生まれます。

でも、なんといっても一番大切なのは脚本だと思います。脚本がしっかりしていれば、正直、その後のスタッフがちょっと力不足でも面白いドラマが生まれたりします(笑)。

ですので、各局の制作者たちは脚本作りに一番力をかけているし、優れた脚本を探し続けているし、次世代の才能を探し求めているという状況だと思います。皆さんには是非これからも書き続けていただいて、将来一緒にドラマを作っていく仲間なっていただければと思っています。

高橋練さん(NHKエンタープライズ 第3制作センター ドラマ部 部長)

〇高橋さん:今回は魅力的な応募作品が多かったのですが、その中でも大賞の『ある日彼女のパンティーが、』は頭ひとつ抜けていて、票が沢山集まりました。「ドラマとして観てみたい」と推された方が多く、圧倒的に強かった。

選考会で一番盛り上がったのはこのタイトル。「内容は素晴らしいが、“パンティーが”というタイトルは、果たして良いのかどうなのか」と。タイトルは作品の顔なので、普通のタイトルにするよりは全然いいと思うんですけど、一方で、「タイトルで観なくなる人が結構いるんじゃないか」「タイトルだけでお客さんを逃すのは惜しいんじゃないか」という話もあったりしまして。

そういった意味でも、再来年の3月にこの作品がドラマ化されますので、堂々と放送されるのがすごく楽しみだなと思っています。

佳作一席の『こっち側のひと』(小山和行さん作)は、大変独特な世界観であらすじだけ読むとよく分からない話なんですよね、正直。でも、脚本を読んでいくと「あ、こういう世界って、あるかもしれないな」「今の日本ってこうじゃないかな」と思わせる、ある種の不思議なリアリティがあって。

さきほど小山さんの受賞スピーチでご経歴(ニュースや情報番組のディレクター・プロデューサー)を伺って、取材を通して培ったネットワークというのか、「今の日本の実情をドラマにするとこういうことなのかな」と思わせる力をおもちだったんだな、と思いました。登場人物もみんなあんまり喋らないんですけど、ひとりひとり、こんな人がいるかもしれないって思わせる。喋らないことの面白さやリアリティがありました。

佳作二席の『Dawn』(伊藤彰汰さん作)。伊藤さんは去年「佳作一席」で、今年「佳作二席」なので、ご本人の中では色々な想い、残念な想いがあるのではないかとは思うのですが、正直なことを言うと、選考員の先生方の中で「書く力が一番あるのはこの人じゃないか」「すごく脚本が書ける人」という意見が多かったです。

一方で、力がありすぎて、書きたいことが沢山ありすぎて、それがたぶん全部詰まったままになっていて、もう少し「ここが書きたい」というところを定めたほうが良かったんじゃないか、という話もありました。去年の受賞作品もそうですけど、伊藤さんならではの着眼点で、「人の弱いところや足りないところに対してどうアプローチしていくか」という魅力がとても出ていました。先ほどの受賞スピーチで、次回の第50回創作テレビドラマ大賞で大賞をとると仰っていましたので楽しみにしたいと思います!

実は先日、第47回 創作テレビドラマ大賞で大賞を受賞された森野マッシュさんの『ケの日のケケケ』が、第31回キネコ国際映画祭のティーンズ長編部門でグランプリをとりました。森野さんは現在、民放ドラマでも大活躍されています。

この作品以外にもこの2~3年、制作した作品が海外の国際映画祭でいくつか賞をいただいているんですよ。小粒だけどオリジナリティがあって魅力的な作品は、国を問わず通じるものがあるんじゃないかと思っています。次回も素晴らしい作品と出会えることを楽しみにしていますので、沢山のご応募をお待ちしております。

・脚本家・荒井修子さん

〇荒井さん:伊藤さん(佳作二席『Dawn』)は2年連続で入賞するというのがまずすごいところ。やっぱり書くものもすごく技術があるんですけど、その中にも熱い想いというか、伝えたい想いというのがとても感じられまして、こういう気迫がなければ、2年連続お仕事をしながら応募作を書き、そして、2年連続受賞するというのは、誰も真似のできないことだと思うんですね。本当に素晴らしいと思いました。

小山さん(佳作一席『こっち側のひと』)の作品は本当に独特で、大きな事件が起こるというわけではないのですが人の心の深いところに入っていく。その感情の中で、大きな揺れ動きというものを誘ってくれているような作品で惹きこまれました。最後の結末も、少し苦い部分がありながらも心が温かくなりました。

加藤さんの『ある日彼女のパンティーが、』は、やっぱりタイトルのインパクトが。狙っているんだろうけど、選考員みんなで色々話しあう部分がありまして。ただ、その中にある夫婦愛。いわゆる“よくある夫婦愛”ではなくて、主人公が抱えている心の問題を丁寧に丁寧に積み重ねていて。セリフもすごく、加藤さんご自身の想いというかセンスが感じられるもので、これもまた唯一無二という感じがありまして、大賞をとるに本当にふさわしいものだということで皆さん一致で大賞となりました。

先ほどの受賞スピーチで加藤さんが「好きなことを仕事にしていく大変さ」についてお話しされていらっしゃいましたが、それは本当にそうで、賞をとるだけでも本当に大変ですし、仕事として続けていくというのもとても大変だと思うんです。でも、素晴らしい選考員の方々が丁寧に読みこんでくださったこのコンクールで大賞に選ばれたということは本当にすごいことなので、自信をもってやっていっていただきたいと思います。

和やかな交流の場でもある授賞式

荒井さんは前述のスピーチの最後に「私自身も若手の頃からNHKさんで書かせていただいています。視聴者を数字だけで見ずに、“視聴者にどういうふうに届いているか”という、もっと深いところまで考えてドラマを作られています。NHKさんと言うと“保守的”という感じがあるかもしれないんですけど、先ほど高橋さんが仰ったように、海外の映画祭でも評価される斬新な作品を作られていますし、“新しいものを作ろう!”という意識を作り手の皆さんもっていらっしゃいます。NHKさんが共催されているこの賞を受賞されたということは、こういった方々とのご縁ができたということですので、またさらなるご発展を遂げていかれると思います」と仰っていました。

なお、創作テレビドラマ大賞の授賞式では例年、受賞者だけでなくファイナリストの方々や、創作ラジオドラマ大賞の受賞者&ファイナリストの方々も参加されます。皆さん登壇して“一言スピーチ”されたり、授賞式後の懇談会ではNHKの方々や選考員の脚本家の方々とお話しされたりと、とても和やかな素敵な雰囲気です。

脚本家志望の皆さま、「いいなあ」と思いますよね。今回ご紹介した講評を参考にしていただいて、ぜひ次回応募してください!

*     *     *

※これまでもシナリオ・センターの在籍生&出身生が創作テレビドラマ大賞を受賞しています。

第48回創作テレビドラマ大賞に学ぶ/社会問題を描く時の参考にも

第47回創作テレビドラマ大賞/身近な世界の物語を書く

第46回創作テレビドラマ大賞/ドラマ・映画が好きで、書くことも好きならシナリオ

第44回創作テレビドラマ大賞/自分が書きたいものを書いて賞をとるには

第43回創作テレビドラマ大賞/脚本家になるには“出し続ける”

第42回創作テレビドラマ大賞/受賞後の心構え

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