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「総合的な学習の時間(総合)」で、神橋小学校の素晴らしさを伝えるべく、ドラマ仕立ての映画をつくった4年生の皆さん。
「台本を作って、一通り映画も作っては見たものの……。
もっと面白くならないでしょうか!」というご相談を受けました。
なんとストイックな小学4年生たち!
まず、その映画を送っていただき、拝見。
お、お、面白い!!!
でも、「もっと面白くしたい」という皆さんの声が聞こえてきました。
その声に応えるべく、“作った映画をブラッシュアップする方法”をご紹介しました。
当日の模様をシナリオ・センターの田中がレポートいたします!
=今回の概要==============
・サービス名:「作った映画をもっと面白くする方法」
・目的:映画づくりの感触を知った上で、本格的な映画づくりをしたい
・対象:横浜市立神橋小学校さま(4年生)
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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まずは皆さんがどのように映画を作ったのか聞いてみました。
皆さんがどんな内容の映画を作ったのかというと――
「神橋小にクレーマー軍団が現れた。
学校を無くそうとするその軍団に対し、
みんなが神橋小の良いところを伝えて撃退する話」
なんと素晴らしいアイデア!
自分たちの小学校の良さを伝えるために「クレーマー」という発想はなかなか出てきませんよね。
ストーリーの中で、楽しみながら小学校の良いところも知れる、という構造になっています。
面白そうですよね!実際、面白かったんですよ。
この映画をどうやって作ったか、も聞いてみたら、
①「給食のおいしさ」を伝える班
②「学校のみんなが優しいこと」を伝える班
③「音楽室の楽器の豊富さ」を伝える班
④「神社があり、神様に守られ、さらにお祭りがあることの素晴らしさ」を伝える班
⑤「体育館で行う音楽会のみんなの澄んだ声の素晴らしさ」を伝える班
「グラウンドの遊具でみんなの憩いの場の素晴らしさ」を伝える班
と、このように分担して製作。
それぞれの班で、“撮影プラン”としてのシナリオも書いて、
協力して撮影に臨んだ、とのことでした。
すごい。すごすぎる。
もう作り方も、面白い映画もできてるし、もう充分なのかも……。
という考えが頭をよぎりましたが、みんなの顔を見ると……
「いえいえ、もっと面白くしたいんです!」という熱意が!
そこで、まずお伝えしたのが登場人物のキャラクターについてでした。
登場人物のキャラクターを見直してみる。
「クレーマー」というと“乱暴者”
「学校の良いところを伝える人」というと“良い子”
というイメージがありませんか?
実際にみんなが作ってくれた映画の登場人物も、そのようなキャラクターになっていました。
でも、「より面白くしたい!」という皆さんには、その“よくあるイメージ”を裏切って、意外性を出してほしい!
そんな想いから、それぞれの人物の「キャラクター(性格)」を、見直してもらうことにしました。
いま、「え?」と思いました?
「キャラクター」じゃなくて「ストーリー」を見直したほうがいいのでは?
と思われたのではないでしょうか?
面白い作品に触れたとき、「面白いストーリーだった!」と思う方が圧倒的に多いのではないかと思います。
でも。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオ作法入門』(映人社)の中で、ストーリーについてこう述べています。
「ストーリーには原型があるんじゃないかと思って、パターンを探し始めた。
それが次の23通りです」(P36より抜粋)
また、このような記述も。
「大事なのはストーリーのパターンは有限だということなんです。
素人の場合は無限だ、と思うんですよね」(P38より抜粋)
新井一は、ストーリーは23パターンだと言っています。
そして新井一が言うように、ストーリーが“有限”ならば、
なぜ私たちは新しい物語に何度も触れたくなるのでしょうか。
それは、その物語の“登場人物”と初めて出会うから、ではないでしょうか。
その登場人物はどんな性格で、どんなカセを背負っていて、
どんな苦難に、どう立ち向かって、どんなことを言ったり、どんな行動に出るのか。
例えば、『桃太郎』も『七人の侍』も『陽気なギャングが地球を回す』も『ミッション:インポッシブル』シリーズも『特攻野郎Aチーム』シリーズも『オーシャンズ11』シリーズも、パターンは同じなんですよ。ちなみに新井一はこのパターンを『桃太郎』型と呼んでいます。
パターンは同じでも上記の作品、全然違いますよね?
それはなぜか。登場人物のキャラクターが違うからです。
では、どうやってキャラクターを考えたらいいのでしょうか?
キャラクターが違うと、セリフも言い方も変わる。
ということで、皆さんにはこんなことをやってもらいました。
青山ひかる(10)という架空の名前から、得意なこと・苦手なこと・性格を考えてみます。
聞いてみると……
「勉強が得意!」
「虫が苦手だと思う」
「性格は優しいと思います!」
こんなふうにいろいろなアイデアが出てくると、最初は名前だけだった「青山ひかるさん」が具体的な姿かたちとなってどんどん浮かんできますよね。
この“感覚”を実感してもらったところで、今度は、皆さんが作った映画の登場人物のキャラクターをブラッシュアップしてもらうことに。
「クレーマーというと“乱暴者”っていうイメージが強いけど、ちょっとそれとは違ったクレーマーもいるかもしれないよね。それに、そのほうが意外性があって、映画的に面白いと思わない?さっき青山ひかるさんを考えたように、このクレーマーもキャラクターを考えるともっと面白くなるよ!」と言うと、皆さんの目がキラキラ。
例えば、そのクレーマーが「真面目な性格」だったら、学校を無くそうとする理由を「まず1つ目に」と順序立てて話すかもしれませんよね。
「おどおどした性格」だったら、「どうせ、給食美味しくないんでしょ……」とボソボソと言って近づいてくるかもしれません。
キャラクターが違うと、セリフも言い方も変わってくるのです。
なので、次どんな言動をするのか、気になる存在になるのです。
このことを皆さんにお伝えすると「なるほどぉ!」と声を上げてくれました。
クレーマーのキャラクターを設定すると、どんなことをどんな風に言うのか、を考えやすくなります。
そして、それに対して、学校の良いところを言う人はどう言い返して、どんなふうに学校を案内するのか。
そしてまた、それに対してクレーマーはどう行動してくるのか。
考えるだけでも楽しくなってきますよね。
観る人も同じで、キャラクターをしっかり設定して、そのキャラクターならではのセリフや行動が展開されると「面白い!この後、どうなっちゃうの?」と釘付けになるのです。
だから、面白い映画を作るためにはまずキャラクターをしっかり作ること。
これが大切なのです。
より面白い映画にすべく、ひとりひとりの登場人物のキャラクターを見つめ直す神橋小の皆さん。
今からとっても楽しみです!
※動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※いろいろな学校でキッズシナリオを実施中。事例をご紹介しておりますので、「うちの学校にも来てほしい!」ということでしたらご参考までにご覧ください。
▼コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ