長編ホラー映画を作りたい、戸田市立笹目小学校6年生の皆さん。
昨年の出前授業「キッズシナリオ」で、わたくしシナリオ・センターの田中と講師の藤吉が、映画の基本的な作り方をお伝えしました(※)
※その模様はこちらで。
▼クラスでホラー映画をつくりたい!@戸田市立笹目小学校
長編ホラー映画を作る前に、まずは「練習」として、友情をモチーフにした短編映画を制作した皆さん。田中&藤吉は、その発表会にもご招待いただき、拝見させていただきました(※)
※その模様はこちらで。
▼みんなで撮った映画を上映!短編映画祭@戸田市立笹目小学校
そして。
皆さんの最終目標である長編ホラー映画の製作が佳境とのこと!
担任の先生からこんなご連絡をいただきました。
「現時点で出来上がっているところまでご覧いただいて、
子どもたちにフィードバックしていただけないでしょうか?
撮影が進むにつれて、ちょっと不安なことがあるようなんです」
勿論です!
ということで、前々回・前回同様、田中&藤吉コンビで、
今回はZoomで、出前授業「キッズシナリオ」を実施させていただきました。
“映画制作中に悩んだときの解消方法”を田中がレポートいたします!
=今回の概要==============
・サービス名 本格的な映画(ホラー)をつくろう(全3回)
・目的 総合学習で映画をつくる!
・対象 埼玉県戸田市立笹目小学校さま(6年生)
・時間 約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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もっともっと面白い作品にしたい!
まず、進捗状況を聞いてみたところ、4班に分かれて映画を作っている、とのこと。
なお、こちらのブログでは、より分かりやすいレポートになるよう、
4つの班のお名前を田中、勝手につけさせていただきます↓
①バナナ星人 班
②髪の長い幽霊 班
③ゴーストレディ 班
④ホラーゲーム 班
この4つの班それぞれが作った映画4作品を、いま出来上がっているところまで観せてもらいました。
①バナナ星人 班の作品
=あらすじ==
食べ物を大切にしない主人公が、苦手なバナナをぶん投げてしまった。
それをきっかけに現れた恐怖のバナナ星人に追いかけられて――。
◯田中の感想
バナナ星人の衣装もこだわって作っていましたね。
バナナ星人に捕まってしまい、縛られたところは怖かった!
◯藤吉さんの感想
バナナを投げ捨ててしまったら、まさかバナナ星人に追いかけられるなんて!自然と「食べ物を大切にしなきゃ!」と思えました! バナナ星人が迫ってくるシーンは、とってもハラハラしました!
②髪の長い幽霊 班の作品
=あらすじ==
肝試しに、夜の学校に忍び込んだ小学生たちは閉じ込められてしまう。そこに現れた髪の長い幽霊が、闇のゲームに彼らを巻き込んでいく。小学生たちが助かる方法は幽霊を倒すしかない。しかし、実は仲間の中に裏切者がいて――。
◯田中の感想
夜の怖い小学校の雰囲気が見事に映像から伝わってきました。
幽霊が登場したシーンもドキッとして怖かったです!
◯藤吉さんの感想
逃げる小学生それぞれの目線のシーンがあったり、ハラハラさせる工夫が満載でした!「みんなどうなっちゃうの!?」と、どんどん映画に引き込まれました!
③ゴーストレディ 班の作品
=あらすじ==
捨てた飲みかけのジュースがモンスターに変身。捨てた主人公とその仲間たちが追われてしまう!途中で出会った精霊ゴーストレディとともにモンスターと戦うことになり――。
◯田中の感想
唯一のアニメーション映画です。作画中のため、シナリオを発表してもらいました。すごく面白いシナリオでした。早く観たい!モンスターが、自分を捨てた人間へ復讐をする、という「対立」が見事に描けていました。
◯藤吉さんの感想
“ジュースがモンスターに変身”や“精霊と戦う”など、アニメーションだからこそできるシーンが満載!とってもわくわくしますね!完成が楽しみです!
④ホラーゲーム 班の作品
=あらすじ==
仲良しの2人が、「化け物から逃げながらクイズを解いてクリアしていく」というホラーゲームをしていると、その世界に入ってしまう。果たして2人は、もとの世界に戻れるのか――。
◯田中の感想
このゲームをどうやって乗り越えていくのか、ドキドキワクワク、今後が楽しみな映画でした。「得体の知れないものから追われる」という恐怖がうまく表現されていました。
〇藤吉さんの感想
2人で力を合わせて困難に立ち向かう——。少年漫画のような展開に胸が熱くなりました。頑張っている2人を自然と応援しちゃいます!続きが楽しみです!
以上、4編。途中までではありますが、どの作品も怖くて面白かったです!
でもだからこそ、田中&藤吉、皆さんにこれ以上のことを求めたくなりました。
この4編、もっともっと面白く作ることができるはず!と。
そう思いながら、ふとZoomに映っている皆さんのお顔を見てみると、どことなく浮かないご様子。
田中&藤吉、ピンときました。
田中&藤吉と同じように皆さんも、「もっともっと面白く作りたい!」と思っているのではないかと。
もっと良くするにはシナリオに立ち戻る
そこで、皆さんに聞いてみました。
ここまで作ってみて、どうですか?
すると、皆さん堰を切ったように声があがりました。
・撮り方はこれで良かったのでしょうか?
・編集をこんな感じで大丈夫でしょうか?
・演技はこれでいいのですか?
・衣装はどうしたらいいでしょうか?
そこで、「みんな、今よりももっともっと面白くするにはどうしたらいいんだろう?って思っているんだね」と聞いてみると、皆さん大きく頷いています。
すばらしい意欲です!
でも。
ひとつ気になったことがありました。
それは、皆さんの意識が「見せ方」に向いているということ。
決して、それがいけないことではないのです。
ただ、撮り方・編集・演技・衣装、をもっと良くするためには、「個々の見せ方」を考えるよりも、“おおもと”となる「シナリオ」を読み返してみることをオススメしたいのです!
だから、皆さんにこうお伝えしました。
〇田中:実は、担任の先生から事前に4作品のシナリオを送ってもらい、読ませてもらいました。
どの作品もテーマがしっかり設定されていて、誰に観てもらいたいのかも具体的に定められていて、登場人物のキャラクターもちゃんと設定されていました。
シナリオは映像にするための設計図です。皆さんは、素晴らしい設計図を作っています。
だから、撮影中に困ったら、この設計図に目を向けてほしいのです。皆さんが悩んでいることの“答え”は、必ずシナリオにあります。
例えば、「この撮り方で本当に大丈夫なのかな?」と心配になったら、もう一度、シナリオを読んでみてください。
そのシーンで映す登場人物は、どんな気持ちなのか。その気持ちがしっかり観客にちゃんと伝わっているか。そのためには、その登場人物をアップで撮ったほうがいいのか、それとも、ルーズで撮ったほうがいいのか。
その他の、「この編集で大丈夫かな?」「演技はこれでいいのかな?」「衣装はどうしたらいいのかな?」というときも同じ。
「この作品は〇〇がテーマなんだから、ここはカットしよう」とか、「この登場人物はこういうキャラクターだから、もっとこう演じよう」とか、「この登場人物はこういうキャラクターだから、こういう服を着よう」とか、こんなふうに、答えは必ずシナリオにあります。
――すると、皆さん「……」。
「完成予定日まで、もうわずかしかないから撮影や編集を進めたいのに、もう一度シナリオに戻るなんて……」と、ちょっと動揺させてしまったのかもしれません。
そう思っていると、担任の先生が静かに話し始めました。
〇先生:みんなの代わりに私が言います。
シナリオが完成したら、「じゃあ、大体この流れで」という感じでした。
だから、シナリオを片手に撮影をしていた、という実感が正直、なかったです。
完成予定日まで時間も迫っていますが、一旦、もう一度、シナリオに立ち戻ったほうが、微調整していくよりも早い気がします。そして、そのほうがもっと良い映画が完成するように思います。
〇田中:はい、私もそう思います。まずはもう一度みんなでシナリオを読んでみると、何か突破口が思い浮かぶかもしれません。どうでしょうか、みんなはどう思う?
――Zoomの画面からは、「うんうん」と頷いたり、メモを取ってくれていたり、「不安もあるけどそうしてみよう!」という皆さんの意思がうかがえます!
映画の巨匠・2人の言葉を皆さんに!
最後に、笹目小の皆さんに向けて、数々の名作を世に生みだした、こちらの2人の言葉を送りたいと思います。
何よりも重要なのはよいシナリオです。映画監督は錬金術師ではない。にわとりの糞から金を作り出すことなんて不可能なのだ。
ビリー・ワイルダー(映画監督・脚本家・プロデューサー)
シナリオが一流なら、監督が仮に二流三流でもいい映画はできる。だけどシナリオが三流なら、一流の監督がいくら頑張ってもうまくいきませんよ。
黒澤明(映画監督・脚本家・プロデューサー)
映画製作ラストスパート。応援しています!
田中&藤吉、完成を心待ちにしていますね!
※動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※いろいろな学校でキッズシナリオを実施中。事例をご紹介しておりますので、「うちの学校にも来てほしい!」ということでしたらご参考までにご覧ください。
▼コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ