就職活動で、履歴書やエントリーシートを書くときや面接のときに聞かれる「自己PR」。
「これを考えるの大変なんだよな……」とお困りの方。
自己PRを考えるときは、シナリオの技術が使えます!
その方法や理由を、シナリオ・センターの新井が昭和女子大学の皆さんに向けて実施したカレッジシナリオの模様からご紹介。広報の齋藤がリポートいたします。
=今回の概要==============
・サービス名:「シナリオの技術と発想の使い方」(全2回)
・目的:創作だけでなくキャリアアップにも役立てる
・対象:昭和女子大学人間文化学部日本語日本文学科
・時間:各約90分
※カレッジシナリオなど、子ども・学生向け出前授業の実施例
https://www.scenario.co.jp/online/23609/
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長所・短所ではなく憧れ性・共通性と考える!
こちらのブログでは2回目に実施した模様をご紹介。
〇新井:前回、物語を作るときは「ストーリー」ではなく、「登場人物のキャラクター」をまずは考えてみると書きやすいですよ、というお話をしたかと思います。
ストーリーというのは、ああなってこうなってという「筋」のことで、もう既に「パターン」があります。
シナリオ・センター創設者の新井一は、ストーリーは「23パターン」だと言っています。例えば映画『七人の侍』と『ミッション:インポッシブル』は『桃太郎』型。仲間ともに敵を倒していく勧善懲悪もの。
こんなふうに、もうストーリーは決まっているので、ストーリーから考えようとすると、どこかで聞いたような話になっちゃうんですよ。で、書くのが嫌になっちゃったり、そこからどうにか新しいものを考えようとするんだけど途中で筆が止まっちゃったりね。
そうならないために、まず着手するのが「キャラクター(性格)」を考えることですよとお伝えしたわけですが、今回は、その考え方を就職活動の自己PRのときにも使えるようなお話をしようと思います。
今日参加してくれた皆さんは2年生が多いみたいですが、もうそろそろ就職活動をするのかな?
〇Aさん:就活を意識しています。
〇Bさん:そろそろ準備を始めようかと。
〇新井:お!じゃあちょうどいいですね。配布したプリントのイラストに注目してください。
〇新井:11歳の健太くんです。学芸会で「木」の役になったのですが、ちょっと不満気。そんな健太くんと会話をしてください。プリントには
①健太「立っているだけ。出たくないよ」
アナタ「 」
②健太「どうせパパとママしか見てくれないし」
アナタ「 」
――のように、健太くんのセリフと、それに答える“アナタ”のセリフがそれぞれ5つずつ書いてあります。
〇新井:1つの質問につき40秒でリアクションしてください。
アナタの「カッコ」のところにセリフを書いてくださいね。
――「え?40秒?」と驚く皆さん。
〇新井:はい、いきますよ。スタート。
――1問につき40秒。40秒ごとにタイマーを鳴らす新井。
皆さん、ドキドキしながらもすべての問いに無事回答。
〇新井:次に、自分のセリフを書いたその後に、健太の「なんで?」というセリフを各5ヶ所に加筆してください。
で、その「なんで?」にまた、1問につき40秒でリアクションしてください。
――プリントは、
①健太「立っているだけ。出たくないよ」
アナタ「 」
健太「なんで?」
アナタ「 」
②健太「どうせパパとママしか見てくれないし」
アナタ「 」
健太「なんで?」
アナタ「 」
――といった感じになります。
――皆さん、既に慣れてきたのか、今度は落ち着いてすべての問いに無事回答。
〇新井:では、皆さんが書いてくれたセリフに注目。その中で繰り返し出てきたワードとか言い回しがあると思うんですよ。口ぐせみたいなね。それをマーカーで印をつけてください。
〇新井:はい、おつかれさまでした。
それでは、隣の人と見せ合ってみてください。
〇新井:どうでした?同じ質問に答えているのに、全然違ったでしょ?
――皆さん、うんうんと強く頷いています。
〇新井:40秒という短い時間で書いてもらったというのがポイントなんです。考える時間が短いので、普段から考えていることがセリフに表れるんですよ。つまり、書いてもらったセリフには皆さんそれぞれの「キャラクター(性格)」が出ているというわけです。しかも、11歳の子に伝わるように書いているので、より分かりやすくダイレクトに皆さんのキャラが表れます。
では今度は、先ほどの健太くんとのやりとりを踏まえて、自分はどんな性格なのかを一言にしてみましょう!
〇新井:ポイントは「私は〇〇すぎる性格です」とデフォルメしてみること。
そして、ここに書いてある「憧れ性:△△△できる」「共通性:◇◇◇しがち」という言葉に注目。
憧れ性というのは、周りの人から「いいなあ」と思ってもらえるようなところ。
共通性というのは、周りの人から「ああ分かる、自分と同じだなあ」と思ってもらえるようなところ。
例えば、
私は真面目すぎる性格。
だから、事前の準備を徹底する(憧れ性)。
でも、イレギュラーに弱くテンパりがち(共通性)。
こんな感じです。
あ、いま、憧れ性は長所のことで、共通性は短所のことじゃん、って思いました?
シナリオ・センターでは長所(いいところ)・短所(ダメなところ)というふうには言わないんです。というのは、「いい」とか「悪い」とかじゃなくてね、観客が感情移入する魅力的な人物を作るためにはどちらも大切なんです。この2つは表裏一体。
就活をしていくと「あなたの長所は?」「短所は?」と聞かれる場面があって、ちょっと嫌な気持ちになることもあると思うんです。そんなときはね、「自分の憧れ性は何か」「共通性は何か」というふうに転換して考えてみてください。
で、自己PRするときに、仕事を通して自分の「憧れ性」を「どう生かすことができるのか」、「共通性」を「どう気をつけていくか」と考えていけばいいんじゃないかと思います。
では、キャラクター作成シートを書いてみましょう。書けたらさっきのペアになって、見せ合いっこしてください。
――すると、ひときわ盛り上がっているペアが。
〇新井:お互いのキャラクター、どうだった?
〇Cさん:“相方”を見つけました!キャラクターが正反対!
〇Dさん:さっき見せ合った健太くんのシナリオでも、「木」の役の捉え方が真逆で。
〇Cさん:私は「木」の役、いいじゃん!って答えているけど、
〇Dさん:私は、そっかぁ「木」の役なんだね……みたいな感じでリアクションしてて。
〇新井:お互い、無いものを持っているんだね。親友ができましたね(笑)。
――こんなふうに、今回ご紹介した方法は、親友を見つけるときにも役立つということが発覚しました!
自己PRは「ストーリー」ではなく
自分のキャラクターが出るエピソードを語る!
授業の前半では皆さんに、自分のキャラクターを「〇〇すぎる性格」「憧れ性:△△△できる」「共通性:◇◇◇しがち」として把握してもらいました。
後半ではこれらを、面接で自己PRを話すときや、エントリーシート・履歴書で自己PRを書くときに、“文章”としてどうやって組み立てていけばいいか、をご紹介。その方法として、シナリオの技術「構成(起承転結)」の考え方を使おう!というお話をしました。
――そして最後にこうエールを送りました。
〇新井:面接官はこれまで何万回と「私は御社の役に立ちます」という「ストーリー」を応募者から聞いているので、パターンを知り尽くしているわけです。
だからこそ、「ストーリー」ではなくて、皆さんの「キャラクター」が出るエピソードを話してください。「この人がうちの会社にいれば、こういうところで力を発揮してもらえるなあ」と想像してもらえるような文章を、シナリオの技術である「構成」を使って考えてみてくださいね。
――これにて授業終了となったのですが、皆さんからはこの後も自分のキャラクターにまつわるエピソードや、創作での困りごとなど、いろいろお話をしてくれて、皆さんが好奇心旺盛で勉強家だということがよく分かりました!「この調子で就活も頑張ってください!」と応援して帰社した新井でした。
就活の自己PRでお困りの方は、是非今回ご紹介した方法を。アナタの憧れ性と共通性で面接官を魅了しちゃってください!
新井一樹 著書情報
キャラクター設定、憧れ性、共通性、構成について「もっと知りたい!」ということでしたら、こちらの書籍をお読みください!
・2024年6月19日発売
▼『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』(KADOKAWA)
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「自己PRを考えるにあたって自分のキャラクターをもっと具体的に分析したい」というときは、『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』のP66・67(図参照)を是非ご覧ください。自分のことを客観的に見つめられる良い機会になるのではないかと思います!
※『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』関連記事も是非。
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※『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』関連記事も併せて是非。
▼面白い物語になっているかチェック!『シナリオ・センター式 物語のつくり方』