シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。なにより嬉しいのは、出身ライター方がご自分の作品を持ってきてくださったり、おしゃべりしにきてくれたときです。
創設者の新井は、出身ライターに対して、生徒だった人としてではなく脚本家として敬意を払い、礼を尽くしていました。
新井が常に講師に言い聞かせていたのは「育てたなんて、おこがましいことは思ってはいけない。シナリオのイロハを教えたからといって誰もがプロになれるわけではない。プロになったのはその人の努力、力だ。私たちは、それをより良い方法で手助けしているにすぎないのだ」と。
その教えは、講師にとってはモチベーションが上がらないことだったかもしれません。人は誰でも、私が育てた、私が役に立った・・・と思えるからこそ、やる気、生き甲斐につながるわけですから。
でも、私は、新井の教えこそがシナリオ・センターを育ててきたと思っています。
経験があると思いますが、親にこんなにしてあげたのにとか、大事に育てたのにとかいわれるのはいやではありませんでしたか。
「シナリオ・センターは、私の故郷だ」とおっしゃってくださる出身ライターの方々がたくさんいらっしゃいます。
時に、戻ってきたい場所でありたい、一人で戦う脚本家の心癒せる場所になれれば嬉しいと思っています。
出身ライターの大山淳子さんが、新刊本を持っておいでくださいました。
大人気シリーズ23万部突破という「猫弁シリーズ」第4弾「猫弁と少女探偵」ができたからです。
お忙しいにもかかわらず「送るより、持っていきたい」とおっしゃってくださって、柏田や気のおけない元のクラスのお仲間も含めて、談笑のひとときを持つことができました。
小さく細いお体のどこにそんなエネルギーが潜んでいるのかと思うほど次から次へと書かれています。
「猫弁」ともうひとつ、「2008年函館港イルミナシオン映画祭」で大賞をとった「通夜女」を小説化して、「小説すばる」に掲載されたのでそちらもお持ちくださいました。
オリジナルが通らない昨今、シナリオを小説化するのもありかなと思っています。
「のぼうの城」も城戸賞をとっても映画化されなかったのですが、小説が売れたら映画になりましたからね。
「通夜女」は、とてもユニークな発想のお話なので、是非こちらもと思います。
「猫弁」は4作目ですが、面白さはどんどんエスカレートしていっています。主人公の猫弁こと百瀬太郎のキャラクターだからこその事件解決方法は、ちょっと真似できない面白さです。癒し系ミステリーといわれているようですが、本当に心が温まります。猫弁のキャラの温かさが、お話全体をハートフルに、ちょっと切なく優しい気持ちで読ませてくれます。ドラマを観ているみたいな感じで、これほど気持ちのよい読後感はなかなかない気がします。
今回は、猫弁と10歳の女の子とが猫の誘拐事件と絡みます。この本単独でも楽しく読めるのですが、猫弁の肝であるお母さんの謎がチラチラと垣間見えて、1弾から読んだ方が数倍も面白く感じるかもしれません。謎の弟まがいもでてきて、第5弾が早く読みたい。
小説で売れっ子になられた大山淳子さんですが、やはりシナリオが書きたいとおっしゃっていて、私としてはやっぱり嬉しい。「猫弁」も2作放映していますが、この続きも、また新たなオリジナルも書いて欲しいものです。