シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。昨日は、創作テレビドラマ・創作ラジオドラマ大賞の授賞式でした。
と、昨日書きましたとおりですが、その会場で、シナリオ作家協会の現会長の加藤正人さんと、前会長の柏原寛司さんにお会いしました。
パーティ会場というものは、何気によるべないもので、一通り存じ上げている方々や受賞者の皆様にご挨拶が済んでしまうと、どこにいればいいのか、どうしていたらいいのか・・・とウロウロしてしまいます。
シナリオ教室編集長の前田も同席していたのですが、なにしろ、7人の受賞者のうち5人がセンターの方ですから彼女は取材が忙しく、・・・私は「おめでとう」のご挨拶をすませてしまったら、ひとりニコニコしている以外やることがありません。
そんなとき、心強い方がそばに、おふたりがいらしたんですね。(笑)
お二人とも出身ライターとしても、シナリオ作家協会のエライサンとしても長いお付き合いをさせていただいているので、ホッです。
柏原寛司さんが、私に1枚の映画のチラシを下さいました。
小林「書いたの?」
柏原「ううん、出てるの。」
小林「はあ?」
間抜けな会話の末、よくよくチラシを拝見すると、出演者の欄に、なんとなんと角替和枝さんの上に、「柏原寛司」というお名前が燦然と輝いているではありませんか。
「なにもこわいことはない」 11月16日よりレイトショウ公開渋谷ユーロスペース、12月14日より新宿K‘s cinemaにて公開です。
早速、チケットをいただきました。
「なにもこわいことはない」の題名は宮沢賢治「光の素足」からの引用です。
「その大きな瞳は、青い蓮のはなびらのように、りんとみんなをみました。
みんなはどういうわけともなく、一度に手を合わせました。
『こわいことはない。おまえたちの罪は、この世界を包む大きな徳の力にくらべれば、太陽の光とあざみの棘のさきの小さな露のようなもんだ。なんにもこわいことはない。』いつの間にかみんなは、その人のまわりに環になって集って居りました。」
夫婦二人の日常生活を淡々と描きながら、夫婦でいることの意味を問います。
柏原寛司さんは、主人公のお父さん役。結構、セリフもあるんだそうですよ。(笑)
私も連れあいと40年ともに日々を過ごしてきました。
二人だけで居たのは3年ちょっと。子供が産まれ、両親と同居し、二人目が生まれ、義父が亡くなり、父が、そして母が亡くなり、その間いくつか病気や怪我、いじめや不登校・・・と紆余曲折はありながらも、淡々と流れるように過ごしてきました。
夫婦生活も家庭生活も、何気なく日常をやり過ごしているのだけれど、ちょっと誤まれば、ギリギリのところで綱渡りしている・・・人と一緒に生きていくということはそういうことだと思います。
だから、人は「どうやって一緒に生きていけるのか」と常に問うのでしょうね。
柏原さんが、シナリオ誌の12月号で、出演を依頼されて
「一応、脚本読ませてって言って。脚本を読めばさ、断る理由がなにかしら見つかると思ったから。そうしたらいい脚本だったんでさ。これだとあんまり断る理由がなくなってしまって、しようがないから出た。」とおっしゃっています。
何気ない日常を淡々と描く、起承転結を気持ちでうまく描いた脚本の面白さを、「どうやって人は一緒に生きていけるのか」を、柏原さんの演技と共に感じてきてください。