シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。出身小説家の原田ひ香さんから、著書をお送りいただきました。
あっという間に読んでしまいました。
原田さんらしい構成の上手さに惹かれて、読み続けてしまったのです。
純文学の小説家が描いた、ものすごい純文エンタテイメント小説です(こんなジャンルは原田さんだけ、すごい!)。
ぐんぐん読まされてしまいました。
ミステリーを読んでいる感覚なのですが、巧みな構成で、思わず立ち止まり自分の生き方を考えさせられてしまいます。
そして、原田さんらしいタッチが、お話に深みを与えています。
「彼女の家計簿」(光文社刊)
世代を超えた女性たちの物語です。
母親にも拒絶されながらシングルマザーとして子供を育てる里里と、母親に棄てられて頑なに家族を否定しながら生きる里里の母朋子。
女性自立推進のNPO法人代表の晴美、自分自身を否定しながら生きている三者三様の女性が、男と駆け落ちして心中をしたといわれている里里の祖母加寿の遺した家計簿から、生き方を模索し、新たな生き方を模索して、自己否定から解放たれていく過程を描いています。
戦中戦後、そして現在を行き来しながら描かれた「彼女の家計簿」は、女性よりも男性に読んでもらいたいと、私は思います。
何故なら、女性がどう生きたいか、女性の仕事観が描かれているからです。
女性の社会進出を大声で叫びながらも、まったく女性の本質をわかっていない安倍総理には特に読んでもらいたいかも。(笑)
男社会の中で、女性がどんな思いで生きているのか、そうとは見せずに、でも、今だからこそ、原田さんは、描きたかったのではないかと勝手に想像しています。
原田ひ香さんは、「はじまらないティータイム」でスバル文学賞を受賞され、「東京ロンダリング」、「人生オークション」、初のエンタテイメント小説「母親ウエスタン」など、独特な切り口で女性の生き方を描いていらっしゃいます。
私は、原田さんの切り口が大好きで、これこそが原田さんのお持ちの「世界観」「作家の目」か生まれたものだと思います。
自分の切り口を持つこと、作家性を持つというのは、並大抵なことではありませんが、プロであれば、自分だからの視点、自分だけの切り口を持たなければ、勝負できないのだと思います。
原田ひ香さん「彼女の家計簿」、超お勧めです。