シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。寒くても、嬉しいお知らせやイベントがあると、鼻先にニンジンをぶら下げられた馬のように走ってしまう私です。
昨夜は、個人的趣味も兼ねつつ、戯曲講座担当の金子とふたりで神保町の東京堂書店での「野田秀樹VS古川日出男トークショウ」に行ってきました。兼ねるというよりは、まさに個人的趣味ですが・・・(笑)
野田秀樹さんは、学生のころから大好きで最近の「MIWA」までほとんど拝見しています。
古川日出男さんは、正直、よくわからない戯曲(註「冬眠する熊に添い寝してごらん」)を書かれたなあと・・・(笑)
でも、とっておきの決め台詞「百年の想像力を持たない人間は、二十年と生きられない」・・・今を語るすばらしいセリフだと思いました。安倍さんに贈りたい。(汗)
小説家が描かれた戯曲を拝見しつつ、どんな方だろうと興味深々でした。面白かったです。
面白かったのは、舞台の特性を観客の方々も交えての話で確認しあったこと。
「冬眠する熊に添い寝してごらん」の舞台に回転寿司のセットが出てくるんですが、野田さんが「私の席からでは何をしているのかわからなかった、演出として生きていなかった」とおっしゃったら、「私の席は正面の後ろだったけど、俯瞰でみえてよくわかった」とか「字幕が見えなかった」とか3人の観客の方がそれぞれの席から論を展開。
映像と違って、どの席に座っていても同じものが見えるわけではないのが芝居の世界。
図らずもそこを如実に語り合えたわけで、はじっこでも下手と上手、正面、後、前に、2階席に3階席・・・見え方が違いますものね。
野田さんが、役者について、「空間を確保する力が必要」と言っていましたが、このことに通じるのですね。
舞台では、役者がどこにいるべきか自分の立ち位置のなかで、自分の空間をつくらないと、正面芝居しか見えなくなってしまう。
アンサンブルでも、ただその他大勢ではなく、空間を確保できる役者が芝居ができるっていうんでしょうね。
私が芝居が好きなのは、主役が人気者だけどヘタクソだったりしても、うまい脇役の芝居で快感を得ることができたりするからです。
映像は、「ここをみるのよ」と絞って(アップ)見せられますが、演劇は、どこを見られるかわからないし、見られないかもしれない・・怖さがあります。
そんな特性を生かすことも考えなくてはいけないのだと思いました。
もちろんほとんどが、演出の世界でもあるのですが、わかって書くのとわからないで書くのでは違いますものね。
創作の仕方ですが、おふたりとも手で書かかれ、最終的にご自分でパソコンを打たれるのだとか。
手で書く方が創造力が働くそうです。
脳学者さんにも手で書くことの大切さを説いていらっしゃる方もいて、私も、常々そう思っているので、お二人の創作のやり方をお聞きしてうれしくなりました。
「目で読んだ時と声を出して読んだ時では違う」この言葉は、演劇のみならず映像でもシナリオの特性ですね。心したいものです。
古川さんは、最終原稿を書くとき、おなかがギリギリと痛くなって大変なんだそうですが、色々なお話を伺いながら、やっぱり創作って、楽しんだなあと思いました。
苦しみながら楽しんで書きましょう。(笑)