シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。怪しい天気だけれど、ちょっと暖かな東京、春は一歩ずつ進んでいると思いたい。
橋部敦子さんが描かれている「僕のいた時間」が大好きで、毎週欠かさず拝見しています。
ALS(筋委縮性側索硬化症)の主人公のドラマですが、人間の生きる意味を問うすばらしいドラマだと思います。
小道具の使い方、シャレードの使い方、セリフ、勉強になります。
私は、2年前、山陰放送制作の「生きることを選んで」というALSのドキュメンタリーを拝見しました。
このドキュメンタリーは、山陰放送の記者の方がALSになられ、同僚だったディレクター佐藤泰正さんが、彼の生きざまを追ったものでした。
ALSは、時間が経つにつれ進行する病気です。呼吸する筋肉も衰えるため、生きるためには人工呼吸器をつけなくてはなりません。
ですが、今週のドラマで主人公の拓人君が悩んだように、人工呼吸器をつけると話すことができなくなり、まったく動けなくなった時への大きな不安が生まれます。
将来の不安、家族への負担、治療費などを考えて断念する方も多いようです。
ドキュメンタリー「生きることを選んで」は悩まれた末、呼吸器をつけることを選ばれた記者の方と、つけない選択をされたALSのお仲間とのふれあいも描かれ、つらいお話だったのですが、「人間とはなんだ」「生きるとはなんだ」と深く考えさせられたドキュメンタリーでした。
「僕のいた時間」来週の最終回は、人間を描くことのうまい橋部さんがどのようになさるのかと・・・。
このドラマの中で、主人公の弟陸人君は、発達障害のなのですね。
他人に対するイマジネーションがなく、他人とのかかわり合いやコミュニケーションが苦手なのですが、頭はいい。
今週の陸人君は、アルバイトに初めて行くのですが、他人とどう接していいか不安でたまりません。
そして、お兄さんの経験、意見を取り入れて、陸人君は「自分はコミュニケーションが苦手で、不愉快させることも多い」と仕事仲間の前で自己紹介し、自分の取り扱い説明書を渡します。うまい!
就学時期が近いせいか、発達障害のお悩みのお話をよくお聞きします。
シナリオ・センターでも学んでくださっている方もいらっしゃいます。
小学校でシナリオをお教えさせていただいていると、一クラスにおひとりは発達障害のお子さんがいらっしゃるようです。
自閉症とか学習障害という言葉からの印象でしょうか、行動自体が人と違ってみえるせいでしょうか、精神障害と思っている方も少なくありませんが、脳の病気です。
人間の行動は、脳が指令を出しているわけですが、指令を出せない部分が一部あると考えるとわかりやすいように思います。
学校とか社会いう枠の中では、とてもつらいだろうなと思いますが、私が接したお子さんたちは、みんな作文は苦手なのに、シナリオはうまいです。
好きに書いていいよ、なんでもOK、正解はないよと枠がないので、楽しく書いてくれるようです。
シナリオが、発達障害の方々に楽しんでもらえるツールとして利用していただけたらいいなあと思います。
人それぞれみんな違うのですから、金子みすずさんの詩ではありませんが、「みんな違って、みんないい」と思い合える社会であってほしいと思います。