シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。昨日は、お芝居を見に行きました。
三谷幸喜さんの「酒と涙とジキルとハイド」です。
歌舞伎俳優の、いまや「半沢直樹」ですっかりおなじみになった片岡愛之助さん、タレントとして幅広く活躍している優香さん、吉本新喜劇のお笑いタレント藤井隆さん、お芝居で活躍している迫田孝也さんの4人のお芝居です。
優香さんは初舞台とかですが、うまい。びっくりしました。
志村けんさんとよくコントをなさっているせいでしょうか、間の取り方がいいんですね。私の大好きな戸田恵子さんを髣髴させてくれました。
藤井隆さんは、「三谷版 櫻の園」の好演についでの出演で、さすがに見せる、見せる・・・笑いのツボをしっかりと押さえていました。
迫田孝也さんは、お芝居では定評があるですがマス的には、ほかのお三方にくらべると影が薄いのですが(失礼)、舞台上では、迫田さんなしでは、この芝居は回らなかっただろうと思わせるほど。
ギンギンに熱演というのではなく、役柄的にも淡々とした役ですが、淡々とでありながら存在感、すべての人の面白さを引っ張り出していくテクニックはすごいと思いました。
片岡愛之助さんは、歌舞伎役者をみじんも感じさせないコメディアンそのものぶり。さすが踊りの家元は動く姿もきれいで、声も魅力的。
「半沢直樹」の黒崎といい、喜劇的要素をお持ちの方なのだと、好演ぶりに拍手を送ってしまいました。
「酒と涙とジキルとハイド」は、三谷さんいわく現時点での「最高の笑い」「ただ面白いだけの何も残らない笑い」がうたい文句の抱腹絶倒の喜劇です。
さすがに三谷さんですから、それぞれの役者さんにあてて、うまい脚本(戯曲)なんですね。
ジキル博士が発明した二面性がでる薬が明日発表なのに、実験は失敗。(小保方さんギャグが出てきます)そこで舞台役者をつかって、嘘の発表をしようとしている前日。そこに、おしとやかな婚約者が絡んで・・・。
とても面白いのですが、私は、申し訳ないのですが、三谷さんが目指された「ただ面白いだけの、何も残らない喜劇」とは感じませんでした。
「人は誰でも二面性を持っている」「人は自分を解放してみたい欲望がある愛すべきものだ」って感じさせられちゃったんです。ごめんなさい。(笑)
三谷さんの目指しているのは「喜劇駅前シリーズ」だと前におっしゃっていました。
ご存知の方は納得されると思うのですが、まさに三谷さんの目指されている全面なにもないただただ面白いだけの、タイトルすらハチャメチャな喜劇、ホント、ただ面白いだけの何も残らない喜劇でした。
センターの創設者新井一が書いた映画ですが、喜劇の神髄って、笑って笑ってなにも残らないことだとしたら、一番難しいかもしれません。
新井一は喜劇の名人と言われていましたが、駅前シリーズは、当時の喜劇人オールスターキャストなので、役者さんのしどころ、見せ場を作っていくだけだと言っていました。
三谷さんの喜劇は、知性が見えてしまった気がします。
三谷さんのお芝居は観せていただくたびに感心させられているのですが、それでもなお、喜劇というものの難しさ、何も残らない面白さほど難しいものはないのだと感じてしまいました。