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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

原作の世界観の中で泳ぐ

シナリオ・センター代表の小林です。昨日のミソ帳倶楽部は、出身ライターの森下佳子さんでした。いや、さすがだなと思いました。森下さんの脚本のうまさの秘密を垣間見た気がしました。

 森下佳子さん

森下さんは「平成夫婦茶碗」(NTV)でデビュー後、朝ドラ「ごちそうさん」(NHK)、「JIN-仁」(TBS)、「百夜行」(TBS)等など大ヒットを次々と出されていらっしゃいます。
現在放映中の「天皇の料理番」のお話にからめながら、ドラマ作りのコツをお話してくださいました。

私は、森下さんのドラマを拝見するたびにすごいなと思うのは、原作以上の世界を作られることです。
「世界の中心で愛を叫ぶ」(TBS)を拝見した時に、大ヒットした原作も映画も、若い人には共感を得た作品だとは思うのですが、私の年代には?のお話でした。(笑)
テレビでは色々な年代が見られるわけですから、どうなのかなあ・・・と思っていたら、しっかりと私たちにも共感を呼ぶように作られている、原作の世界観を大事にしながら、大人もなるほどねと思わせるように作られているのです。

「とんび」の時もそうでした。放映の1年前位にNHKで放映してモンテカルロテレビ祭最優秀作品賞を獲られたのです。すごくよくできていたドラマでした。
その作品をわずか1年後にまた作るというのはどういうものなのかと思いました。誰が企画したのだと・・・断ればいいのにと心配しました。(笑)
ところがです。重松清さんの原作ですから、NHKと全く違ってしまうわけはないのですが、見せ方が違う、視点のずらし方・・・すごいと思いました。
JIN-仁」がヒットするのも「ごちそうさん」がヒットするのも当たり前だと思います。本当にすごい実力の持ち主だと思います。
 

今回「天皇の料理番」のお話をお聴きして、むべなるかなと納得しました。こちらも3回目のドラマ化ですが。
この作品の主人公は実在の人物です。本当は、料理にしか向きあっていない癇癪持ちの自分勝手な方なのようです。(笑)
ですが、それでは視聴者に共感を呼ばない。
でも、奥さんが「あなたの癇癪持ちだけは注意してね」と言い残して亡くなるので、癇癪持ちは出さなければいけない。そこで、自分しかみえない、何もできなかった男だけれど、夢を見つけて走っていくすごいエネルギーを持っている魅力を描かれることで共感を呼ぶようにされたのです。 

このお話自体は、簡単に言えばサクセスストーリーです。それでは共感もできないし、誰も感情移入しません。
森下さんは、魅力的なシーンを一つ作って、このシーンに向って走るのだそうです。
そう、おわかりですね。ストーリーを創るのではなく、シーン、ディテールを、映像を描くということです。だから、感情移入ができるのです。お話の説明ではないからです。

森下さんは習った以上のものは使っていない、「ドラマとは変化である」という新井先生の教えを守っているだけとおっしゃっていました。

最後に、「脚本家は不足しています。欲しがっています。危なげなく基本ができている人が求められています。頑張ってください。」とエールをくださいました。


 「ことばのちから」を森下佳子さんにも書いていただきました。
「死なない限りはかすり傷 心の傷は飯のたね 良い仕事です」
脚本家の神髄です。 

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