シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。45周年&新井一生誕百年のラストスパート「新井一賞授賞式」と来年の予定と重なって、そろそろゆとりがもてるはずなのに一向に忙しさは収まりません。私の頭の動きが遅くなっているせいなのか、本当に忙しいのかわからないところがユーウツです。(笑)
オール読物を読んでいたら、「人間パワースポット 鈴木光司の新人賞講座」というコーナーで小説家志望の方へ向けたデビュー教室を展開されていました。
その中で、ご自分の経験の中で一番役に立ったことはなにかという問いに、シナリオ・センターで小説を朗読したことだとおっしゃっていました。
「他人の目を経ない小説は、独りよがりになることが多いということ。 小説を書いても、活字にならないと、人の目にふれたり、他人に評価してもらえる機会というのは、なかなかないと思いますが、シナリオ・センターでは毎回自分の小説を朗読させられました。 この時の仲間の前で朗読するという経験が、僕には大きな財産になりました。
実は、作家になれる確信を得たのもこの場でした。リングも朗読しましたよ。(中略)当時朗読したときのことは、今でも伝説になっていますが、他の生徒は朗読を静かに聞き入って、まるで夢中になって紙芝居を見ている子供みたいでした。
でも、作品全部を一日では読めないから、毎週少しずつ読んでいく。
すると終わった後、“この続きはどうなるの?”“翌週来るのが待ち遠しい”という雰囲気になった。
その反応を見て、“自分は作家で食っていける”“作家の道を目指していい”というゴーサインをもらえたと思いました。」
そうなんですね。シナリオ・センター鈴木光司伝説は本当で、あの頃のクラスメートは休まず聴くために出席していました。 鈴木さんは、おりにふれセンターで学ばれたことを書いてくださったり、お話して下さったりします。 ありがたいことです。
鈴木光司さんが一番役にたったことのなかで、ゼミを上げられました。
ゼミは、仲間に自分の習作を聴いてもらい、感想を言ってもらうところです。
鈴木さんのようにみんなに喜ばれる作品を書かれる方は、なかなかいらっしゃいません。でも、鈴木さんだって、そこまできた50本の20枚シナリオでは、色々な散々ことを言われたりしています。
むしろ、槍玉にあがったり、にべもない感想を言われる方が多いかと思います。
岡田惠和さんは、褒められたことがほとんどなかったけれど、その時に言われたことに鍛えられている気がするとおっしゃっていました。
中には書いたものに何か言われるのが嫌だからみせない、読まないという方も。岡田さんはその壁を乗り越えることがプロの道への第一歩だとエールを贈っています。
他人はすべて違うのですから、100%もろ手を挙げて素晴らしいといわれることなどありはしません。なんの感想をもなくよかったですねと言われるより、ここは、どうなんですかとかよくわからなかったけれど・・・と言ってくれる仲間の声が大事です。
唯一無二の私の作品を、どうやってまったく違う人に受け入れさせるのか、ここが物書きとしての手腕です。ゼミを上手に使ってステップアップしてください。
ステップアップといえば、小説家志望の方は絶対聴講しましょう。
12月23日「新井一賞授賞式」のスペシャルゲストは、浅田次郎さんですから。