代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記
シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
超高速!脚本家
12月2日、シナリオ・センター代表の小林です。寒さがひとしおになりました。
もう12月です。今年も1ヵ月を切りました。
昨日は、映画の日、城戸賞の授賞式でした。
今年は残念ながら入選作がありませんでしたが、本科の青塚美穂さんが佳作を受賞されました。おめでとうございます。
2011年の城戸賞を獲って、大ブレークした方を皆さんご存知ですね。
そうです。作家集団の土橋章宏さん。
城戸賞入選作品「超高速!参勤交代」が小説になり、映画化され、大ヒットになり、デビュー作で2014年日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞されたという幸運な1年でした。
45周年記念パーティーでも、ライターズバンクを代表してお話をしていただきました。
でも、運だけではこうは運ばない。土橋さんはすごーい実力の持ち主。
発想力はめちゃくちゃ面白いし、早書きだし、あらゆることにアンテナびんびんのまさに物書きになるために生まれてきたのではないかと思うくらいの努力家であり、実力の持ち主です。
その上、すごいのは、いまだに2つの作家集団に所属されていて、お忙しい中でも、作品を持ってゼミに出られます。
土橋さんは、ゼミで客観的な意見を聴くことが大切だからとおっしゃっています。ヒットの秘密はここにあるのかもしれません。
そんな勉強家の土橋さんだからこそでしょうか、時代劇がお得意なのかと思えば、なんと21歳の女優志願のギャルが祖母の介護をするお話を書きました。
小説「天国の一歩前」(幻冬舎刊)
本当に土橋さんはすごいと思うのは、介護制度を熟知して書かれているんですね。私も間近なことでもあり(涙)、どんどん引き込まれていきました。
主人公の女優志願21歳の未来を訪ねてきたときに、脳梗塞を起し、半身まひになってしまった祖母。
未来は慌てるが、女手一人で未来の父を育ててきた祖母なのに、両親ともまったく面倒を見る気もなく、母親にいたっては、祖母の貯金にまで手を付けてしまう。
女優志願の未来は、長年の確執のある口の悪い祖母を邪魔と思いながら、祖母への介護を始めざるをえなくなるが、介護施設も特養も待ちばかりで入れず、困った未来は究極の選択をします。それは・・・。
現実の介護状況の本質を突いた痛いお話です。
主人公を取り巻く環境、人々にもちろん腹が立つのですが、それ以上に腹が立つのは、偉そうに一億総活躍とかいっている国の無策状態。
主人公の未来も介護しようとすれば食べていけない、仕事も夢も失う。介護施設に入れたとしてもお金が続かない。
家でも施設でもどこでも満足な介護など全くできない、いい加減な介護ですら無理。介護の必要な年寄りは、うば捨て山に捨てるしかありません。
いかにお上に想像力がないのか、よくわかります。
未来が最後に選択したことは、国の無策こそが招いたことだと思うのです。
土橋さんのこの小説は、とても深いです。
小説も時代小説から介護、伝記ものなど多彩なジャンルを書かれる土橋さんですが、来春は、第2弾「超高速!参勤交代リタ―ンズ」が上映されます。
来年も土橋フィーバーになることでしょう。こちらもお楽しみに!