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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

見せ方の違い 蜷川さんの悲報

シナリオ・センター代表の小林です。蜷川幸雄さんが亡くなられました。まだまだご活躍していただきたい方でした。日本人にシェークスピアを楽しませてくれたのは蜷川さんでした。シェークスピアもがっかりしていることでしょう。
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G・Wに、ミラノスカラ座で、プッチーニの「西部の娘」を観劇しました。 あまり上演されない作品ですし、初日ということで、観客の期待は否が応でも高まっていました。

私は、観たことがない作品ですので事前にDVDを借りて、予習をしていきました。なにせ、イタリア語は全く分からないですから、日本と違って字幕も出ませんし、何やっているのかわからないまま、雰囲気だけ楽しむのではあまりにも悲しいですからね。(笑)
DVDを見たところ、まさに西部劇で、簡単に言えば、酒場の女性ミニーとギャング団のボスと保安官の三角関係ラブストーリー。(あまりにも簡単ですが・・・(笑))第一幕は酒場、第二幕はミニーの家、第三幕はカリフォルニアの大森林です。舞台装置も、よく知っている西部劇の通りでした。

ところがです。
壮麗な歴史ある建物であるミラノスカラ座の舞台に突然映し出されたのは、モノクロのヘンリーフォンダの西部劇の映像。
マカロニウエスタンなのか名作「荒野の決闘」なのか何の映画かはわかりませんが、なにしろ、ヘンリーフォンダの顔がどーんと出てきて、なんだろうなあと思うと、後ろ向きに座っていた男性たちがおもむろに歌いだす・・・という始まりでした。
え~、酒場のシーン?と思いながらみていると、そうらしい。(笑)あ、DVDで聴いた歌です、そうだそうだ、酒場だ酒場だ・・・と。 素晴らしいバリトン(主役のソプラノとテノールは、残念ながら左耳突発性難聴の私には高音が聞き取りにくく、バリトンが一番気持ちがいいのです。すみません。)を楽しませていただきました。
そして、ラスト三幕目、急に現代の洋服で主役の二人で出てきて、舞台が変わると映画館。
ようは、「西部の娘」という映画を見ていましたという想定の演出だったのです。

私は、ミラノスカラ座という舞台ではもっとオーソドックスにやるものかと思っていたのでびっくりでしたが、面白く楽しめました。
ブーイングとブラボーが交差しているのも、これまた面白かったです。
演出の切り口で同じストーリーがかくも変わるのかと驚愕したひとときでした。

10数年前でしょうか。野田秀樹作「パンドラの鐘」を蜷川さんと野田秀樹さんが同時期に演出し合うという画期的な企画がありました。どちらの舞台も観させていただいて、こんなにも違うのかとショックを受けたことがあります。

ものを創るということは、それぞれの感性が活かされる、同じストーリーでも切り口ひとつで全く違うものにかわる・・・これこそが創作の醍醐味。
観客が魅せられるのは、ストーリーではなく、見せ方、そのシーンシーンの魅力なのですね。心したいものです。 

蜷川幸雄さんのご冥福をお祈ります。合掌。

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