シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。久々に話題沸騰のイチロー選手。この3試合で10安打という活躍ぶり。もはやレギュラーとして活躍されていず、とてもさみしかったのですが、やっぱりイチロー選手は、イチロー選手です。メジャー通算3000本安打にあと40本、ピートローズの記録にあと18本とか。すごいですよね。
でも、でも、それ以上に素晴らしいのは40歳過ぎても、メジャーで長く活躍できる力。
これこそが一番大事な力、イチロー選手ならではと私は思うのです。
脚本家だって同じですよね。
昨日は、小説家のお2人が相次いでおいでくださって、すてきなご本を持ってきてくださいました。
おひとりは、森美樹さん、「幸せなハダカ」(新潮社刊)。もうおひとりは、大山淳子さん、「牛姫の嫁入り」(角川書店刊)をお持ちになって。
お二人の著作を随時ご紹介させていただきますが、ご紹介するには読まないとできないので、しばしお時間をいただいてご紹介させていただきたいと思います。
先に、大山淳子さんの「牛姫の嫁入り」をご紹介させていただきます。というのも、このお話し、長い年月寝ていた作品だからなんです。
この「牛姫の嫁入り」は、シナリオでした。「三日月夜話」というのが原題です。
もしかしたら、気がついてくださった方もいらっしゃるかもしれませんね。
そう、第32回城戸賞の大賞に輝いた作品なのです。
まあ、抜群に面白い、エンタテイメントに徹したコメディ時代劇です。
見事栄冠を得たときに、これは絶対に映画化すべきだと!!!、シナリオ・センター中思ったのですが、なぜか映画化になりませんでした。
「もったいない!」「もったいない!」と私たちは言い続け、大山さんに小説にすることをお勧めしました。あの「のぼうの城」も「超高速!参勤交代」も城戸賞を獲っても映画化されず、小説化されてから映画化されましたからね。
でも、小説化を考えたときは、大山さんご自身が「猫弁」でお忙しくなり、次から次へと小説を書かれて、「三日月夜話」を小説化するどころではなくなって・・・。
城戸賞から10年、やっと日の目をみました。
なんと、角川書店の編集者さんが、城戸賞の時から目をつけていらして、出版へと進んだのだそうです。ちゃんと見ている方はいらっしゃるのですね。
この作品は、大山淳子さんご自身も思い入れが深い作品だと思います。まずは20枚シナリオから生まれました。そして、作家集団で企画書にして、城戸賞に臨んだ作品でしたから。
小説は、エピソードも増え、登場人物の魅力も増え、シナリオ以上に面白いものになっています。
時代小説は初めてで大変だったそうですが、そんなことは微塵も感じさせない大山さんらしいテンポの良い楽しいエンタテイメント時代小説になっていました。
「のぼうの城」「超高速!参勤交代」に続き、「牛姫の嫁入り」映画になることを楽しみにしています。杏さんが主役のコウだとぴったりかも。
10年前、大山さんが城戸賞受賞時のインタビューでこうおっしゃっています。
「私、20枚シナリオが趣味みたいに大好きなんです。毎週課題を出していて休むと禁断症状が出てしまうほどで・・・。(笑)20枚っていうのは、ラストまで考えなくてもいいので楽しく書けますね。(略)例えば、『首がどんどん長くなる女の人の話を書こうかな』と思ったら、“不安”のシーンを20枚で書いてみるということをしています。書くと人物設定もできていって、色々頭の中も整理できますし、そのシーンを使わなくても、イメージを掴むにはよい方法だと思います。」
さすが、できる人は、基本がしっかりとできています。