映像は感情とつながり合う力があります。それこそ、説明抜きで。
映像の力を信頼すれば、シナリオがグッと魅力的になるのにと思うシナリオ・センターの新井です。
ドラマを観ていて、ゼミの仲間のシナリオを聞いて、そう思うことがありませんか？

例えば、遠距離恋愛をしているカップルの再会シーン。
待ち合わせの駅。彼を見つけて、目を潤ませて、嬉しそうにはにかむ彼女。笑顔で答える彼。

前のシーンとの関わりもありますが、まぁ久々の再会を喜んでいるラブラブなカップルだってことは大体わかるわけです。でも、なぜかここで、心の声。ナレーションっていうやつが入ったりします。
「久々に会った彼の顔を見て、ちょっとでも不安になっていた自分をバカだと思った」みたいな。

テレビドラマなんかだと、それ俳優さんの演技みてればわかるから！と突っ込みたくなります。シナリオの時点では、映像がない分、不安になってセリフにしちゃうのでしょう。

ですが、「シナリオは原稿用紙に書いているようで、スクリーンに書くのだ」と新井一が『シナリオの基礎技術』でも言っているように、映像で伝えることが重要です。安易にナレーションやセリフを使って心情を説明してしまうと、安っぽくなってしまいます。

それは、ＰＲ動画においても一緒です。
ANAの旅作『1 Ticket ～魔法のチケット～ こどもたちの予想外の反応は必見！』は、すごくいいＰＲ動画なだけに、最後の最後でもったいないなっと思います。
このＰＲ動画では、子どもたちに魔法のチケットが渡されます。でも、チケットは家族の人数よりも一枚少ない。さて、子どもたちはどうするか？と言うもので、子どもたちの反応は確かに必見ですし、感動的です。ほっこりします。ANAカードユーザーとしても、誇らしい！

だからこそ、もったいない。
かけがえのない家族での旅を、旅作がお手伝いしますといったテーマは、子どもたちの映像と「短くても、家族と行く旅は、特別。」という情緒セリフ的なコピーで十分伝わってきます。
残りの二行「家族で、オリジナルの旅をつくろう。」「思い立ったら予約して、さぁ行きたい場所へ。」は、旅作という商品を直接的にＰＲする説明セリフです。

こういう説明セリフ、入れたくなっちゃうんですよね。

ＰＲ動画っていうくらいだからコマーシャルなわけです。だから説明したくなっちゃう。でも、視聴者からすると「なんだ、結局コマーシャルか」と、感情が冷めます。なぜなら、商品を間接的に紹介している映像に、商品を直接的に紹介する説明セリフはミスマッチだからです。結婚式にＴシャツで参加するようなものです。YouTubeでの高評価が多い反面、低評価も多いのは、この辺に原因があるような気がします。

そういう意味では、同じシリーズの『3 presents 〜父に贈る3つのプレゼント〜』の方が、商品間接型として映像の力を信頼したＰＲ動画に仕上がっていると思います。

思わず説明したくなる気持ち、もちろんわかります。
でも、そこをグッと押えて映像の力を信じることができるかどうか、これがドラマのシナリオでもＰＲ動画のシナリオでも共通して求められることではないでしょうか。シナリオ・センターの新井でした。

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