シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。12月の声を聴いたら、東京はなぜか暖かいのです。
昨日の第2弾。 発表になりました。31回シナリオS1グランプリ
準グランプリ部門①「たいせつなもの」奥山睦子(作家集団)
準グランプリ部門②「妹の離婚、私の結婚」上田一志(通信作家集団)
佳作(部門①)「斜陽のペン」和田暁知(通信研修科)
奨励賞(部門①)「弟の姉」佐々木恭(一般)
奨励賞(部門①)「僕の人生クソゲーですか?」鈴木修一(研修科)
奨励賞(部門①)「ピカソの手帳」酒匂ひろみ(研修科)
おめでとうございます。
12月12日午後6時半から授賞式です。みんなでお祝いしましょう。
授賞式後公開講座もあります。
みなさんの大先輩ジェームス三木さんもコンクールからデビューしました。
先輩の脚本家としてそんなこんなの(笑)歩んできた道を書かれたジェームス三木さんの自叙伝が出ました。
「片道の人生」(新日本出版社刊)
いつものジェームス三木節がそのまま本になったという感じの、めちゃめちゃ面白い語り口ですが、「なるほど!」「こんな見方が・・・」とシナリオの勉強にも、歴史の勉強にも、社会勉強にも、人生の勉強にも、あらゆることに深い力を得る本です。
自叙伝というと、こんなにすごい人生を歩んで、私すごいでしょみたいになりがちなのですが、やっぱり三木さんは違う!全然違う!
この本を読まれて損したと思う方はまず、いないでしょ。
三木さんは満州から、子供の頃の引き揚げていらっしゃいました。子供心に、いや子供だったからこそ戦争の、軍人の、国の理不尽さをイヤ!っというほど肌身に感じていいらっしゃった。だからこその視点を今もお持ちなのだと思います。
役者をめざし、歌手になり、脚本家になったその経緯もとても面白いのですが、新井一との出会いは、シナリオ作家協会の教室。 そんな出会いにも触れています。
『森繁久彌の駅前シリーズを書いた新井一先生は著書に「シナリオの基礎技術」があるほど新人教育に熱心で、原稿用紙の書き方、綴じ方、表紙のつけ方まで懇切丁寧に指導してもらった。ドラマの根幹は、人物や人間関係の変化を描くものだと教わった。』
『絵画や彫刻が空間芸術なら、映画は音楽と同じく時間芸術なのだ。映像は秒刻みに変化していく。ならばその変化に、緩急強弱抑揚をつけえ、観客の整理や感情を誘導しなければならない。そう言えば、新井一先生もドラマは変化だといっていた。』
ジェームス三木さんは、『ドラマの多様性は無限大に思えるが、究極の劇的要素は二通りしかない。ひとつは敵と戦って勝つか負けるか、もうひとつは愛が実るかどうか』
『要するに人間社会の対立、葛藤、トラブルを描くのがドラマなのだ。国家対国家、企業対企業、宗教、民族、イデオロギーの対立、嫁姑、夫婦喧嘩、町内のいざこざ、こどもおいじめ、そうしたトラブルはなぜ起きたのか、どうやって解決したのか、あるいは解決できなかったのか。トラブルの根源は、すべて動物的本能に根ざしている』
昼ドラ「お登勢」から始まり、朝ドラ「澪つくし」大河ドラマ「独眼竜正宗」「八代将軍吉宗」など数々の大ヒットをとばしただけでなく「善人の条件」「翼をください」「「憲法はまだか」「真珠の首飾り」「安楽兵舎Ⅴ・S・O・P」など社会的なシナリオも戯曲もたくさん書かれています。歴史から教育、政治、社会などその博識ぶりはすごいものです。
この山のような引き出しをお持ちだからこそ、80過ぎられた今でも現役で活躍されているのですね。
最後に遺言まで書かれていらっしゃいます。
『改めて若い世代に遺言しておく。国家と国家が領土を奪い合う時代はとっくに終わっている。武力をもって国民の安全安心を守るというのは、時代錯誤も甚だしい。
キミたちは、[人類]の安全安心を目指してもらいたい。私の願いは、まずこの国が世界に向かって[永世中立]を宣言すること。さらに世界中の若者と相談して、人類社会を[ひとつの憲法][ひとつの通貨]で結ぶことである。」
いや!!というほど勉強になる本です。物書き必読の書。