「写彙(しゃい)」
シーンの面白さを決定ずけるのは、何と言っても、これから、
このドラマがどこで行なわれるかです。
あなたは、映画やテレビドラマに出てくる場所で、
どこが多いかご存じですか。
茶の間、アパートの一室、喫茶店、商店の店先、小公園などが
使われる頻度が多いのです。
茶の間で飯を食べながら、あれやこれや話をして、
ストーリーを進展させます。近所の人とのつきあいは商店の店先で、
ロマンチックな話は小公園のブランコに乗りながら…というわけです。
同じラブシーンでも、屋根の瓦につかまりながら、
ハレー彗星を話題にしてラブシーンをすれば月並な公園のブランコでするラブシーンとは
ひと味ちがったものができるでしょう。
なんトカ味噌ではありませんが、
ひと味ちがうのがプロとアマのちがいです。(中略)
それは私に言わせれば、写真の言葉が足りないのです。
これが足りないと表現が貧弱になります。
その反対に、言葉の数が多く、
沢山の言い回しができると「あの人は語彙が豊富だ」と言われます。
それと同じように、映画やテレビに使える画面を沢山知っていることで、表現が豊富になります。
それを私は強調するために新語を作りました。
<写彙>と言うのです。
新井 一
(「シナリオの技術」(ダヴィッド社)より抜粋)