脚本家になるにはコンクールで賞をとることが近道と言われていますよね。
では、脚本のコンクールで賞をとるには何が大切なのでしょうか。
そう聞かれると、「今までにないアイデア?斬新なストーリー?」と思いませんか?
わたくし齋藤もそう思ってました…。
でも違うのです。
大切なのは、キャラクターかもしれません。
というのは、ドラマ『僕のヤバイ妻』(関西テレビ)で、第5回市川森一賞を受賞した出身ライターの黒岩勉さんが授賞式でこんなコメントをされていたからです。
【「役者さんはこんなに抽斗があるのか!」と自分が書いたものの上を行く感覚をこれほど体験したドラマはないと思いました。第1話を見た後は、脚本を書いていて、「この人はこの場面ではこういうことを言うな」「こういう人だからこんなことするな」と、そのキャラクターが勝手に動き出していきました。キャラクターが勝手に動き出すことがあるという噂は聞いていましたが、「コレか!」と(笑)。
だから、途中からはキャラクターに引っ張ってもらいました。
物語のラストは大体決まっていましたが、そこまでのストーリーがどうなるかを考えるというよりかは、勝手にキャラクターが動いてくれた方が面白いなと。スポーツ中継を見ているような、そんなドラマになればいいなという想いで作りました】
キャラクターが勝手に動き出す。
それが、脚本が面白くなるポイントではないでしょうか。
キャラクターが動き出すとどんな評価を受けるのか
では、キャラクターをきちんと作って、キャラクターが動き出すとどんな評価を受けるのか。
『僕のヤバイ妻』を手掛けた制作陣の声をきいてみると…。
■ “ヤバイ妻”の真理亜役を演じた女優の木村佳乃さん:
黒岩さんの脚本は1時間の中での起承転結がとても面白くできていて「こうやって展開するんだ、凄いなぁ」と毎回感心して読んでおりました。また、真理亜は夫のことを愛しているというキャラクターの根底がしっかりとできているので、その他の部分のお芝居で“遊び”を入れることもできました。想像力もかき立てられ、演じていてそれはそれは楽しかったです。ぜひまた次回もご一緒させて頂きたい脚本家の先生です。
■千葉行利さん<ケイ ファクトリー/プロデューサー>:
本打ちでは、プロデューサーと脚本家は「どんな感じなのかな…」という探り合いから入るのですが、こんなふうに楽しく仕事ができたのは、黒岩さんが僕たちの拙い意見や感想を嬉々として聞いてくれて、そこから広げてくれたからです。次の稿では僕らの想像以上のものを書いて来てくださる。「何度でもお仕事したい!」と思わせる作家さんです。
■三宅喜重さん<関西テレビ/演出>:
本の面白さに負けないように、というか、本が凄く面白くて、ドライブ感があって、どんどん展開していくので、スタッフみんなが「どうなるんだ、どうなるんだ、どうなるんだー!」と楽しみにしながらやっていたというのが現場での感想ですね。
■宮川晶さん<ケイ ファクトリー/プロデューサー>:
本打ちでの黒岩さんは“惜しむこと”がない。「まだとっておいた方がいいんじゃないかな…」と思うアイデアも、エンターテイメントに徹して、前倒し前倒しでどんどん提案してくださる。私は「勿体ないな」とおもってしまって、そういう貧乏性な所はいけないと勉強させて頂きました。
現場に行くと、役者さん達から「次どうなるの?」という質問を凄く受けましたね。本に関するネガティブな意見は聞いたことがないです。主役を演じた伊藤英明さんはあるシーンのセリフを読んで大爆笑して「最高だー!」と。他の役者さんもスタッフも爆笑しながら撮影したことが凄く印象に残っています。
■豊福陽子さん<関西テレビ/プロデューサー>:
視聴者の方からも「次はどうなるの?」という声を沢山頂きました。回を重ねるごとに、その声がどんどん多くなってくるのを感じた、一番実感したドラマでした。
このコメントを聞くと、よく分かりますよね。
キャラクターをきちんと作り、そのキャラクターが勝手に動きだすと、制作陣も俳優陣もそして視聴者も、「次はどうなるの?」と引き込まれていく。
キャラクターをきちんと作ったドラマは面白いということですよね。
また、コンクールの選考委員は受賞理由をこう講評してます。
〇高成麻畝子さん(TBSプロデューサー):
キャラクターが良い。どの登場人物も不思議と憎めない。それどころか応援したくなる。特に夫。愚かで、惨めで、単純で、愛おしくなる。つまり、お客さんはいつの間にか妻目線で見ているのだ。(中略)
さらに優れていると感じたのは、刑事たちの扱いだ。この手のミステリーでは説明係に終わりがちだが、『ヤバ妻』では、新情報や主人公たちと絡ませて、飽きさせないように工夫してあり、スピード感と疾走感が淀むことなく、進行する。
コンクールで賞をとるには
『僕のヤバイ』が市川森一賞を受賞した理由、もうお分かりですよね。
それはキャラクターです。
皆さんが挑戦されているシナリオ公募コンクールも同じです。
今までにないアイデアや斬新なストーリーだけに気をとられてはダメなのです。
つまり、コンクールで賞をとるには、勝手に動き出すくらいキャラクターをしっかり作ること。
「次どうなるの?」とコンクールの審査員にも思わせる作品は、面白い脚本ということであり、
そうすれば自然と“結果=賞”はついてきますよね。
プロのシナリオライターである黒岩さんでも、キャラクターが勝手に動き出す経験はなかなかないとのこと。
それほど、キャラクターを作るというのは難しいことなんです。
あなたの脚本はキャラクターが勝手に動き出しますか?
面白いと思ってもらうには、コンクールで賞をとるには、キャラクターです!
コンクールに応募する脚本のレベルアップに役立てて下さいね。