映画は憧れ
シナリオ・センター代表の小林です。気候不順のせいか、風邪を引かれたり、体調不良の方が多いようですね。こういう時期は、脱ぎ着の良いカッコで出かけた方がいいですね。暑くなったり、涼しくなったりに対応しましょう。若くてもくれぐれも侮らないように。(笑)
NPO法人古き良き文化を継承する会の根本隆一郎さんから、素敵な本と展覧会のお知らせをいただきました。
根本さんはシナリオ・センターで学ばれた後、名作のポスターやプログラムなどを管理し、後世に残していくお仕事をされています。
根本さんの協力で、6/11まで練馬区立石神井公園ふるさと文化館で特別展「映画に魅せられた文豪・文士たち」という展覧会が行われています。
映画が憧れであった時代、映画に魅せられ、浪漫や未知の可能性を感じた谷崎潤一郎や川端康成、林芙美子、江戸川乱歩、三島由紀夫といった作家たちが、映画雑誌はもとより新聞や文芸雑誌、藝術新潮やアサヒグラフなど多岐にわたる媒体にこぞって、映画評、映画論を寄稿し、熱く映画を語り合ったそうです。
その映画評・映画論は、作家の感性、尺度、表現で記されており、ふつうの映画批評とは全く異なるいわば、作家の作品のような形のものです。
この展覧会は、昭和初期から30年代を中心に新聞や雑誌に寄せられた「文豪・文士たち」による映画評や憧れの女優について書かれた膨大な原稿から100本を厳選して、当時の映画ポスター、プログラムととともに紹介している、ちょっと趣の変わったものです。
原作者と脚色
展覧会にともなって「知られざる珠玉のシネマガイド 映画に魅せられた文豪・文士たち」という小冊子が創られています。
小説などを原作として、映画やドラマが多く作られている昨今、シナリオライターとして脚色する上での縁(よすが)になるのではないかと思います。
その中で川端康成が「原作さえよければ、いい映画ができるということは、あるいはほんとうでしょう。ただ一つ、原作の文藝的技術に映画的な批評が加わっているならばです。(中略)文藝を映画で批評する。(中略)文藝作品の脚色家や監督を、私は一種の文藝批評家として見ます。優れた批評家であるなら、創造的でないわけはありません。」(昭和5年「映画往来」掲載)
と書いています。
シナリオライターが原作と向かい合うとき、川端康成が敬意を表してくれているようなきちんとした読み方、視点を持って脚色に挑むべきだと思いました。
そんな文豪・文士たちの映画評を色々とみていくのは、シナリオライターとして大きな糧となるかと思います。是非、おでかけください。