ゲームシナリオ ライター ・ディレクターの資質に迫る
ゲームシナリオ に興味がある方、必読です!
スマートフォンゲームの世界では、年々競争が激しくなり、シナリオを重視するゲームではドラマ性がさらに重要になってきているそうです。
そう、シナリオの重要性は高まっています。ゲーム制作会社の方から「プロデューサーやディレクター向けにシナリオの研修をしてほしい」というご依頼を受け、シナリオ・センターではシナリオ研修やシナリオの書き方の勉強会などを実施しています。
ゲームシナリオの業界で活躍するために必須の力とは何か、サイバーエージェントグループでゲーム制作に携わる現役クリエーターにインタビューしました。
■ざっくり聞いたこと
・ゲーム制作の現場で映像シナリオの技術はどれくらい役に立つのか……
・ゲーム制作の現場で求められているシナリオライター像とは……
■わざわざ聞かせてくれた方
サイバーエージェントグループさんで、ゲーム制作に当たられているお三方。
・山﨑さん( ゲームシナリオ ・ディレクター )
・国本さん( ゲームシナリオ ・ディレクター )
・栗原さん( ゲームシナリオ ライター )
山﨑さんと国本さんは、ゲーム制作会社のディレクターおよび ゲームシナリオ ライター 向けにシナリオ・センターでアレンジした研修を2016年12月17・24日の2日間(12時間!)受講して頂いています。
この2日間では飽き足らず?山﨑さん、国本さんに加え、栗原さんも2月開講したシナリオ8週間講座を受講。
もしかして、12時間も研修したのに(しかもクリスマス・イブに!)、物足りなかったのかも…とか、そんな不安な気持ちを押し殺しながら、 ゲームシナリオ 研修を担当した新井自らインタビューしてみました。
シナリオ8週間講座で発見した「結」は余韻!
新井
昨年末実施した ゲームシナリオ 研修は2日間で、「キャラクターの作り方」「魅力的なセリフの作り方」「魅力的な構成の立て方」「効果的なディレクション方法」の4項目を計12時間、みっちりやりました。
山﨑・国本
はい。その節は。
新井
憶えてます?(笑)
国本
憶えてますよ!ノート見直したりしています。
新井
ホントですか?だって、山﨑さんと国本さんは、年末の研修に加えて、今回はシナリオ8週間講座も受講していらっしゃるので、なんか物足りなかったのかと心配で。
山﨑
いえ、そういうことではないですよ。もっと、勉強したくて!
新井
ありがとうございます。安心しました。
そもそも、年末の研修やシナリオ8週間講座を受講される前は、シナリオの書き方などはどのように勉強されていたんですか?
国本
独学といいますか、本を読んだり、会社にいるシナリオライターの先輩方に教えていただき学んでいました。
山﨑
私もそうですね。仕事をしながら学びつつ、前職もゲーム制作会社だったので、そこでの知識を活かしたり。
栗原
僕は、シナリオや小説の書き方などのハウツー本を読んで勉強していました。ただ、起承転結の「転」や「結」の役割についてはそれほど詳しく載っていませんでした。
今回、シナリオ8週間講座の「構成」の授業で、「転=テーマ」「結=余韻」ということを知って、「転でストーリーは終わるんだ!」と気づいたときはショックでしたね。
山﨑
私も!「結=余韻」と知って衝撃でした!
起承転結に関して言えば、「シナリオはどんな姿をしているのか」を視覚的に表した“山のグラフ”は凄く分かりやすかったです。
これまで、起承転結は意識していましたが、「→(矢印)」のように直線的な考え方をしていました。「転」の部分に “事件”を「置いていく」という感覚だったので、「転」を単体のように捉えていたんです。だから、「転」で盛り上がりはするのですが、そこに至るまでが何か物足りない…。
ゲームシナリオ 研修やシナリオ8週間講座を受けて、「起」から「転」に向けてユーザーをグイグイと惹きつけるための、小さな“山”の積み重ねが抜けていたことに気づきました。
国本
私も「起」は「転」の反対のことを描く、という「起=アンチテーゼ」「転=テーマ」もより意識するようになりましたね。そうやって意識しながらテレビドラマや映画を見てみると「だからこの話は面白いのか!」と。構成を考えるうえで、凄く役に立っていますね。
栗原
起承転結をしっかり理解できたので、テレビドラマや映画を見て「なぜ面白いのか」が論理的に分かるようになりました。
シナリオ8週間講座では、シナリオの技術を説明するとき、映画やテレビドラマのシーンを例題に出してくれます。「視聴者にこういうふうに感じてもらいたいから、この技術を使っているのか!」と凄く分かりやすかったです。
国本
ゲームシナリオ研修やシナリオ8週間講座でこういった技術を教えて頂いたことで、色々な視点から作品や媒体を分析できるようになり、仕事に活きています。
研修と講座で、説得力と作業スピードがUP
栗原
実は今まで、自分の企画を説明するとき「説得力がないなぁ…」と感じることがありました。でも、「この企画はこういうふうにしているからココが面白いんです!あの映画もこの技術を使ってこういう効果を出しているんですよ!」と具体的に説明できるようになったので、自信にもつながりましたね。
国本
シナリオに関する技術を、改めてイメージ化・言語化できたことで思考の整理ができました。私も山﨑もディレクションすることが主な業務。シナリオライターの方々があげてくれたシナリオを読んで、「どう客観的・具体的に指示を出すか」という“解”をみつけるスピードが2倍くらい速くなったと感じています。
これまで感覚的に捉えていたシナリオの構成を、イメージ化・言語化できたことで思考の整理ができました。私も山﨑もディレクションすることが主な業務。シナリオ・ライターの方々があげてくれたシナリオを読んで、「どう客観的・具体的に指示を出すか」という“解”をみつけるスピードが2倍くらい速くなった感じがしています!
山﨑
ほんとそうだね。思考の整理ができたおかげで、シナリオライターさんにフィードバックするスピードが速くなって、スムーズにディレクションができるようになりました。
新井
おぉ!栗原さんは企画を説明するときの説得力がUPしたし、山﨑さんや国本さんはディレクションのスピードが2倍もUP!うれしいなぁ~。
※ディレクション力UPの方法を知りたい方は、「本打ちを成功させる脚本家とプロデューサーの関係」についてを、ご覧ください。
ワード数や時期的な“縛り”の中で作る魅力的なセリフ
新井
シナリオ・センターの講義は、映画やテレビドラマを作るための映像シナリオの技術です。このシナリオの技術は、小説を書く上でも使えるし、勿論、ゲームを作る上でも応用できるわけです。
今回、 ゲームシナリオ 研修やシナリオ8週間講座を受講されて、具体的にどんな風にゲームシナリオ制作に役立っていますか?
国本
例えばキャラクター作りのとき。映画やテレビドラマと比べて、スマートフォンゲームは登場人物の人数が凄く多い時があります。私が担当したあるゲームは登場人物がなんと50人以上! シナリオライターさんもその数のキャラクター全てを細部まで完璧に把握するのは難しい…。
そこで役に立ったのが、 ゲームシナリオ 研修で教えて頂いた「○○すぎる性格」というふうにキャラクターを設定するメソッド。キャラクターのセリフを監修するときも「この子は○○すぎる性格だから・・・」と考えるとディレクションしやすくなりました。
山﨑
そうだね! 登場人物のキャラクターを設定するとき、「○○すぎる性格」と意識するようになって、セリフにもさらに拘りをもつようになりました。
また、セリフの種類も教えて頂いたので、1つ1つのセリフにも敏感になりましたね。例えばシナリオライターさんから上がってきたシナリオを見て、「なんかこのセリフ、キャラクターの性格が出ていないなぁ…。もっと○○すぎる性格を意識してもらうように伝えよう」とか、「 こっちは“説明セリフ”になっているな」○○すぎる性格が出ていないなぁ…。あ!“説明ゼリフ”になっているからだ!」とか。
栗原
説明セリフ!説明セリフは、スマートフォンゲームだからこそ、より気をつけないといけない。
というのは、スマートフォンゲームは1タップで表示できるワード数が限られています。限られた中で、事件の概要を説明しないといけないのですが、説明的になってしまうと今度はキャラクターの魅力が出なくなってしまう…。
この葛藤はスマートフォンゲームの宿命ともいえますね。
国本
そうそう、キャラクターの魅力を出すことはとっても大切。スマートフォンゲームは空き時間や移動時間に遊ぶ方も多い。そういったこともあり、お気に入りのキャラクターが出てこないシナリオはすぐ飛ばしてしまったり、スキップしてしまう人もいます…。
だからこそ、ユーザーの皆さんに「このキャラ面白い!」と思ってもらえるような、そのキャラクターを目に留めてもらえるようなきっかけを増やすため、そのキャラクターならではの魅力的なセリフを考えることは心掛けています。
栗原
キャラクターを好きになってもらえないとセリフを読んでもらえないからね…。
ゲームシナリオ ならではのキャラクターの出し方
新井
キャラクターの魅力をつける技術のひとつ、二面性についてはどうですか?
栗原
スマートフォンゲームの場合、例えば、「意地悪な奴だけど、いざというときは助けてくれる」という“二面性”を出すのはなかなか難しい。意地悪な性格が出ている時に、ユーザーがそのキャラクターを見るとしますよね。「このキャラクター、イヤだな」と思ったら、やはりすぐ飛ばしてしまうので、肝心の「いざというときに助けてくれる」という二面性は気づかれないままになってしまうんです…。
国本
二面性に関して言えばこんなこともあります。
私の担当するスマートフォンゲームは毎月イベントを実施します。イベントでは期間限定で読める“イベント・ストーリー”を公開します。この場合、ゲームリリース以前からプレイし“メイン・ストーリー”を全て読み切っているユーザーと、“イベント・ストーリー”からゲームに参加した新規ユーザーの、2タイプのユーザーが存在することになります。スタート時期が違うので、当然それぞれのユーザーが持っているキャラクターに関する情報量も違います。
その上で、ひとつのイベントストーリー内で多数のキャラクターの二面性を出すのは、映画やテレビドラマと比べて難しいんじゃないかな…。イベントが始まる前の、いわゆる“メイン・ストーリー”の段階からゲームを始めているユーザーと、“イベント・ストーリー”からゲームに参加したユーザーの、2タイプのユーザーが存在することになります。ユーザーのスタート時期が違うので、キャラクターの二面性を出すのは、映画やテレビドラマと比べて難しいんじゃないかな…。
山﨑
また、二面性に加えて、キャラクターの成長を描くときも、こういったユーザーの開始時期のことなども含めて、タイミングを計算しながらコントロールしないといけません。これもゲームシナリオならではだと思います。ゲームにおいても、二面性や成長を描くことは非常に重要なんです。ある意味、研修や講座でキャラクターについて学んだからこそ、「二面性をどう出すか」「成長をどう描くか」とより意識しながらチャレンジできています。
ゲームシナリオ で今後求められる人材
新井
なるほど! ゲームシナリオ ならでは制約を踏まえたて上で、キャラクターの魅力を出すことがポイントになるんですね。とすると、 ゲームシナリオ と映画やテレビドラマのシナリオって別物なんですかね…。
栗原・山﨑・国本
いえいえいえ!!!
山﨑
ゲームシナリオ 研修とシナリオ8週間講座を受講して、 ゲームシナリオ も映画やテレビドラマのシナリオも一緒だなと実感しました。
例えば、映画やテレビドラマの、10分のワンシークエンス。観客や視聴者を飽きさせないように、短い中にも起承転結を考えて構成しなければいけないわけですよね。これはゲームシナリオにも通じます。
要は、10分のワンシークエンスが、ゲームでいうところの1話分。ユーザーに「もっと読みたい!」と思わせる“引き”をいかに作るかが肝になります。媒体の見せ方やワード数の制限はありますが、基本的なシナリオの考え方は同じです。
国本
ゲームは映像ではありませんが、いいシナリオライターさんが書いて下さったシナリオを読むと「映像っぽいなぁ」と感じることがあります。アニメーションのように自然とキャラクターが動いているように見えてくるんです。そういった点も踏まえて、ゲームシナリオを書くときも、映画やテレビドラマのシナリオを書くときも、同じなのではと思います。
山﨑
フィーチャーフォンの時代はノベルゲームが多かったので、小説と同じく、文章を楽しんでもらうように作っていました。でも、スマホが普及した今、画像も綺麗なので映画やテレビドラマ同様、映像寄りの考え方がゲームシナリオにも求められていると感じています。
国本
最近のスマホゲームのシナリオ演出は、アニメーションのようにキャラクターの「立ち絵」を動かすことができる「ライブ2D」という技術も普及し始めて、ますます映像的なものに近づいている印象がします。
栗原
ゲームの技術進化に伴って、スマートフォンゲームもこれからますます映像的な演出を取り入れていくと思います。今回、映画やテレビドラマのシナリオを基礎から学んで、一番の収穫だったのが「カメラに映っていることを書く」ということ。
国本・山﨑
うんうん!!
栗原
逆に言えば、「映らないことは書いてはいけない」ということですよね。
「書いてはいけない」ということは要するに、「他のことで表現しなければいけない」ということ。
ゲームは映像ではありませんが、 ゲームシナリオ を書くときもカメラのフレームを意識してシーンを展開していかなければ!と考えるようになりました。映画やテレビドラマなど映像のシナリオの発想や技術を、 ゲームシナリオ にもどんどん取り入れていこうと思っています!
新井
ゲームシナリオ と映像シナリオを、別物と考えることはないのかもしれませんね。
ということは…シナリオ・センターがお教えしているシナリオの発想と技術は、業界のジャンルに関係なく、ボーダレスに使えるメソッドになんだと、確信が深まっちゃいました!ありがとうございます。
シナリオ8週間講座について詳しく知りたい!という方は、シナリオ8週間講座のページをご覧ください。