仕事中にケツのこと、どれだけ考えていますか?
わたくしシナリオ・センターの新井は、仕事中にケツのことばかり考えています。それはもう、毎日のように。
ケツは、ケツでも起承転結の「結」についてです。なぜなら、仕事をする上でよく言われる「相手の立場で考えろ!」の答えが、「結」にあるからです。
仕事の上で相手というのは、お客様だったり、上司だったり、部下だったり…
シナリオの場合であれば、観客や視聴者、それからプロデューサーや現場スタッフなどなど…
私以外は、みんな『相手』です。なんだか多勢に無勢。
だから「相手の立場で考えろ!」と言われます。
そうしないと、伝えたいことが相手に伝わらないからです。
でも、「相手の立場で考えろ!」というのは、スタンスもしくは姿勢の話です。そんな話をされても困りますよね。「はぁ私なりに、考えていますけど…」と思うはずです。
知りたいのは、「どうやったら、考えられるようになるか」です。
ケツに、いや、シナリオの構成である起承転結の「結」に括目せよ!
伝える 秘訣シナリオの「結」にあり
「ん?シナリオ?」と思いますよね。
シナリオの技術は、何万人もの観客・視聴者に伝える技術です。脚本家が使っている起承転結の「結」の機能を知ることで、「相手のことを考える」が自然とできるようになっちゃいます。
「結」の機能を間違えちゃうと…
・営業の方なら、お客様に一方的な説明をしてしまう
結果、自信満々でクロージングしたのに「とりあえず検討します」と言われる
・打合せなら、「これでいいよね」と意見を通してしまう
結果、相手に「あ、じゃや、まぁ…はい…」と、結論を濁される
・シナリオなら、尻切れトンボになってしまう
結果、ゼミで「なんか、終わり方が…」と首を傾げられる
プロポーズや告白を控えている人も要注意。
ほら、ケツ、いや「結」は重要そうでしょ?
みんな誤解している「結」の機能
多くの方が、かな~り深く誤解しているのが、起承転結の「結」の機能です。
作文の授業で、「結」では結論を書くべし!と教わっていませんか?ね、言われたでしょ?
「結」は結論=自分の言いたいことを伝えること、だと。
「結」=結論。これ、間違っています。大いに。
サイバーエージェントさんで実施したシナリオディレクション研修での感想を伺った時も、こんなお話がありました。
栗原
僕は、シナリオや小説の書き方などのハウツー本を読んで勉強していました。ただ、起承転結の「転」や「結」の役割についてはそれほど詳しく載っていませんでした。
今回、シナリオ8週間講座の「構成」の授業で、「転=テーマ」「結=余韻」ということを知って、「転でストーリーは終わるんだ!」と気づいたときはショックでしたね。
山﨑
私も!「結=余韻」と知って衝撃でした!
※詳しくは「より面白いゲームをユーザーに提供するには、シナリオが大切。」
「結」はテーマの「定着」と「余韻」
起承転結の「結」の機能とは何でしょうか?
ズバリ、テーマの「定着」と「余韻」です。
「ラストシーンは、機能としては、ドラマの余韻と定着です。無言のテーマの訴えがあったのち、そのテーマをちゃんと定着される芝居をおかなければなりません」(『シナリオの基礎技術』p77)
シナリオの場合、「結」ではすでにドラマは終わっているのです。
「結」の機能は、こちらの伝えたいことを伝えることではありません。「結」で考えるべきは、こちらの伝えたいことが、観客や視聴者の気持ちにどんな風に定着するか、なのです。
「結」は結論だ!
なんて、間違って教わっちゃったせいで、「相手のことを考えてない」と思われたり、「イマイチ、相手に伝わらないなぁ」ということになるのです。それもそのはず、これではどこまで行っても、伝える側の視点しかありませんから。相手がどう思うかって、どこにもないじゃないですか!
「結」で、相手がどう思うだろうか、を考えることができれば、「相手の立場で考える」ということができるようになります。
では、自分の伝えたいことは、どうすればいいのよ!と思いますよね。
その答えは、シナリオの「転」にあります。
伝えたいことを伝えるのは「転」
起承転結の「転」の機能とはなんでしょうか?
「転」はドラマでいう、クライマックスです。
「「転」でテーマを感じさせる、この作品のへそのところです。観客は作者の考え方に感動するところです。観客が感動するかしないかは、ここのところで決まります」(同書 p77)
伝えたいことは、「転」で伝えます。
「転」と「結」の関係を、映画『タイタニック』で例えるのであれば、クライマックスは沈没し、海の中でローズがジャックに口づけをして凍ってしまった手を離し、生きることを選ぶシーン。
「結」は、年老いたローズが思い出のネックレスを、甲板から海に落すシーンでしょうか。
沈みゆくネックレスを観ながら、観客は恋愛の尊さに浸ったはずです。まさに、テーマの定着と余韻です。
(「結」を意識することで、相手の悩みやビジネスの問題解決にもシナリオを役立てることができます。参照:悩みを解決する方法 シナリオ技術で悩みを分解)
「結」の発想で、「伝える」が「伝わる」に変わる
自分の伝えたいことに対して、相手がどう思うか、もしくは、相手にどう思ってほしいか、という「結」を想定するクセがつけば、自ずと「相手の立場で考える」ことができるようになります。
・営業なら…お客様が「自分の○○によさそうだ」とイメージできるだろうか
・プレゼンなら…プレゼンした後に、お客様が「確かに○○は重要だよな」と思うだろうか
・企画書なら…お客様は「導入したら○○ができそうだ」と社内で揉んだ時に思うだろうか
・プロポーズなら…恋人は「自分と結婚したい!」とこのセリフで思ってくれるだろうか
・シナリオなら…このラストシーンで、観客の気持ちにテーマがじんわりと届くだろうか
いままで、自分が「何を伝えるか」ばかりに気を取られて、相手に「どう伝わるか」は考えてなかったかも…と、思い当たった方は、「結」を考えてみてください。嫌でも視点が、自分から相手へと移りますから。
今日から「結」フェチになって、「伝える」を「伝わる」に変えましょう。