シナリオの技術を使えば、自分の悩みが解決できます。
方法は、悩みを分解すること。
例えば、「脚本コンクールに出そう!」と思っているのに、締切がどんどん近づいてきて、全然書けていないとき。
こういうこと、ありますよね?
「どうしよう、書かなきゃ!」と漠然と悩むだけでは進みません。
そんなときは、いつまでに、どうやって、書いていけばいいのかを整理する必要があります。
その整理をするときに、シナリオの技術が使えるのです。
ドラマでは、主人公が、起承転結の「起(アンチテーゼ)」から「転(テーマ)」に向かって変化します。
変化するために、「起」と「転」のあいだにある「承」の部分で、障害(=主人公の悩み)を次々と乗り越えていきます。
日常も同じ。
自分を主人公としたとき、「起:悩んでいる状態」から「転:悩まない状態」に向かって変化します。
変化するために、「承」の部分で悩みを解決していかないといけない。
そのためには、「承」の部分で悩みを分解していけばいいのです。
では、悩みをどうやって分解すればいいのか、その方法を「1億人のシナリオ。」プロジェクトの一環で先日実施した「新人職員 シナリオ研修」(@日光市役所)からリポート致します!
悩みを解決するには、悩みを分解
今回、講師を務めた新井と、見学のため同行したわたくし齋藤、行ってまいりました日光!
最寄駅は下今市(しもいまいち)。
日光市役所の研修会場に到着すると、机の上には地方自治・地方財政関係の法令などが収録された分厚い『自治六法』が。
皆さん、午前中に『自治六法』を使った研修があったとか。
だからでしょうか、皆さん、静か。
齋藤「“いまいち”テンションが低いですね」
新井「……」
はい、そんなこんなで、研修が始まりました。
今回の日光市役所さんの新人研修では、このような課題と設定を。
課題:大雨被害の復旧。
設定:10棟の住居で被害が確認。電車は運転を中止。倒木のため通行止め。
これを基に、「大雨被害で被災した人」を具体的に設定し、その人が何に悩んでいるかを考えます。
そして、その悩みを分解。
次に、その分解した悩みの解決法をそれぞれ考えていきます。
チームごとに分かれて、いざディスカッション。
皆さんのテンションがだんだん上がってきましたよ。
自然に囲まれた日光市は、大雨被害などのこうした自然災害は、本当に身近な問題。
だからこそ、本当にいま起きたことのように、皆さん実感がこもります。
あるチームが行った、悩みを分解した模様をご紹介します。
被災者は外国人観光客の男性。
名前はトーマス。ベルギー出身で、日本語は分かりません。
電車もタクシーも使えないのでホテルに帰れず、いまは避難所にいます。
チームの全員が、このトーマスの立場になって考えます。
考え方の手順としては、
①まずは「結=テーマの余韻と定着」から。
悩みが解決したトーマスになんと言ってもらいたいかを考えます。
このチームが考えた「結」は「ありがとう!もうワイフに会えないかと思ったよ」。
②次に、「転=テーマ」。
このチームが考えた「転」は【トーマスを安心させること】。
③そして、「起=アンチテーゼ」。
“悩んでいる今”の気持ちです。
このチームが考えた「起」は「ベルギーのワイフにもう会えないかも…」。
④最後に考えるのがいよいよ「承」。
解決すべき悩みです。
トーマスにどんなことをしてあげれば「ありがとう!もうワイフに会えないかと思ったよ」と言ってもらえるのか。
チームの皆さんは、ワイワイと楽しそうに、でも真剣にトーマスになりきりながら話し合います。
このチームが「承」で分解したトーマスの悩みと解決策がこちら。
・トーマスの悩み1: 言葉が通じない
→解決策:通訳のギルバートに至急依頼しないといけない。
・トーマスの悩み2:避難所になじめない。日本人ばかりで居心地が悪い。
→解決策:避難所の一角に、外国人の方々だけで集まることができるように調整しないといけない。
・トーマスの悩み3:今の状況が分からないから、とにかく不安。
→解決策:何が知りたいのか、何をしたいのか、を聞き、安心させてあげないといけない。
こうやって、悩みを分解していくと、やらなければいけないことが浮き彫りになりますよね。
ほかのチームの皆さんも、自分たちが設定した被災者の悩みをひとつずつ丁寧に分解し、被災者の立場になって、解決策を考え出していました。
(お互いの考えを共有して、社内コミュニケーションでの合意形成を円滑に進めることにもシナリオを役立たせることができます。参照:合意形成を生む社内コミュニケーションの手法とは?)
「市民の方々の背景や状況を察し、相手の気持ちに寄り添うことが重要」
日光市行政経営部人事課人事研修係 星野晃宏さんは、今回の研修を終えてこうコメントしてくださいました。
「市役所にこられる市民の方々は、様々なご事情を抱えて来庁されます。
そういった中で行政は、専門知識を有することと同様に、市民の方々の背景や状況を察し、まずは相手の気持ちに寄り添うということが重要です。
多様化するニーズの中で市民ひとりひとりのお気持ちを汲みながら、課題を客観的を分析しつつクリアして、市民の幸福に資することができる。
そんな職員を、研修を通じて育成していくことがますます重要であると感じています。
そういった難しいテーマを、シナリオセンターさんならではの豊富な話題を駆使して職員のモチベーションを高めつつ、実践的に学ばせていただける、非常に貴重な研修だと考えます」
市民の方々の背景や状況を察し、まずは相手の気持ちに寄り添うということが重要。
だからこそ、市民の方々が抱える悩みを聞いて、分解する作業が大切になってくるんですよね。
研修を受けられた新人の皆さんのアンケートでも
「悩みを“分解”するという考え方が発見でした!」
「相手の立場になる。その具体的なやり方が、相手の悩みを分解することなんだと気づきました」
といった嬉しい感想を沢山頂きました。
皆さんも試してみて下さい。
この方法はどんな悩みにでも使えますよ。
ボンヤリとした悩みを分解して、ひとつずつ、それを解決するには何をすればいいか。
そうすれば、ドラマの主人公と同じく、悩みを乗り越えることができますよ!