プロデューサーは唯一の「リアリスト」であれ
シナリオ・センター代表の小林です。納豆の日だそうです。そのせいでしょうか、朝から国会閉会審議は糸引いていました。(笑)
「記憶のない」発言の人ばかりが日本を動かしているようなので、九州の豪雨も、福島や沖縄のように、忘れ去られるのではないかと心配です。
ここ数日の出身ライターの方からいただくメールは、必ず九州のことを心配されています。
やはり、想像力のある方は、遠くにいる人々の気持ちに添えるのでしょうね。
映画に携わるプロの方がおふたり、全く違う観点から本を出されました。
1冊は、アルタミラピクチャーズのプロデューサー桝井省志さん著「映画プロデューサー入門」(東京藝術大学出版会刊)
桝井プロデューサーは、アルタミラピクチャーズの社長として、 大ヒット作「Shallweダンス?」「それでも僕はやっていない」「舞妓はレディ」「サバイバルファミリー」等など多くの映画を産みだしてきました。
また、東京藝術大学でも教えておられ、プロデューサーとはどういうものかを学生に肌で教えようと「プロデューサーズ」というドキュメンタリー映画を創られました。
本書は、その「プロデューサーズ」のシナリオと日本映画の大きな牽引車となってきたプロデューサー佐伯知紀、伊地智啓、岡田裕、佐々木史朗さんの4人のお話を特記しています。
入門書というよりは、プロデューサーを志す人への啓蒙書というべきもののような気がします。
「逆説めくが、プロデューサーを志す者はまず最初に『自分だけは夢を持てない存在なのだ』ということをどうしても胸にしっかり刻み込まなくてはならない。
映画の現場にあって、唯一プロデューサーだけはリアリストでなければならないのだ」(まえがきから)
いつもやさしく謙虚な桝井さんらしいちょっとシニカルで温かみのある言葉が胸に響きます。
プロデューサーを志す方はもちろん、シナリオライターにも読んでいただきたい、映画創りはどういうものかということがとてもよくわかる一冊です。
桂千穂の「イタダキ」
もうひとつは、シナリオライターの大御所桂千穂さん著「桂千穂のシナリオはイタダキで書け!」(メディアックス刊)
こちらは今年の12月公開の大林宣彦監督「花筐」で映画脚本の80本目となる大ベテラン桂千穂さんがちょっと今までにない視点で書かれたシナリオ入門書です。
どんな視点かというと
「古今東西、あらゆる映画、小説、戯曲はなんらかの作品を参考に創られています。
映画界ではそれを『イタダキ』と言っています。
世界の名作も大ヒット映画も、もとの映画を見ると『あ、ほとんど一緒じゃん』ということが山ほどあります。
私のシナリオも、そのままイタダイたものから、構成だけイタダイたもの、ムードだけイタダイたもの、作品によって様々ですが、すべて『イタダキ』でできています。
本書では私のシナリオが何をイタダイてつくったものかも詳しく説明し、なおかつ、実際の私の作品を使ってシナリオの≪技術≫を説明会しています。」と桂千穂さん。
すごいお話のようですが、新井一がストーリーは23通りしかないと言っていることと同じです。
桂千穂さんがいかにたくさんの映画をご覧になって学ばれてきたかということもよくわかり、これもまたシナリオライターの入門書というよりは啓蒙書のような熱い本です。
2冊の啓蒙書、ぜひとも読んでみて下さい。