menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

人間を描くってどういうこと

男たちの旅路(里山社刊)

山田太一コレクション

シナリオ・センター代表の小林です。倉本聰さんの「やすらぎの郷」が話題になりましたが、私も録画して毎週まとめて拝見しています。シナリオも買っちゃいました。
キャラクターがさすがにしっかり作られているので、役者が役者を演じているのですが、本物のようにみえて本物ではないところが面白く楽しんでいます。(笑)

倉本さんの脚本を読んでいたら、山田太一さんの脚本も読みたくなってしまいました。
ちょうどシナリオ・センターで「山田太一コレクション」(里山社刊)と銘打って「男たちの旅路」「想い出づくり」「早春スケッチブック」の3作品を販売していたので、読み始めました。 

私は、「北の国から」(CX)と裏表で視聴率を争った「想い出づくり」(TBS)も好きですが、特に「男たちの旅路」が好きで、確か土曜日だったと思いましたが毎週欠かさず見ていた記憶があります。
はい、記憶があります。(笑)

主役は、時の東映の大スター鶴田浩二さん。部下役に桃井かおりさん、水谷豊さん、森田健作さん、柴田俊夫さん。
警備会社が舞台で、鶴田さんは若い人たちの指導にあたる上司吉岡司令補、特攻隊の生き残りという背景を持っています。
警備会社の派遣先で織りなすさまざまな人との人間模様を描かれたもので、ガードマンだからと言ってもアクションは全くと言っていいほどありませんでした。
山田太一さんが、毎週、この登場人物たちに、どんなリトマスを投げこんで、どんな想いを語らさせるのか、本当に楽しみでした。

>>「山田太一コレクション」(里山社刊)
・「男たちの旅路
・「想い出づくり
・「早春スケッチブック

仕事から、はみ出せない人間にイキイキした仕事はできん。はみ出さない奴は、俺は大嫌いだ(廃車置場から)

たまたまFacebookを見ていたら、「男たちの旅路」(NHK)の中の「車輪の一歩」という作品が話題になっているという記事があり、びっくりしました。
1976年の作品ですので、みたことのない方の方が圧倒的に多いはずなのに、なんで話題になるのだろうと不思議に思っていましたら、CSで昔のドラマを再放送しているのですね。

この作品を見た方が、1976年と2017年の今も障害を持っている方に対する社会は、何も変わっていない進歩していないと憤っていらして、「男たちの旅路」のセリフが素晴らしい、社会はこうありたいというメッセージを送っていた記事でした。

「車輪の一歩」は、車椅子の男6人と少女1人のお話なのです。
車椅子では、アパートにも住めない、映画にも電車にも風俗にもいけない・・・外に出るだけでも、何かするには他人の手を借りなくては、迷惑をかけなければ動けない。人として当たり前の行為も申し訳ないと常に思っていなければ暮らせないそんな車椅子の人たちに
「迷惑をかけることを怖れるな、胸を張れ・・・と言いたいんだ」と吉岡司令補はいいます。
障害を持つ方々が、できないところは人の手を借りてどんどん外に出て、貸す方も借りる方もそれが当たり前の社会にならなくてはいけないと言うのです。

ですが、車椅子の娘をもつ母親は
「独りで外に出せば必ず泣いて帰ってきましたよ。鬼じゃないかっていう人、いっぱいいましたよ。
縁日に連れて行けば、こんな人混みになんで車椅子が来るんだとか…(略)
中学へいれるのだって、どれだけ学校から嫌味を言われたか知れやしない。
私に言わせれば、世間はあんまり思いやりがなさすぎますよ。世間をもう信用していないんですよ。
もう私一人でこの子を守って生きてやるってそう思わせたのは世間ですよ」

30年前と今も、変わらないという声が多く挙がっていました。
山田太一さんは、常に「人間とはかくあるべきか、どう生きるべきか」について深く考えさせられる、普遍的な人間関係を描かれていらっしゃるから、今見ても、今読んでも古く感じないのでしょう。
それは、他者を想像し、自分とも向き合うことによって、真に人間を描こうという姿勢を貫かれていらっしゃるからではないでしょうか。
作家の目、作家の佇まいというのはこういうことです。

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ