1995年
シナリオ・センター代表の小林です。月刊シナリオ教室のバックナンバーをひっくり返していたのですが、1995年の夏期合宿で岡田惠和さんが講演していました。
脚本家として10年目だという時でした。
岡田さんご自身、もうお忘れかもしれませんが(笑)、こんなすてきなお話をしてくださっています。
「僕はもう100%、新しいドラマとか映画とかは存在しないと思っている。ひょっとしたらあるのかもしれませんが、先輩たちの仕事の中でほとんど出尽くしていると思うんですよ。
でも、それは悪い現実ではなくてよいお手本がたくさんあると思えばいいわけです。
ただ、映画やテレビをみているだけの蓄積だけでは、自分のシナリオは描けません。
僕が尊敬している人に三谷幸喜と言う脚本家がいます。彼はすごい引出しを持っている。
「王様のレストラン」と言うドラマを描きましたが、これは「調理場」と言う戯曲がモチーフになっているらしいのです。
でも、「調理場」を読んでも、そこにあの「王様のレストラン」の世界は見つかりません。
骨格だけ骨組みだけ使っているのですね。
そういうモチーフになる引出しをどれだけ持っているかが、一番ライターとして問われるところだと思います。」
岡田惠和さんは、セリフの名手として有名です。
なるほど、17年も前の講義ですが、岡田さんの基本姿勢を垣間見た気がしました。
朝2回・夜1回・土曜日1回
NHK朝ドラ「ひよっこ」、もう毎日3度見をしています。
茨城からでてきたみねこの成長物語ですが、サクセスストーリーというほどそんなにドラマチックな話ではありません。お父さんが行方不明になっても、記憶喪失になっても、ミステリアスでもありません。(笑)
でも、ゼッタイ、毎日欠かせないです。
市井の人々のたわいもないと言えばたわいもないやりとり、生き方の中に、人として心に染みるものがあるからです。人として大切なものがみえるからです。
登場人物一人一人のキャラクター設定は、いつもながら本当に緻密ですばらしいです。もちろん、だからこそセリフが生きています。さすがです。
連れ合いと当日3回一緒に泣いてしまい、土曜日の再放送でも泣いてしまったので、思わず真夜中に岡田さんにメールしてしまったほどです。(笑)
それは、お父さんが行方不明になって、東京の警察にお母さんが届けに行くシーンです。
すげなく十把一絡げのように言われて、
「谷田部実と言います。私は出稼ぎ労働者を1人探してくれと頼んでいるのではありません。ちゃんと名前があります。茨城の・・・」
それぞれの人のセリフもその人の生き方が秘められています。
すずふり亭の鈴子さんの「仕事というのは決められた時だけするもの」
嫁を働かせすぎて殺してしまったと悔やんでいる鈴子さんだからこそ。
みねこの叔父さん宗男「星があんましみえねえな、東京は。でもよ、若者諸君。見えないだけで、ないわけじゃねえぞ」
インパール作戦にかりだされて、命からがら地獄から戻ってこれた宗男だから。
岡田さんのセリフは深いのです。
社会にさりげなくなにげなくパンチを送っているのです。
「いいなあ」と思ったセリフは、私は書き残すようにしています。私のミソ帳(笑)
私の大好きな「最後から二番目の恋」のセリフ
「おっさんたちは美化しすぎだと思うんですよね!昭和の男が皆、高倉健だったわけじゃないでしょ?
絶対昔より今がいいと思うし、今より未来の方が絶対にいいと思います!
そういう風に少なくとも大人が思っていないとこの国はダメになるわけでしょ?!」
ああ、誰かに言いたい。(だれかって、あの人ですが(笑))
ハイスピード毒舌ラブコメディ
岡田さんのセリフの応酬をより楽しめるのが9月のシアタークリエです。
「ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~」
9月15日から29日 日比谷シアタークリエ で上演されます。
岡田惠和さん2回目の舞台です。
初戯曲「スタンド・バイ・ユー~家庭内再婚~」もメチャ掛け合いが面白かったです。
「バリでの結婚式を明日に控える個性が強すぎる男女4人が織りなす、ハイスピード毒舌ラブコメディ!」という謳い文句通りの、セリフの応酬が楽しめる素敵な舞台が繰り広げられそうです。
栗山千明さん、溝端淳平さん、浅田美代子さん、中村雅俊さんと出演者も魅力です。
是非とも、皆さん、ご覧になってください。私は、発売と同時にチケットとりました。(笑)
岡田さんのお芝居のタイトル、名画のタイトルのもじりですね。
そういえば、森下佳子さんの「おんな城主直虎」のサブタイトルも毎回名画のタイトルのもじりです。
うまい脚本家は映画がお好き。(笑)