ドキュメンタリー「禅と骨」
シナリオ・センター代表の小林です。昨日は、出身の林海象監督プロデューサーのドキュメンタリー映画のカウントダウン上映会へいってきました。
監督は、大ヒットした「ヨコハマメリー」の中村高寛監督で、8年の歳月を費やして完成させた長編ドキュメンタリー「禅と骨」です。
昨日は完成直前カウントダウン上映会ということで、上映後、生物学者の福岡伸一さん、ドキュメンタリー作家であり監督の森達也さんと中村監督のお話がありました。
横浜生まれの日系アメリカ人の禅僧ヘンリ・ミトワさんのドキュメンタリーなのですが、再現ドラマあり、アニメありのあれこれ盛りだくさんのドキュメンタリーとしては異色な作品でした。
粋人かはたまた変人か?とキャッチフレーズのあるように、どうにもとらえどころのない自由奔放の人柄のミトワさんの家族、仲間たちを巻き込んだ生き様が描かれ、ごった煮を食べているような複雑な味わいの中に、戦争に翻弄されて生きて行った家族というスパイスが入り込んで、どこの側面も、何とも言えない味わいなのです。
林海象監督は体調を崩されておいでになれなかったのですが、生物学的に分析された福岡さんのお話も面白く、映画と生物学との類似点に共感してしまいました。
観客の中に、「東京プリズン」を書かれた小説家赤坂真理さんもいらしていて、「面白かった」という感想に、戦争、戦後を詳しく知っているか知らないかでは、観る目も違うのだと感じ、もう一度「東京プリズン」を読み返したくなりました。
「観る」ということは主観です。主観は全ての人が違うので、客観的に感じさせることで多くの人が共感を得るのではないのでしょうか。
作り手の想いをより多くの人に伝えるには、見せ方というのはとても大事です。
中村監督は400時間ものフィルムを回されたそうです。その中から、126分の映像を切り取ったわけで、そのどこを切り取るかが、ドキュメンタリーの監督の視点なのでしょうね。
シナリオライターも同じことで、描きたいもののどこを主眼にするかが、作家の視点となるのでしょう。
それぞれの作家性がここに凝縮されていくのだと思います。
新しい視点「移動映画館」
林海象監督が、来月ミソ帳倶楽部においでくださいます。
ここのところ体調を崩しやすい監督なので、ちょっと心配ではあるのですが、9月9日土曜日、16:30~18:00 面白いお話を展開してくださると思います。
テーマは、「映像を意識してシナリオを描いているか」
コンクールの応募作品などを拝読させていただくと、ストーリー展開ばかりに気を取られ、見せるものを描いているということを忘れがちの作品が目立ちます。
案外、描いているとスルーしがちなんですね。
シナリオは映像にするためのものだという、根本の根本を忘れないようにしたいものです。
そこで、脚本も書き、メガホンも撮る林監督ならではの視点で分かりやすくお話していただこう思っています。
基礎講座のカリキュラム「映像の特性」で、モノクロのお話の教材としてでてくる名作「夢見るように眠りたい」。林監督のデビュー作ですが、その中のシーンも見ながらお話していただけるようです。
林監督のすごいところは、いつも新しいことを考えていらっしゃること。
創った映像をどこでも観てもらえるようにと移動映画館「ハヤシネマ」を作りました。車にスクリーンと音響設備を乗せて全国を回れるようにしたのです。
センターの駐車場に「ハヤシネマ」がやってきます。
こちらもぜひともお楽しみにしてください。
北村一輝主演・脚本・監督林海象「流れよ我が涙と探偵は言った」(20分)
永瀬正敏主演・脚本・監督林海象「GOODYEAR」(23分)
等を上映します。
映像を見ながら、シーンを描く感覚を研ぎ澄ませてください。