新井の恋バナに興味なし
ある日、新井が「こい こい」と話しかけてきます。
新井のスマホには、何かのページが表示されてます。
来い? 呼んでる? ちょっと近づいてみると…
・新井:「恋をテーマに話をしてほしいって言われてね。どの恋の話をしようかと迷ってるんだけど、でも、あのときの恋はさぁ、」
えっ? わっ! 遠い目をして話し出した…。
でも、わたくし齋藤、新井の恋バナに全然興味ありません…。
聞いてるフリをしながら、新井のスマホを見てみると、「指先からつながるエイズ啓発キャンペーン『ネイルにレッドリボンを』」のページが。
目を凝らして見てみると、どうやら東京デザイナー学院さんがそのキャンペーンの一環で広報誌を作るらしい。
で、その学生さんが新井に、「恋」というテーマで取材してくださるらしい。
学生の皆さんは、新井の恋バナなんて、興味ないんじゃないかな…。
ということで、恋バナを話す気満々の新井をねじ伏せて、話すテーマを「恋とシナリオ」に強制変更!
また、新井が自分の恋バナに脱線しないように、話してほしい「恋とシナリオ」についてのレジメも作り、新井に渡しました!
好きな人の隣に座るにはどうする?
取材をしてくれた編集部メンバーは、(左から)O山くん、S木さん、T田さん、S井さん。
当日は引率の先生、男性のM部先生と女性のM田先生も同席されました。
取材が始まるやいなや、「みんな、恋してる?」と新井。
やばい、ルンルンしてる…。
案の定、「恋とシナリオ」のレジメを無視して、なかなか本題に入らない…。
でも、脱線しながらも、新井は皆さんにこんな質問をし始めました。
・新井「例えばさ、飲み会で好きな人の隣に座りたいじゃん。でも席がない。そういうときどうする?」
・S木さん「え!……できないかも」
・新井「え?何もしない?」
・S木「だって、何かしたら、好きってことがみんなに分かっちゃうし…。それはちょっと…」
・S井「じゃあ、飲み会が終わってから話しかけてみるとか」
・新井「お!その手もあるよね!」
・T田「話しかけて、なんか遠いですねって言って “遠いアピール”をして近くに移動するのは?」
・M田先生「T田さんらしいね!」
・S井「席替えタイム!って、言っちゃう。それか、空いた隙に座る」
・新井「O山くんは?」
・O山「僕もそんな感じかな…。言いたいこと、みんなに言われちゃったから…」
・M田先生「O山くんは、気づいたら好きな人の傍にスッといて、それに気づいた周りの人が、ここ座りなよってスペースを空けてくれるような感じがするなぁ」
・S木、S井、T田「あー、ぽいぽいぽい!」
・O山「あ、そうかも」
すごいですね、この質問だけで、みんなのキャラクターがだんだん分かってきました。
すると、新井はニヤリ。
ん? なんで笑ってるんだろ?
好きな人をデートに誘うならどうする?
自称・恋愛百戦錬磨の新井は、また質問します。
・新井「じゃあさ、デートはどうやって誘う?例えば、その人とお昼食べてて、そのときに誘うとしたら」
・T田「今はお蕎麦食べてるけどラーメン食べたいな。今度ラーメン食べに行かない?って誘う」
・S木「共通の話題をまず探して、例えば観たい映画とかがあったら、一緒に行きませんかって誘うかな」
・S井「趣味や好きなものを調べておいて、こういうイベントが近々あるんだけど行かない?って」
・新井「いいねいいね。O山くんは?」
・O山「んー、僕もそんな感じですかね…」
するとT田さんがボソリ。
・T田「みんなは相手のことちゃんと考えてるのに、自分が食べたいもので誘っちゃった…。だから私、ダメなんだ…」。
わっ、落ち込んじゃった?
でも救いの手が!
・M田先生「でも、こうやって振り返ってみて、相手の気持ちを考えなきゃいけないって気づけたじゃない!」
M田先生、ナイスです!
新井は、というと、またもやニヤリ。
ん? まただ。
だから、なんで笑ってるんだろう?
恋もシナリオも、キャラクターが動かす
新井はさっきから笑ってるし、私が作ったレジメは全然使わないし、ムムッと思っていると、新井は皆さんにこう話し出しました。
・新井「最初に、好きな人の隣に座りたいけど席がない!どうする?って質問したよね。
こういう“したいのにできない”っていうことを、ドラマ(シナリオ)では【障害】といいます。ドラマだとよく、主人公が好きな人に話しかけようとすると邪魔が入ったりするでしょ?これ障害。それから、S木さんみたいに、みんなにバレちゃうからアピールできない…っていう場合は、自分の気持ちが障害とも言えるよね」
・S木「おぉ、なるほど!」
・新井「で、さっき、好きな人の隣に座るための作戦をみんなに聞いたけど、自分でどんどんやる人もいれば、周りのチカラをかりてやった人もいたし、やり方が全然違ったよね。というのは、みんなのキャラクターがそれぞれ違うから。つまり、障害を乗り越えるためのやり方には自分のキャラクターが出るっていうこと」
・編集部メンバー一同「おぉ!出てた出てた!」
・M部先生「なるほど!」
・新井「日常では意識してなくても、自分のキャラクターって行動に出ちゃう。
で、これを意識的にやるのがシナリオライター。シナリオを書くときは、キャラクターを設定してから、そのキャラクターならではのやり方で、障害も乗り越えさせるようにする」
・M田先生「シナリオを書くときも、恋をしたときも、アタマの使い方は同じなんですね!」
・新井「そうなんですよ。で、次に質問したデートの誘い方。この時の障害はなんだと思う?」
・S井「デートに誘って、相手に“うん!”って言ってもらえるようにする!」
・新井「そう! この障害を乗り越えるには、T田さん、何を考えるんだっけ?」
・T田「自分が食べたいラーメンじゃなくて、相手の気持ち(笑) 」
・新井「そう!この人はどんなもの好きなのかなぁとか、相手のキャラクターを考えて、それにあったアプローチをするでしょ?自分にキャラクターがあるのだから相手にもキャラクターは当然ある。
つまり、障害を乗り越えるには、相手のキャラクターも考えなきゃいけないということ」
昆虫好きなO山くんも静かに頷いております。
・新井「障害を乗り越えるとき、自分ならどうするか、自分のキャラクターを考えてみる。で、自分がこうしたら相手はどんな気持ちになるか、相手のキャラクターも考えてみる。こう考えると、シナリオと恋って近いよね?」
おぉ、新井がちゃんとまとめてるー!
編集部のみなさんは大きく頷き、一生懸命メモをとっていました!!
自分の恋を振り返るいい機会に
取材の終盤、M部先生から
「いやー、新井さん、勉強になりました。僕の授業のひとこまを新井さんにやって頂きたいくらいですね!」と嬉しい言葉を頂けました。
新井が喜んでいると…
・T田「みんなの答えを聞いてみて、この中で誰がちゃんと恋できそうですか?」
まさかの質問……。
笑ってごまかす新井……。
最後の最後に、新井にとって一番難しい質問を頂いてしまいましたが、編集部の皆さんからは「自分の恋を振り返るいい機会になりました!」と言って頂けました!
今回ご紹介した、新井流「恋とシナリオ」。
【恋とシナリオの共通点】
・恋もシナリオも、主人公が乗り越えるべき障害がある
・障害を乗り越えるときは、自分(主人公)のキャラクターを考える
・相手のキャラクター(=気持ち)も考える
皆さんなら、「恋とシナリオ」をテーマにどんなことを話しますか?
ゼミ仲間と話してみると、色々なヒントが見つかるかもしれませんよ!
自分でもドラマが書いてみたくなった!という方は、シナリオコースをご覧ください。