子どもたちの行動のベースにシナリオ技術
10才くらいのころ、「これやりたい!」と自分で積極的に何かをしたことありますか?
わたくし広報・齋藤、振り返ってみると、いつもボーとしていたような気がします…。
だから、『子どもシナリオ教室 @鎌倉市川喜多映画記念館』(全3日間)の子どもたち(小学4~6年生)を見て驚きました。
シナリオの書き方、映像の撮り方が分かるとすぐに、「こうしたい!」と自発的・積極的にどんどん動きます。
でも、闇雲に「こうしたい!」と動いているわけではないんですよ。
その行動のベースにシナリオを書く上で大切なことや技術があるように感じたのです。
子どもたちがどう行動していったのか。
『子どもシナリオ教室 @鎌倉市川喜多映画記念館』の模様をリポート致します!
ミソ帳で整理しておけば、書きたいものがより明確に
初日の鎌倉は、大雨で雷は鳴るは、停電にはなるは(画像参考↓)、
冠水するはで(画像参考↓)、もう大変でした…。
そんな天候に負けじと、子どもたちは、この日のメインイベントである脚本作りに挑戦。
目にとまったのが、同じ小学校に通う仲良し2人組の男の子。
黒豆3号とネズミ2号。
ここでは、みんなニックネームで呼びあいます。
ネズミ2号は、それぞれの登場人物の名前の下に、“と”“に”と書いて、キャラクターの特徴を2点ずつ書いています。私が「“と”・“に”ってなぁに?」と聞いてみると、
・ネズミ2号「得意なことの“と”と、苦手なことの“に”。この登場人物の得意なことはコレで、苦手なことはコレ」
おぉ!キャラクターの二面性をしっかり考えてる!
脚本作りに入る前に、キャラクター発想ゲームやグループワークを通じて、キャラクターを作る練習をしたので、ネズミ2号はすぐさま実践しています。
特にこの2人は、もの凄いスピードで脚本を書き終えました。どんなものを書いたのか聞いてみると、
・黒豆3号「ホラーを書きたかったんだ!タイトルは『不気味な電話』。あー、もっと書きたい!物語が止まらない!!」
――と目がキラキラ。
「ホラーを書きたい!」。自分が書きたいものがあるって凄いですよね。
なんでこんなにハッキリと書きたいことが決まっているのかなぁ、と思っていると2人は…
・ネズミ2号「ホラーもいいけど、SFとかアニメも好き。あ、今度『メアリと魔女の花』、観たいんだぁ」
・黒豆3号「『メアリと魔女の花』の歌、うたえるよ!」
――そう言って、黒豆3号はリュックから1冊のノートを取り出しました。
そこには『メアリと魔女の花』の歌詞が書いてあり、それを見ながら、2人は私にカワイイ声で歌ってくれます。
歌詞の他にも、このノートには黒豆3号が興味をもっていることや好きなことが色々メモされています。
シナリオ・センターでいうところの“ミソ帳(シナリオに使うアイデアをミソのように発酵させる手帳)”ですよね!
これを見て思ったんです。
こうやって自分が好きなことが明確になっているから、脚本の書き方が分かっただけでこんなに書けるのではないか、と。
よく作家集団の生徒さんに、「課題テーマが自由なので、自分が何を書きたいのか分からない」と相談を受けます。
でも、ミソ帳にネタを貯めておけば、黒豆3号のように書きたいものが明確になるんじゃないでしょうか。
そう考えると、やっぱりミソ帳って大事ですね。
日頃からミソ帳をつけておけば、自分が書きたいものが明確になる!
これが、子どもシナリオ教室1日目で特に強く感じたことでした。
「キャラクターを考える」で自分の想いは本当に伝わる
脚本を書いたら次は、AチームとBチームに分かれて映像化する脚本を多数決で選び、キャストやスタッフも決めます。Aチームで映像化する脚本は、南雲のカシラが書いたホラー作品『レイジの森』に決定!
大喜びの彼は「監督もやりたい!」と立候補。念願叶って、南雲のカシラ監督としてメガホンを持つことに。
翌日、いざ撮影へ。
撮影前の読み合わせをする中、南雲のカシラ監督が「シーンを追加したい」と言い出しました。スタッフ・キャスト陣に相談しています。次に南雲のカシラ監督は、Aチームのサポーターである田中のもとへ。なにやら相談しています。
そしてその足で、私のもとへモジモジとやってきました。さっきまで私のことを「チカチカ」と呼んでいたのに…
・南雲のカシラ「森に出発する前に、シンゴのお母さんに“いってきます”とみんなで言うシーンを入れたいんです。で、そのお母さん役をチカさんにどうしてもやってほしいんです。急ですみませんがやってもらえないですか…。セリフは“いってらっしゃい”だけで大丈夫ですので…」
この南雲のカシラ監督の行動に、周りにいた大人たちはビックリ。
私もビックリ…。
ビックリするとともに、私、「はい!」と承諾してしまった…。
実は、私のところにやってくる前、田中にこう言われたらしいのです。
「本当に出てほしいならきちんと想いが伝わるように話さないといけないよ」と。
想いが伝わるように話す。
この方法が、シナリオの技術「登場人物のキャラクターを考える」にあります。
脚本を書くとき、登場人物のセリフや行動は、「こういうキャラクターだから、こう言うな、こうやるな」と考えますよね。
日常ではこれと逆で、相手が発する言葉や行動から「この人はこういうキャラクターだな」と察します。
そして、その相手に何かを伝えたいとき、「この人はこういうキャラクターだから、こう言えば伝わる」と言い方を考えます。
皆さんも子どものころ、学校の先生や親に言われたことありませんか?
「人の立場になって考えなさい」と。
でも、どうすればいいのか、具体的な方法は教えてくれないですよね。
その具体的な方法は、この「キャラクターを考えること」なんです。
前日にシナリオの技術を学んだ南雲のカシラ監督は、おそらく私のキャラクターを考え、どういえば伝わるかを考えたのだと思います。
で、恥ずかしいからあんまり出たくなかった私が、「はい!」と即答してしまったに至ったのです…。
相手のキャラクターを考えた言い方をすることで、自分の想いが伝わる。
そう心底実感した、2日目でした…。
クリエイターとしてコメントする
撮影してから数週間後、川喜多映画記念館の方が編集して下さった完成作品の上映会と舞台挨拶を実施します。
子どもたちや親御さんとともに、大きなスクリーンで鑑賞するので、みんなドキドキです。
上映の前には、2グループそれぞれ舞台挨拶。子どもたちは大人顔負けの舞台挨拶を披露してくれました。
特に会場を沸かせたのが、録音担当のハマキジジイ。
身振り手振りで音響として自分がどう携わったのかを話してくれます。
・ハマキジジイ「セミの声が凄かったんですよ。マイクをこう上から録るとセミの声が入っちゃうので、上からじゃなくて、こうやって下から。下からコードをこうして、音を録りました。そうするとセミの声が入らないので」
会場の親御さんたちは「本物の音声さんみたい!」とビックリされてました。
子どもたちの具体化する力
拍手喝采で終わった上映会。
南雲のカシラは帰りがけに「また来年も監督をやって“伝説の監督”と言われたい!」と元気よく宣言して帰って行きました。
今年で8回目を迎えた『子どもシナリオ教室 @鎌倉市川喜多映画記念館』。今年も定員を上回る沢山の応募があり、抽選で23名の子どもたちが参加しました。
この子どもシナリオ教室をずっと担当して下さっている鎌倉市川喜多映画記念館 総括責任者の増谷文良さんから、嬉しいコメントを頂けました。
・増谷さん「元気いっぱいに初めてのシナリオづくりを楽しんでいた子ども達。チームごとのシナリオ発表では、みんなで一生懸命、相手の発表を聞いている姿に感動しました。
また、作品が決まると周囲の大人へも積極的に出演交渉をするなど、具体化する力があって驚きました。チームワークを大切に、こだわりをもって撮影に臨んでいて、今年も子ども達の思いがいっぱい詰まった作品ができました!」
具体化する力。
近くで見ていると、本当に感じます。凄いですよ。
このチカラとともに私が感じたこと。
・日頃からミソ帳をつけておけば、自分が書きたいものが明確になる!
・相手のキャラクターを考えた言い方をすることで、自分の想いが伝わる。
子どもだから、と侮ってはいけません。
今回の3日間で彼・彼女たちは立派なクリエイターになりました。
皆さんも、子どもたちに負けないように、今回私が感じたことを再認識してみて下さい!