「肩書は映画監督・脚本家・作家です」。
こう聞いたとき、どんな1日をおくっているのか想像できますか?
例えば、撮影前。準備で凄く忙しそうですが、具体的な作業はよく分からないですよね。
そこで、映画監督・脚本家・作家として活動を行っている澤田サンダーさんに、現在公開中の映画『ひかりのたび』撮影前の、ある日のスケジュールをお聞きしました。
また、「自分の能力の“上”と“下”を考える」ことから編み出した澤田さん流・脚本勉強法などなど、映画監督・脚本家・作家としてフリーで活動したいと思っているかたに向けたコメントをご紹介します。
澤田サンダーさん:映画『ひかりのたび』撮影開始前のスケジュール
〇澤田さん:朝食はあんまり食べないですね、牛乳くらいかな。
朝風呂は高校時代からの習慣。北国出身(青森)だからっていうのもあると思う。夜は寒い方がすぐ寝れるし、朝は気温が-1℃くらいになるので暖房で部屋が温かくなるのを待てないんですよ。だから朝風呂。資料のプリントを読んだりしてます。
この日は、9時から17時まで、脚本の直しや助監督や小道具のスタッフ陣とメールやネットで打合せ。
18時から20時まで、カメラマンとルック(撮影の色合い)についてを確認(@新宿)。
今回はモノクロで撮影したんですが、モノクロでも勿論、カラコレ(※カラーコレクション=撮影した素材に出る微妙な色彩や輝度のバラつきを整える作業)はするので、その場合に備えて、どんなことに気をつければいいのか等を確認します。
20時から23頃時まで、プロデューサーとキャスティングの相談(@恵比寿)。候補の役者さんの出演作品をYou Tubeで見ます。演技を通して「この役に対して、きっとこういう風に考えてるんだな」っていうのが分かるというか、そういうことがキャスティングする際の基準だったりしますね。
こうやって1日のスケジュールをみてみると、リラックスタイムは、ないですね…。日々、追われてる感じ、「あ、これもやらなきゃ、困ったな…」という感じでやっているので(笑)。
“後輩”の皆さんへ:自分の能力の“上”と“下”を考える
〇澤田さん:大学時代、4コマ漫画や脚本を書いていて、ゼミの教授に「話を書くのが上手だね」って言われたんです。でも周りより少しうまいだけで、技術はなかった。それでシナリオ・センターに。ここでは、シナリオの技術を学べたし、自分の作品の方向性も見えてきました。
リーマンショックが起きて、働き方について色々考えたこともあり、ここでひとつ博打を打とうと思い、2010年に34歳で東京芸術大学大学院に入りました。
大学院時代は、シナリオを書くことに集中できましたね。シナリオの技術がその2年間で上がったんじゃないかな。
技術を上げるためには、やり方が肝心だと思うんですよ。俺がやったのは、自分の能力の“上”と“下”を考えること。セリフに自信がなかったんです。「自分の“下”=セリフ」だった。
なので、自分の脚本を書くことと並行して、歴代の名作シナリオを書き写すというのをやりました。大巨匠のセリフ1つ1つに、「このセリフはちょっと…」とか「うまい」っていう感想を赤ペンで書いていく。こうすることで、大巨匠と自分との“溝”が分かるので、これが“反省”になる。
この作業を2年間続けたんですけど、面白いのが、だんだん「うまい」という書き込みが少なくなって、「これ前にもあったな」とか「俺にも書けそう…」っていうのが増えてくる。これをやる前と後ではやっぱり変わったと思いますね、自分が書くセリフ。
こうやって自分のやり方を考えて実践することも、才能の1つだと思うんです。皆さんも、せっかくシナリオ・センターでシナリオの技術を学んでいるんですから、それプラス、自分のやり方も見つけて、鍛錬していってください!
映画『ひかりのたび』が公開中
■You Tube uzumasafilm 映画「ひかりのたび」予告編より↓
『ひかりのたび』は2015年、伊参スタジオ映画祭 シナリオ大賞(中編の部)でグランプリを受賞。なお、澤田さんは2010年にも『惑星のささやき』で同賞を受賞しており、この映画祭では初となる2度のグランプリ受賞者です。
今年2017年に『ひかりのたび』が実写化され、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭長編部門ノミネート。その後、東京・大阪・名古屋・京都・神戸などで順次公開中。
映画に込められたメッセージ、モノクロで映し出された静謐な世界観、細部まで計算されたサウンドなど、ぜひ劇場でご堪能ください。
- 「先輩のオ・シ・ゴ・ト~澤田サンダーさん~」が『月刊シナリオ教室11月号』に
こちらのブログと連動した隔月連載企画『先輩のオ・シ・ゴ・ト』が『月刊シナリオ教室11月号』(10月28日発行)に掲載いたします。
今回は、映画監督・脚本家・作家として活躍されている澤田サンダーさん。
『月刊シナリオ教室』のほうでは、
■賞をとることが近道
■「やりたいこと」と「結果がでること」
■スタッフの意見を許容する
■映画と現代美術の融合
--の他、公開中の映画『ひかりのたび』に込めた想いもお話し頂いてます。先輩の“歩み”を知ることで、アナタが進みたい“道”も見えてくる。
ブログと併せてぜひご覧ください。