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面白い動画を作るにはシナリオの構成を考える

先日、神奈川県内の大学で映像とメディアに関する授業に、新井がゲスト講師として担当させていただきました。
というのは、この講座を担当されているI講師から、こんなご提案があったから。

〇I講師:この授業の前期の課題は、1分程度の動画を自由に作ることでした。
提出された動画は、例えば、ネイルのやり方を紹介する動画だったり、自分が好きな映画を紹介する動画だったり。みんな、撮影も編集もとっても上手。
でも、ちょっと「ただ撮ってる感」がしなくもなかった。構成をきちんと考えたら、もっと面白くなるんじゃないかなと。
後期の課題は5分の動画を作ること。前期よりも尺が長くなるので、作る前に、動画の設計図になる「脚本」の作り方をみんなに知ってもらいたいと考えました。

そこで今回は、「シナリオ構成シート」を使って、後期の課題で作る動画の骨子を考えていきました。

考えていく中で、生徒さんたちが特に「難しい…」と言っていたのが、シナリオの構成「起承転結」の“承”の機能について。生徒さんからは、“承”について2つの質問がでました。

では、“承”についてどんな質問が出たのか。その模様を広報の齋藤がリポート致します!

生徒さんの疑問その1: “承”が長いと飽きちゃうのでは?

生徒のNくん、Mさん、Tさんはそれぞれ、後期の課題で作る動画のターゲットとテーマを決めました。決定したターゲットとテーマがこちら。

・Nくん:映画とアニメーションが好きな人に向けて、映画とアニメーションの面白さをPRする動画。
・Mさん:映画に興味をもっている20代に向けて、デンマーク映画の面白さをPRする動画。
・Tさん:彼氏が欲しいと言いながら、韓国アイドルに情熱を注いでいる友達に向けて、彼氏をつくる良さをPRする動画。

これを踏まえた上で、シナリオ構成シートを使って、構成を考えていきます。
構成を考えるとは、「起承転結」を考えることです。

起承転結それぞれの機能を簡単にご説明すると、
・起=ドラマの始まり。天(情勢)・地(場所)人(人物)を紹介する部分。“転”で伝えたい逆のこと、つまり「アンチテーゼ」から始めます。

・承=事件や事情が積み重なってドラマが進行していく部分

・転=ドラマのテーマを感じさせる部分

・結=テーマの定着と余韻を持たせる部分

--となります。

もっと分かりやすく考えるために、起承転結を図に表すと、山のカタチになります。

この図を見て、Nくんからこんな質問が。
〇Nくん:“承”が長すぎると飽きちゃうんじゃないでしょうか?

〇新井:飽きちゃった経験があるんですか?

〇Nくん:はい…。以前、ある戦争映画を観たとき、戦争のシーンが延々と続いていました。
この山の図で、“起”から“転”の間に小さな山が沢山グニャグニャしている部分が“承”ですよね。たぶん、延々と続いた戦争シーンが“承”の部分だと思うんですけど…。

〇新井:Nくんが飽きちゃった理由をお話しする前に、まず、この山の図を見ながら“承”の機能をお話しします。“承”で小さな山が1つ1つ、少しずつ上がっていますよね。この小さな山は、「障害」だと思ってください。

〇Mさん:障害!?

〇新井:簡単に言うと、主人公が困っちゃうことです。
“承”の部分にある1つ目の山を見てください。これは1つ目の障害。主人公は困りながらもどうにか乗り越えます。
乗り越えたと思ったら、1つ目の山よりも難易度が高い2つ目の山が出てくる。2つ目の障害ですね。主人公は困りながらもどうにか乗り越える。
それを乗り越えたと思ったら2つ目の山よりももっと難易度が高い3つ目の山が…、と主人公をどんどん困らせます。主人公が困りながら、悩みながらも、なんとか「山=障害」を乗り越えていく姿に、視聴者は「この後どうなるの?」と感情移入していきます。感情移入すればするほど視聴者は「面白い!」と感じるわけです。

〇生徒の皆さん:おぉ!

〇新井:Nくんが、その映画で飽きちゃったのは、“承”の部分にある沢山の小さな山が全て“同じ高さ”だったからかもしれません。ずっと同じようなトーンで主人公が困っているから、「山=障害」を乗り越えているような感じがしなかったんじゃないでしょうか?

〇Nくん:あぁ!!

Nくん、納得。他の生徒さん、そしてI講師も頷いております。

生徒さんの疑問その2: PR動画での「障害」って何?

皆さんが頷いたのも束の間、今度はこんな質問が。

〇Tさん:でも私たちが作るのはドラマじゃなくて、どちらかというとPR動画。PR動画での「障害」って…?

〇新井:Tさんが作りたい動画を例に考えてみましょう。
ターゲットは、彼氏が欲しいと言いながら、韓国アイドルに情熱を注いでいる友達。この友達は彼氏が欲しいんだよね?

〇T:そうです。

〇新井:“転”で「彼氏がいると楽しいよ!」ということを伝えたい。では“起”はどんなことから始めればいいと思いますか?

〇Tさん:“起”はアンチテーゼだから、「彼氏がいなくて寂しい…」ですかね?

〇新井さん:いいですね!じゃあ、「彼氏がいなくて寂しい…」から「彼氏がいると楽しい!」と展開するためには…?

〇Tさん:“承”の部分で、「こんなときに彼氏がいたらなぁ…」と思うエピソードを入れていけばいいんですかね?

〇新井:そうです!そうすると、“転”で訴えたいテーマ「彼氏がいると楽しいよね!」が際立ちますよね。

「そっか!」と生徒の皆さん。
この後、皆さんはすごい集中力で構成シートにどんどん書き込んで、構想を練っていました!
I講師によると、今回の授業で考えた構成をもとに、後期の課題を仕上げていくのだそう。完成が楽しみですね☆

動画を作るときはシナリオの構成をきちんと考えよう!

シナリオ・センター創設者の新井一は、「承」について『シナリオの基礎Q&A』(P79)でこう述べています。

【承はドラマを面白くする展開部ですから、見る人を惹きつけるような見せ場を作らなければなりません】

“承”に見せ場がないと、Nくんが感じたように「長いなぁ…」と飽きてしまう危険性がありますよね。
この考え方はドラマだけじゃなくPR動画も同じです。

ジャンルはなんであれ、動画を作るときは、“承”だけでなく、起承転結のそれぞれの機能を考えて、きちんとシナリオを作ってから、撮影していきましょう!

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問題を解決するだけでなく、人に何かを伝えるときもシナリオの技術が使えます。「伝えた」だけでは本当に「伝わっている」かどうか分かりませんよね。伝わるように話すにはどうすべきか。その方法もシナリオの技術にあります。なぜならシナリオの技術は1000万人以上の視聴者に「面白い!」と言わせる技術だからです。学校での“出前授業”や企業研修も行っています。「シナリオを使ってこんなこと解決できない?」というお問合せはお気軽にこちらまで。

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