色々やってみよう生きてみよう
シナリオ・センター代表の小林です。芥川賞、直木賞が決まりました。
芥川賞は石井遊佳さん「百年泥」と若竹千佳子さん「おらおらでひとりいぐも」のW受賞、直木賞は、門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」。
SEKAOWAの藤崎沙織さんの「双子」が候補作に上がって話題になっていた今年ですが、前述の方々にお三方に決まりました。
私はまだ読ませていただいていないのですが、毎年楽しみにしているので早速読もうと思います。 いつも受講生の方々に、時代の流れを感じるためにも、毎年の芥川賞直木賞は読んでおきたいと申し上げていることもありますが。(笑)
最近、又吉直樹さんを初め小説以外の仕事をメインにされて活躍されている方の本が注目されることが多くなりました。
WEBも含め発表できる場所が増えたこともありますが、誰もが表現できるということは素敵なことですね。 ひとつのところにとどまらず色々なことで自分を表現していくという生き方は、これから増えてくるような気がします。
ひとつのことを全うする、貫き通すということは大事だと思うのですが、自分の持っている多面性を見つけそれを伸ばすということも素敵なことだと思います。
これしかできないとか、なにもできないと決めつけないで、なんでも見てやろうやってやろうと常にチャレンジしていきたいと思います。
私自身は、悲しいことが起り過ぎて前を向くことが辛かった昨1年でしたが、今年は前を向いて、色々なことにチャレンジしていこうと思います。
死と向かい合うことは自分と向かい合うこと
昨年は、私の本当に親しい方々が、次々と癌で亡くなられ、私自身が信じられないほど立ち直れませんでした。
1月に藤本講師、2月に出身ライター森治美、3月に義妹、9月に仕事の先輩、11月に大学の先輩が癌で亡くなりました。今、抗がん剤治療を続けている仲の良い友人が3人います。
2人に1人が癌になり、3人に1人が癌でなくなる時代なのだそうです。
横浜教室の稲垣麻由美さんが「人生でほんとうに大切なこと」(KADOKAWA刊)という本を出されました。
稲垣さんは、一昨年「戦地で生きる支えとなった115通の恋文」という本を上梓されました。この日記でもご紹介しましたが、戦地で闘っている夫と日本で銃後の支えをしている妻との往復書簡です。戦争というもののむごさ、ひどさを、今までの戦争本と違った視点からとらえ、訴えています。
稲垣さんは、ライターとして「命」「想い」をテーマにして執筆を続けていらっしゃる素敵な方です。
そして、今度の本 「人生でほんとうに大切なこと」は、「命」「想い」に向き合う精神腫瘍医の清水研先生と患者さんたちの対話集です。
清水先生は、数少ない癌専門の精神科医です。
私たちは、明日も生きていることを前提に生きています。
ですが、誰にでも死はやってきて、命には限りがあります。
癌は限りある命と向かい合うことですが、誰にでも来るものだとわかっていても、それを受け入れることはなかなか難しいことです。
死への恐怖は、大きく3つあると言います。
①死に至るまでの過程に対する恐怖
②自分がいなくなることによって生じる現実的な問題
③自分が消滅するという恐怖
そうした漠然としたどうにもならない不安にさいなまれる癌患者の方々に向かい合っていくのが清水先生、精神腫瘍医です。
癌患者とその家族に寄り添い、不安、いらだち、痛み、怒り、涙、うつ、悲しみ、孤独、絶望などの混乱に耳を傾けてくれます。
清水先生と患者さんたちの七つのエピソードは、癌患者ということではなく、人はどう生きるべきかという問いを私たちに投げかけます。
精神腫瘍医はまだ少ないそうです。人の死と向かい合うのですから医者の仕事とはいえ辛いものです。ですから、なかなか育てないし、辞めてしまう医者も多いのだそうです。
でも、清水先生は「自分の人生ってなんだろう?」という課題と向きあって答えを出していくお手伝いをすることで自分自身にとっても生き方を常に考えさせられるとおっしゃっています。
この本を読ませていただいて、単に感動をさせられたというだけはなく、自分自身の生き方「大切なもの」を考えるという命題を与えられたということを強く感じます。
癌患者やご家族の方だけではなく、広くどなたにも読んでいただきたい本です。
吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」も大ベストセラーになっています。
世界中が生き惑っている昨今、一人一人が自分はどう生きるのか、何を大切にして生きたいのか、しっかりと向きあっていかねばならないように思います。
とても地味な本ですが、すべての方に読んでいただきたい本です。