シナリオ・センターの新井です。
先日、日本大学で行われた「文学とコンピュータが出会うとき―速読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ」という、公開講座に参加してきました。タイトルに使われている、単語の半分も理解していませんでしたが…
なぜ、この講座に参加したかというと…
なんとなく、AIとかと関係してそうだから、です。
AIに何ができて、何ができないのか。AIに、文学やドラマが書けちゃうのか…ちょっと気になるじゃないですか。なので、聞いてきた次第です。
コンピュータ、まだそこまで書く力ないみたい
で、今回の講座のテーマの主眼は、コンピュータを使って、どれだけ文学作品を分析できるのか、ということでした。書く方ではなかった…
でも、コンピュータで小説を書いた歴史にも触れていたので、共有しておきますね。
最初にコンピュータを使って作ったと言われている小説がロシアの『真実の愛.wrt--申し分ない小説』という作品だそうです。2008年だと言っていました。
この作品は、ロシアの作家11名と村上春樹1名の作品を8か月書けて読み込み、出力した作品です。ちなみに、出力は3日だったとか。早い!
でも、この作品は暗にコンピュータだけで作った作品ではないと、制作者が認めているようです。
最近では、ハリーポッターシリーズを、7作読み込ませ、まぼろしの8作目を制作した人達がいたそうです。でも、あまり面白くないらしいです。
コンピュータを使って、文学作品を分析する
デジタルヒューマニテイーズという分野は、コンピュータを用いた文学や歴史、哲学、宗教学などの分析のことを言うそうです。
どんな風に活用しているかというと、MatthewL.Jockersという研究者の方は、「文体とは何か?」という問いを立て、分析のためにコンピュータに、いくつもの作品(どれくらいの数か聞き漏らしました。ごめんなさい)を読み込ませ、女性作家が使う単語、男性作家が使う単語で傾向がないかどうかを分析したそうです。
結論からいうと、あったみたいです。日本語の作品でもやってみると、そういう傾向がわかるのかもしれません。
結局、文体を作っているものは何か、というと、講座の中では、「国とかジャンルとかは文体に影響しない。作家とか性別は文体に影響する」という結論に至ったらしいと言っていました。
まぁ、そうだろうね。
という感じもしますが。感覚的なことを、科学的に示すのが分析の遠回りだけど、確実なところですね。
構成の図には、科学的根拠あり!?
で、面白かったのが、ジョディ・アーチャー、マシュー・ジョッカーズの研究のお話でした。このお二人の本は、『ベストセラーコード–「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』(日経BP社:2016)という書籍になっているそうです。今度、読んでみようと思います。
で、この中でプロットラインというのを、分析したそうです。
対象は映画『ダ・ヴィンチ・コード』と映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の2作品。
この作品の単語を、ポジティブな単語とネガティブな単語に分けて、どちらが多く出てくるのかを、時間軸で分析したそうです。ポジティブな単語が多い波が上がり、ネガティブな単語が多いと波が下がるようです。
その結果、どうなったかというと、ウネウネと波状になっているわけです。山あり谷あり。まさにドラマの構成図のようですよね!
『ベストセラーコード–「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』(日経BP社:2016)より
私、見た瞬間思いました。これ、シナリオの構成図とほぼ同じじゃん!と。単語ベースでの分析なので、厳密に同じではありませんが、でも私の守護霊に祖父新井一がいたら、「ほら!ほらほら!そうだろう?」と肩を叩いていたことでしょう。霊感がないのでわかりませんが。。。
下の図が新井一『シナリオの基礎技術』にある構成図。
分析は、答えではなく、始まり
「文学とコンピュータが出会うとき―速読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ」という、タイトルの半分も理解できない講座が教えてくれたのは、コンピュータを使った分析は、日に日に進歩しているということ。そして、それは、私たちが「なんとなくそうじゃないかなぁ~」と思っていることに、科学的な裏付けをしてくれるということです。
例えば、コンピュータを使って、山田太一さんの脚本を分析したり、倉本聰さんの脚本を分析したり、宮藤官九郎さんや三谷幸喜さんなど舞台出身の脚本家と、岡田惠和さんや坂元裕二さんなど映像出身の脚本家とを比較研究したり…と色々できそうです。
コンクール作品の分析も、コンピュータを使えばできてしまうかも知れません。ヤンシナの傾向はこうで、連ドラ大賞はこうだ・・・みたいな。
ただ、講座でも言っていましたが、デジタルヒューマニティーズは一つの手法であり、すべては過去の作品からのひとつの答えの出し方でしかありません。要は、使う側の創造力がないとダメよってことでしょうか。
今年はシナリオ・センター48年目ということで、視野(48)を広げるという意味もあり、今まで興味がなかった分野の勉強もしてみました。なんでも、得るものがありますね。シナリオ・センターの新井でした。
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得意なもの、苦手なものというのはあるかも知れませんが、身に危険を感じないようなことであれば、挑戦してみるといいのではないでしょうか。
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