生きたかった明日
シナリオ・センター代表の小林です。出身ライターの宇山佳佑さんの新刊本「君にささやかな奇蹟を」(角川文庫刊)を読みました。
主人公の伊吹は、自分のせいで事故死した父親への罪の意識に苛まれ、幸せになることから逃げてきました。
そんな伊吹に母が言います。
「人生に惰性なんてないわ」「だってあなたが生きている今日は、お父さんが生きたかった明日なのよ・・・」と。
戦争で、津波で、地震で、事故で、病気で・・・まだまだ生きたかった人はたくさんいらっしゃいます。
多くの人たちが国の犠牲になって殺されていった歴史もあります。
生きている私たちは、たくさんの生きたかった人の想いを受け止めて、明日をちゃんと生きていかなければならないのですね。
2月26日「音ナイト」では、亡くなった森治美さんの明日を、皆さんともにしっかりと生きていきたいと思います。
シナリオも小説も・・・デビューの秘密
2月23日金曜日の「ミソ帳倶楽部」に宇山佳佑さんをお招きしました。
「今夜、ロマンス劇場で」のお話しを中心に、脚本執筆に至る経過や執筆中にご苦労されたこと、作品の見どころなどを余すことなく語っていただきます。
2月10日公開の映画「今夜、ロマンス劇場で」は、「ローマの休日」を髣髴させる黒白の画面からでてきたお姫様と助監督のラブストーリーです。
この「今夜、ロマンス劇場で」の原作は、宇山さんの小説です。
宇山さんは、脚本だけではありません。小説も描かれます。
ご自分の原作をご自分で脚色された希有な脚本家です。
「超高速!参勤交代」の土橋章宏さんもそうですけれど、ご自分の原作のシナリオを描かれる方は、そう多くありません。
新刊「君にささやかな奇蹟を」は、本物の108代目サンタクロースとどこにでもいる普通の女性伊吹とのラブロマンス。 サンタクロースというのもびっくりなのに、愚図で意気地なしのキャラクターも面白く、今の自分に向き合えない二人が出会うことで、小さな奇蹟が起ります。
どなたもが子供の頃信じていたかったサンタクロースを切り口に、切なさについ涙がわいてきてしまうすてきなお話です。
宇山さんの「ガールズ・ステップ」「桜のような僕の恋人」「今夜、ロマンス劇場で」「君にささやかな奇蹟を」、どの作品も、読んでいると気持ちがやさしくなる、切ない気持ちを温めてくれる素敵な小説です。宇山さんは、シナリオライターとしてデビュー―されました。
映画「スイッチガール!」「信長協奏曲」「世にも奇妙な物語」などヒット作の脚本を描かれています。
小説では切ないラブストーリーを多く書かれていますが、映像ではちょっと変わったコメディタッチの作品が多く、その幅の広い発想力に驚かされます。
脚本家としてだけではなく、小説家としても活躍の場を広げていらっしゃる宇山さんに、シナリオの技術をどうやって小説に生かすことができたのか、コンクール入選者でもなくつらい思いもされながら、どうやって脚本家になられたのか・・・等々、是非お訊きしたいところです。
ご自分では「僕自身まだまだ若輩者で・・・」とおっしゃっていますので、ちょっと身近な先輩として、これからシナリオ、小説でデビューしたいみなさんにとって、とてもプラスになるお話を伺えると思います。
あなたは わたしに言ったよね。 『人は、かわれるんだよ』って。
『ぜったいぜったい かわれるんだよ』って。
『ゆうきをだせば、ぜったい人はかわれるんだ!』
(小説「君にささやかな奇蹟を」の絵本「あなたがいたから」の抜粋)