創作の仕方
シナリオ・センター代表の小林です。出身ライターの大山淳子さんがご自身の小説が映画化されるので、そのポスターを持ってきてくださいました。
久々だったので、ランチをしながら楽しいひとときを過ごしました。
お持ちいただいた映画のポスターは「猫は抱くもの」
6月公開の犬童一心監督、沢尻エリカさんと吉沢亮さん主演の映画です。
この原作は2015年に書かれたもので、そのときには大山さんからご本と一緒に、映像化にはむかない題材ですが・・・というお手紙をいただいたことを覚えています。
大山さんのデビュー作、ベストセラー小説の「猫弁シリーズ」第1作は、「TBS講談社ドラマ原作コンクール」で最優秀賞を受賞された作品、いわばドラマ化を前提とした小説を書かれたわけですが、この「猫は抱くもの」は全く映像化を考えずに書かれたそうです。
大山さんの小説は、どの小説も映像化しやすい小説です。
キャラクターがしっかり創りこまれ、描かれていることが一番ですが、たぶん大山さんの頭の中には、常に映像が浮かんで書かれていらっしゃるからだと思うのです。
ですが、この「猫を抱くもの」は、ちょっと異質。なんといっても猫視点と人間視点にサギ視点も加わって、視点が変わりながらお話しが構築されていくという構成なのですから難しいと言えば難しい原作だったかもしれません。
大山さんは今や売れっ子の小説家ですが、大山さんご自身はシナリオを描くことが大好きでいらっしゃるので、テレビドラマになった時の「猫弁」同様、ご自分でシナリオも描かれたかったのかと思いました。
ですが、今回ばかりはちょっとご自分には手に余ると思われたそうで、シナリオは他の方に書いてもらってもいいかと打診された時は、ほっとしたとか。(笑)
そして、シナリオをご覧になられた時、なるほどこういう風に考えられるのかと感心されたそうです。
大山さんは、ゼミに在籍されていらした時に、必ずみんなから言われた意見や感想を取り入れて、もう一度20枚シナリオを描かれるというやり方を重ねていらっしゃいました。
人はみんな違うから色々な見方、考え方、表現の仕方があるのだということをわかっていらっしゃったからなのですね。
常に他人の意見を聴く、そしてご自分でおかしいと思っても試してみる、すると違った視点が見えてくる・・・その積み重ねが今を創られた気がします。
猫を抱くもの
映画「猫を抱くもの」は、犬童監督がこの難しい原作をとても素敵に映像化してくださったそうです。
主人公の設定はちょっと変わりました。
主役の沢尻エリカさんは、元アイドルのアラサーで今はスーパーで働く、自分の人生を想うとおりに行けなくてちょっと投げやりに生きている女性。
彼女が心を開くのはこっそり飼っているロシアンブルーの猫良男だけ。
でも、良男は彼女の心に寄り添ううちに自分も人間だと勘違いしてしまう。この良男が今や大人気の吉沢亮さん。
ゴッホと呼ばれる売れない画家に峯田和伸さん、ゴッホを慕う猫キイロに水曜日のカンパネラのコムアイさんと多彩な4人が繰り広げる可笑しくて愛おしい妄想が、自分らしい生き方を教えてくれるという心暖まるファンタジーに仕上がったようです。
6月公開が今から、楽しみです。