『曇天に笑う』(マッグガーデン)/唐々煙
注目ポイントはキャラクターと構成
時は明治維新以後。琵琶湖に浮かぶ監獄「獄門処」には重罪犯のみが収容されていたがそこには大蛇が蘇る不吉な前兆が起きていて…。破天荒な主人公とその兄弟たちが織りなす大冒険活劇。
シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。
マンガにはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えはマンガにある!シナリオ・センターにてマンガ原作講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
「全6巻だが全く先が読めない展開で良い意味で予想を裏切られ続けるのもいい」。仲村講師はマンガ『曇天に笑う』についてこう語ります。「たぶんこうなるんだろうな」ということは起こらない。だから、読者はもっと読みたくなります。今回は、良い意味で想定外がいっぱいの『曇天に笑う』をご紹介。
注目ポイントはキャラクターと構成
時は明治維新以後。琵琶湖に浮かぶ監獄「獄門処」には重罪犯のみが収容されていたがそこには大蛇が蘇る不吉な前兆が起きていて…。破天荒な主人公とその兄弟たちが織りなす大冒険活劇。
「光で起きる目覚まし時計」というのをご存じだろうか。朝日と同じ強さの光を放射させることで「狂った体内時計をリセット」し「自然に快適なめざめを実現」するんだとか。
人間は朝日を浴びることで交感神経が優位になり「やる気スイッチ」がONになるのだが、現代人は生活が不規則で忙しいので朝日をゆっくり浴びることができない。
そうすると午前中ぼんやりしたり眠気がなかなか取れなくなり、ひどくなると一種の鬱状態になってしまう。特に冬場は日照不足になりやすくこれを「冬場鬱」というらしい。確かに天気が悪いと気持ちも落ち込むものね。
そういえばトーク番組でうるさいくらい(面白いけど)喋る武田鉄矢も陣内孝則もユースケサンタマリアもさだまさしも、50歳超でもアイドル感満載の郷ひろみも藤井フミヤも松田聖子も、いまだにエロトーク炸裂の福山雅治も太陽サンサンの九州出身ではないか。みーんな元気でパワフル。太陽パワー恐るべしなのである。
このように人の体調やら精神に多大な影響を与える太陽が300年に一度、長期間雲に隠れてしまったとしたら?まさしく凶事の前触れとなるに違いない。
維新の結果、政府は士族反乱で多くの犯罪者を抱えることとなった。脱獄が後を絶たないことを憂慮した政府は琵琶湖の真ん中に重罪者専用の監獄を作った。折しもこの地は十年近く曇天続き。それは300年に一度蘇り全てを滅ぼすといわれる大蛇(おろち)が蘇る前兆であった。
大蛇は蘇るまでの間、一人の人間に取り憑く。取り憑かれた人間は「器」と呼ばれるが、身体に鱗が現れるまで本人も気付かない。大蛇を封じるには「器」となった人間を一刻も早く見つけ殺す必要があり、特殊部隊が秘密裏に活動を開始していた…。
というのがこの物語の設定。
主人公の曇天火(くもう てんか)は、獄門所への橋渡しを請け負い、かつ大蛇を祀る曇神社を預かる曇(くもう)三兄弟の長男でもある。めっぽう強くておバカで兄弟思い。誰からも慕われる天火にはしかし実は重大な暗い秘密があった。だがそんなことはおくびにも出さず、弱い弟たちを守り近隣の人々を守りつづる。
どんな悲惨な状況も笑って受け入れるその強さが素敵だ。最初はちょっとウザく感じられるがなぜか目が離せず、気付くと好きになっている。まさに太陽のような男。全6巻だが全く先が読めない展開で良い意味で予想を裏切られ続けるのもいい。
ぜひ全巻一気読みしてほしい。ちなみにアニメ化もされているが、人気声優陣がずらりと揃っていてとにかく上手いので、マンガを読むのがちょっと苦手な人はアニメから入るのもアリかも。
出典:仲村みなみ著『マンガから盗めっ!』(月刊シナリオ教室2015年11月号)より
※【要ブックマーク】漫画やアニメには創作のヒントがいっぱい!まとめ記事「漫画・アニメのストーリーを書くには」はこちらからご覧ください↓
https://www.scenario.co.jp/online/22208/